京都の文化の深層を雅やかに、かつリアルに描いて人気を集めたプレミアムドラマ「京都人の密かな愉しみ Rouge-継承-」が3月22日(日)夜の放送で最終回を迎えます。京都の街が様々な形で登場するドラマを一層深く味わってもらおうと、主なロケ地を「聖地巡礼」してきました。京都旅行の際など、ちょっと足をのばしてみてはいかがでしょう。(美術展ナビ編集班 岡部匡志 ドラマの場面写真はNHK提供)

創業270年超の老舗

■俵屋吉富 本店(上京区室町頭町285‐1)

やはり最初はここへ。京都ならではの老舗の「継承」がテーマになったドラマで、その主要な舞台になった和菓子屋「久楽屋春信」のロケ地です。こちらは本物の老舗和菓子屋です。

久楽屋春信は創業から240年という設定でしたが、ロケ地の「俵屋吉富」は宝暦5年(1755)の創業で270年以上の歴史を誇る老舗和菓子店。京都市民にはもちろんおなじみの名店です。

ドラマの場面から。「久楽屋春信」ののれんから外を見るヒロインの洛(みやこ。通称でらく、とも呼ばれます。穂志もえかさん)

ヒロインの洛(穂志もえかさん)はじめ、義理の母の三八子(常盤貴子さん)、義理の祖母の鶴子(銀粉蝶さん)という女三代が、京都の伝統を守りながら日々を暮らした現場が見られます。

ドラマの場面から。お店の前で洛の手を握る鶴子(銀粉蝶さん)

こちら↓はリアルの「俵屋吉信 本店」の店内です。落ち着いたたたずまいにのれんの重みを感じます。

店内には3人がお店の前で記念撮影した写真が飾られており、ファンには感涙もの。3方の着物姿がステキすぎます。

ドラマの場面から。洛と鶴子。

この独特の細長い京町屋の中から、表通りを撮影したショットも印象的でした。

ドラマの場面から。洛と三八子。

こちらは住宅部分なので一般の方は出入りできません。今回は許可を得て特別に入らせていただきました。

京都の街ならではの悠久の時の息遣いを感じる空間でした。今にも洛ちゃんが大学から「ただいま」と帰ってきそうです。

せっかく古都を代表する名店に伺ったのですから、お土産を買わない手はありません。お勧めの「京銘菓  雲龍」と「京のおまんじゅう  いちご」を購入させていただきました。

「雲龍」は国産の大粒大豆を絶妙の火加減、水加減で炊き上げた小倉餡を、しっかりと仕上げた村雨餡で一本一本丁寧に手巻きし、雲にのる龍の荘厳で雄々しい姿を表現しました。味も舌ざわりもしっかりして食べ応えがあり、甘さもちょうどよくてお茶やコーヒーにぴったり。ついついたくさん食べてしまいそうになります。

「いちご」はほどよい酸味のドライストロベリーを練り込んだ白こしあんを、もちもちとした触感の生地に包み、焼き上げた焼き菓子。春の限定のお品で、こちらも大変においしゅうございました。「久楽屋春信」もこんなお菓子を出していたのかしら、と想像するのも楽しいです。

「巡礼」の方にも大人気

「俵屋吉富」はこの本店以外に、京都のメインストリートのひとつである烏丸通りに面した「烏丸店」などがあります。ふだんは烏丸店の方がお客さんが多いそうですが、「ドラマが始まって以来、わざわざ本店に寄って買い物される方が増えました」とお店の方も驚いていました。私が取材していた時も、平日の昼間にもかかわらずお客様がひっきりなしでした。お店をバックに自撮りする方もちらほら。伺うと東京の方で、「ドラマで見たのでぜひ寄ってみたいと思って」と仰っていました。

ドラマの場面から。店内で。

「俵屋吉富」公式サイト

ドラマのカギを握る西陣の名刹

■雨宝院(上京区智慧光院上立売西入ル聖天町9‐3)

短いシーンながら、ドラマのカギを握るシチュエーションで登場した西陣のお寺です。通称「西陣聖天宮」といい、創建は弘仁12年(821年)。弘法大師を開基とする古い由緒を持つお寺です。

幼い洛が母の雅子と鈴を鳴らした回想場面も感傷的でした

「京都人の密かな愉しみ」では過去のシリーズでもロケ地になっており、ファンの方にはおなじみかもしれません。今シリーズではまだ幼い洛が実の母親の雅子(死別)に手を引かれてお参りし、のちに義理の母となる三八子と顔を合わせる回想シーンが心に残りました。

ドラマの場面から。三八子の視線の先には…。

実際のお寺も画面で見たイメージ通り。静かで風情のある佇まいです。

洛と三八子の秘められた過去と密接につながる光景です。ファンの聖地巡礼には強くお勧めのスポットです。

雨宝院公式ページ

会津藩ゆかり、新選組発祥の地

■くろ谷 金戒光明寺(左京区黒谷町121)

「くろ谷さん」として親しまれる浄土宗の大本山。承安5(1175)年、法然上人が比叡山の黒谷を下り、この地に草庵を結び、浄土宗最初の念仏道場を開いたのが寺の起こりと伝わります。ドラマでは、京都を代表する作庭師である十五代目美山清兵衛(石橋蓮司さん)と、旧知の洛志社大学の東雲朔太郎教授(渡辺謙さん)が語り合うシーンに登場しました。なおロケ地となったお庭は普段は非公開で、公開時期は限られますのでご承知おきください。今回は特別に許可を得て撮影しました。

