執筆者

食品と開発のアバター

㈱グローバルニュートリショングループ 武田 猛

はじめに

GLP-1は「医薬品の話題」から「食品設計の前提条件」へ

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事後に腸から分泌される生理的ホルモンであり、満腹感の伝達、血糖値の調整、胃内容物の排出抑制を通じて、食欲と代謝を統合的に制御する役割を担っている。GLP-1の産生は、食事内容だけでなく、光曝露、睡眠、運動といった生活習慣全体の影響を受けることが知られており、本来は日常生活と密接に結びついた生理機構である。このGLP-1の作用を薬理的に強化したGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、糖尿病治療薬として開発された後、その顕著な減量効果が注目され、米国を中心に急速に普及した。

Cornell SC JohnsonCollege of Business Research が2025年に公表した調査結果によれば、2023年10月から2024年7月の間に米国におけるGLP-1RA 使用率は人口の5.5%から8.3%へと上昇しており、英国New Nutrition Business( 以下NNB)が2025年6月に実施した独自調査では、米国消費者の11%がすでにGLP-1RAを使用していることが示されている。注目すべきは、その使用目的である。GLP-1RA使用者のうち、52〜56%は減量目的で使用しており、糖尿病管理を目的とする層を上回る勢いで拡大している。GLP-1RAは、もはや医療領域に閉じた存在ではなく、食行動や食習慣そのものを変える外部要因として、食品業界にも直接的な影響を及ぼし始めている。

一方で、GLP-1RAは万能ではない。高額なコスト、副作用の存在、中止率の高さといった現実的な制約も明らかになりつつあり、それが結果として「医薬品を使わない選択肢」や「自然なGLP-1活性化」への関心を高めている。

本稿では、NNBの調査データを軸に、GLP-1RAが食品業界にもたらした変化を構造的に整理し、GLP-1を訴求した食品の動きと、その将来像について考察する。

1.GLP-1受容体作動薬が食品業界にもたらした「役割転換」

🔒この記事は雑誌に収録されています。

続きは『食品と開発』2026年3月号にてご購読いただけます。

食品と開発2026年4月号

【2026年3月号】特集Ⅰ/次亜塩素酸水(電解水)のネクストステージと開発動向
特集Ⅱ/GLP-1を指標とした食品機能研究