和歌山市の紀三井寺境内に、同寺に伝わる「春子稲荷伝説」をモチーフとした壁画が完成。1月18日㊐にお披露目され、新たな名所として話題を集めている。
描かれたのは、豊臣軍による紀州攻めにまつわる物語。根来寺や粉河寺が焼かれ、紀三井寺も窮地の中、観音堂に仕えていた春子が白狐に姿を変え、敵陣に走った。翌朝、境内には「紀三井寺を攻めてはいけない」という禁制の書状が置かれていたといい、人々は寺を守った春子を、狐が使いの稲荷社に祀り、長く語り継いできた。

(右から)前田貫主、渡里さん、田村さん、仲原さん。 壁画の内側には春子稲荷社が建つ
壁画は、前田泰道貫主が「伝説を一目で理解してもらえるように」と発案。画家の田村茂さんが「間違ったことは描けない」と徹底した考証を重ねて原画を制作し、絵巻物風の構成で下絵を施した。さらに、海南市の左官職人、小川昇さんが漆喰を盛り上げる「コテ絵」の技法で立体的に造形。田村さんと共に彩色に当たった画家の渡里幸さんは「美しさと厳しさを出すため、何度も表情を描き直した」と振り返る。

春子と白狐(壁画の一部)
完成を祝い3月29日㊐午後2時〜、本堂前で「奉納歌謡祭」が開催される。前田貫主が作詞し、各アーティストがメロディーを付けた楽曲を披露。津軽三味線奏者の仲原英さんは「ロック調のリズムで、春子の愛を伝えたい」と意気込む。
前田貫主は「大河ドラマ『豊臣兄弟!』と同じ時代、春子は命がけで寺を救った。こうした激動をくぐり抜けて今がある。この壁画を、和歌山の歴史的分岐点に思いを馳せるきっかけにして頂ければ」と話している。
(ニュース和歌山/2026年3月21日更新)