幸太郎(林遣都さん)に伝統の「美山清兵衛」の名跡を継がせることを決定した直後で、晴れ晴れとした清兵衛の表情が印象的でした。ロケ地の「紫雲の庭」は、法然上人800年大御遠忌記念として、法然上人の生涯やゆかりの人々などを大小の庭石で表現した枯山水庭園です。2006年4月、京都市の「植彌加藤造園」による作庭。

ドラマの場面から。

ドラマではこの2人が会津出身という、共通のルーツを持つことが明かされました。そのことは、このお寺がロケ地に使われていることと密接に繋がっていたのです。

幕末、京都の治安の悪化を憂慮した幕府は、文久2年(1862)に「京都守護職」という新しい職制を作り、治安維持に当たらせることにしました。これに任命されたのが会津藩主の松平容保で、容保公が本陣としたのがこちらのくろ谷 金戒光明寺だったのです。文久3年には江戸から京に入った近藤勇、芹沢鴨らが同寺で容保公と面談したことでも知られ、新選組発祥の地とされます。会津人が京都を護るための拠点としたお寺。京都の文化を愛し、生涯をかけて守った2人の会津人が語り合うに相応しいスポットでした。

ドラマ撮影の際のオフショット。2人の名優が映えるお庭でした(NHK提供)

金戒光明寺公式サイト

洛が京都を研究した大学

■同志社大学 今出川キャンパス(上京区今出川通烏丸東入)
関西を代表する私立大学です。明治8(1875)年、新島襄によって同志社大学のルーツである同志社英学校が創立されました。新島襄の妻、新島八重は大河ドラマ『八重の桜』の主人公です。

京都市の中心部、京都御所の北側に位置し、名刹・相国寺に隣接しています。キャンパス内には、クラーク記念館など重要文化財が5棟あります。歴史の重みを感じさせる美しいキャンパスです。

ドラマ収録時のオフショット(NHK提供)

ドラマでは「洛志社大学」として登場。重要文化財のクラーク記念館をバックに洛(穂志もえかさん)と東雲教授(渡辺謙さん)です。本物の大学院生と大学教授のよう。なお、今出川キャンパスと「洛の家」という設定の俵屋吉富本店は直線距離で300㍍前後。とても近い大学に通っていたのですね。

学内で京都について語り合う洛たち。ドラマの場面から。

同志社大学公式サイト

洛が、幸太郎が、東雲教授が語り合った

■cafe mole(カフェ モール)(中京区御幸町二条下ル424)

ドラマではバー『Forest Down』として登場しています。これまでにも様々な登場人物がお客として登場しており、木や植栽に囲まれたこの光景、「京都人の密かな愉しみ」ファンにはおなじみでしょう。

幸太郎の母、若林志保(秋山菜津子さん)が切り盛りしているバーです。お店の外で幸太郎がイギリスにいる宮坂釉子(吉岡里帆さん)から「結婚する。妊娠した」と電話で告げられ、呆然とするシーンがインパクトありました。

ドラマでは秋山菜津子さんの店主ぶりといい、お店の佇まいといい実に魅力的で、実在していたら通い詰めたくなるバーですが、店内はセットによる収録です。ロケ地のお店「cafe mole」の中は文字通りのカフェで、こういう↓光景にはなっていませんのでご承知おきください。なお実際のカフェの店内もとても落ち着いた空間で、聖地巡礼のひと休みポイントとしてお勧めです。

ambient cafe mole

■本法寺(上京区小川通寺之内上ル本法寺前町617)

室町時代に活躍した日蓮宗僧侶、久遠成院日親上人(1407-88)によって築かれた日蓮宗の本山です。本阿弥光悦や長谷川等伯らゆかりのお寺で、文化の香り高い名刹です。

今シリーズでも洛と三八子が立ち寄るなど、「京都人の密かな愉しみ」ファンには外せない聖地。

第1シリーズのドラマの場面から。

第1シリーズでは三八子と三上驍(石丸幹二さん)が対面するドラマティックなシーンで使われ、見事な桜とあわせて忘れられない方も多いかと存じます。

本法寺公式サイト

古都の様々な「継承」模様が綴られてきたドラマ。最終回、果たして洛は「久楽屋春信」を継ぐことになるのでしょうか。楽しみに決着を待ちたいです。

ドラマの場面から。女三代、どんな決着を迎えるのでしょうか。

プレミアムドラマ「京都人の密かな愉しみ Rouge-継承-」

放送:[BSP4K][BS] 2026年1月~3月 毎週日曜 夜10:00~10:45(全9話)
再放送:[BS] 翌土曜 夜11:30~0:15

作:源孝志

演出:源孝志 西山太郎 玉木雄介 西片友樹

音楽:阿部海太郎

出演:穂志もえか 常盤貴子 / 石丸幹二 森田想 杉田雷麟 秋山菜津子 銀粉蝶 / 渡辺謙
(ゲスト)林遣都 吉岡里帆 毎熊克哉 / 段田安則 ・ 笹野高史 ・ 名取裕子 ・ 石橋蓮司 /
山西惇 上杉祥三 深水元基 伊勢佳世 村雨辰剛 津村知与支 星田英利 木村祐一 白井晃 高岡早紀ほか

プロデューサー:森井敦(東映京都撮影所) 伊藤純(NHKエンタープライズ)

制作統括:川崎直子(NHKエンタープライズ) 樋口俊一(NHK) 八巻薫(オッティモ)

番組サイト:https://www.web.nhk/tv/an/kyotojin-rouge/pl/series-tep-4Q5QJM2PR6

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