ワールドミッションレポート(3月17日):メキシコ 沈黙の円環に響く希望の歌③CC0 1.0)” class=”expand colorbox”>+グアナファト州の州都グアナファト(写真:Carlos ZGZ / CC0 1.0)

神の召命に従い、メキシコ中央部の「沈黙の円環」へ移住した宣教師夫妻は、信者がわずか2%という霊的暗闇に足を踏み入れた。そこではイエスをマリアにひれ伏させるような歪んだ混合宗教が支配し、聖書すら禁じられていた。異教的な伝統への固執とカルテルの支配が、福音の浸透を阻む厚い壁となっていたのだ。(※安全のため夫妻の名は仮名となる)(第1回から読む)

「沈黙の円環」での奉仕を開始して間もなく、ベアトリスは深刻なうつ状態に陥った。理由もなく、涙がとめどもなく流れた。家から一歩も出られなくなる日々が続き、彼女は助けを求めて毎日祈った。しかし、重苦しい気持ちは一向に消えなかった。

そんなある日、祈っていた彼女の耳に、震え上がるような恐ろしい声が直接的に響いてきた。「ここから去れ」。彼女はこの苦しみが単なる精神的な問題ではなく、この地を支配する暗闇の勢力による、文字通りの「霊的な戦闘」であることを悟った。数週間後、夫のマルコスも、同様のすさまじい霊的攻撃を受けた。

攻撃は霊的なものにとどまらず、物理的な危害へとエスカレートしてきた。夫妻の信仰を毛嫌いする隣人が、彼らの飼っていたペットに毒を盛ったのだ。ところが、当時2歳だった彼らの幼い娘が、誤ってその毒に触れてしまった。愛娘は生死の境をさまよう事態となったのだ。

絶望的な苦しみと恐怖が夫妻を襲った。幼い娘が苦しむくらいなら、自分がその毒を受けた方がいく倍も楽だっただろう。ベアトリスは娘のために必死に祈り続けた。

幸いなことに、憐(あわ)れみに富む神は娘を救い、幼な子は一命を取り留めた。神は、ベアトリス一家が、悲しみに悲しみを重ねることのないように守ってくださったのだ。

このような激しい霊的戦いは、裏を返せば、極めて大きな祝福が隠れているためだとも言える。暗闇は、光が差し込むのを何よりも恐れている。夫妻は現在、この地で子どもたちのための小さな学校を開いている。

読み書きや計算を教える傍ら、音楽やスポーツのクラスも提供し、地域社会との接点を築き始めているのだ。この小さな学校が、閉ざされた地域の人々の心に、少しずつ風穴を開けており、祝福の扉が開かれつつあるのだ。

ベアトリスがこの過酷な経験を通して見いだしたのは、自分たちと同じように「沈黙」の中で傷つき、声を上げられずにいる女性たちの姿であった。(続く)

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■ メキシコの宗教人口
カトリック 77・7%
プロテスタント 11・2%
無神論者 3・6%
土着の宗教 1・2%

石野博


(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。