日米両国政府が続けてきた関税交渉が電撃的に合意しました。一部の製品を除き、日本から米国に輸出するすべての製品にかかる「相互関税」は15%、すでに発動されていた自動車・同部品の「追加関税」は25%から半分の12.5%となり、もともとの税率と合わせた乗用車・自動車部品の関税率も15%となります。
日本は相互関税と追加関税を引き下げてもらうため、米国への投資、米国の製品や農産品の輸入拡大を約束しました。関税交渉の合意事項には関税率以外の項目が含まれています。
「トランプ関税」については米国側の要求をもとにすでにキーワード解説をしていますが、合意内容は大きく変わっていますので、もう一度整理しておきます。
前回の「トランプ関税」キーワード解説
相互関税は、貿易相手国と対等な貿易を行うため、相手国と同じ率の関税を課すものです。トランプ政権はすべての貿易相手国の輸入品に10%の関税を課した上で、米国製品の輸入を阻んでいる壁(非関税障壁といいます)を税率に換算して上乗せし、貿易相手国(地域も含む)ごとに税率を決めています。
日本については、4月時点では一律10%の税率をかけた上で、さらに14%を上乗せして24%の相互関税を課すとされましたが、その後、トランプ大統領は「日本が市場開放を約束しなければ、25%の相互関税を8月1日から適用する」と通告していました。合意した相互関税15%(一律10%と上乗せ分5%の合計)は通告より10%低くなっています。もともと15%を超える税率だった製品には5%の上乗せはありませんが、関税がほとんどかかっていなかったお茶や日本酒などには新たに15%の関税がかけられます。
一方、追加関税は、米国が重要な産業を守るため、海外から安い製品が入らないように、国単位ではなく製品単位で税率を追加するものです。2025年4月以降、米国は乗用車・自動車部品に25%、鉄鋼・アルミニウムに50%の追加関税を課してきました。
自動車産業は日本の基幹産業で、日本政府は日本の自動車については追加関税を引き下げるよう強く求めてきました。交渉の結果、日本から米国に輸出する乗用車・自動車部品の追加関税は12.5%に半減され、もともとの関税2.5%とあわせて15%まで引き下げることになりました。
製品別に一律に課されるとされていた追加関税を国によって引き下げるという合意は英国に次いで2例目ですが、英国は低関税を適用するのは10万台までという制限があり、台数制限のない追加関税の引き下げを認めさせたのは日本が最初です。米国はEU(欧州連合)とも相互関税15%、自動車関税15%とすることで合意しました。
ただ、日本政府が当初目指した追加関税の撤廃は実現せず、鉄鋼やアルミニウムの関税も50%のまま、引き下げは実現しませんでした。
相互関税と自動車関税は合意によって米国が通告していた数字よりは下がりましたが、トランプ政権の就任前より大幅に上がります。今回の合意が日本経済に与える影響について、「目覚めよJAPAN」のプロジェクトメンバーでもある木内登英・野村総合研究所エグゼクティブエコノミストは、日本の実質国内総生産(GDP)を0.55%押し下げると試算しています。
関税以外の合意の中にも、5500億ドル(約80兆円)の対米投資など、日本企業の経営戦略を左右しそうな内容が含まれています。新たな関税負担によって対米輸出が減り、最も深刻な影響を受けるのは食品産業などを中心とする中小企業と見られ、日本政府はトランプ関税で業績悪化が見込まれる中小企業に対する支援策を検討しています。トランプ関税は国際貿易ルールをないがしろにするもので、今後も撤廃を求めていくことが必要です。
(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)
