同施設は7棟目にあたり、最大6名まで宿泊可能なエグゼクティブ仕様。井波の桜の名所である大門川沿いに位置し、滞在空間そのものをギャラリーとして設計した「泊まるギャラリー」をコンセプトに掲げる。

コラレアルチザンジャパンは、工芸と観光を掛け合わせた分散型ホテルを展開し、宿泊・体験・物販を組み合わせた独自の事業モデルを構築してきた。滞在を起点に、工芸との接点を生み出し、その価値を経済活動へと接続する仕組みが特徴だ。

◾️井波という“特殊な産地”から生まれた発想

同社の事業の出発点は、井波という町の特性にある。人口規模に対して多くの木彫刻職人が集積する井波は、日本有数の木彫刻のまちとして知られる。一方で、その仕事の多くは宮大工の文化の中で育まれ、一般の生活者が直接触れる機会は限られていた。

コラレアルチザンジャパン代表の山川智嗣は、もともと中国・上海を拠点に活動していた建築家。現地で経験を積み独立したのち、日本での拠点を模索する中で井波と出会った。職人が身近に存在しながら、外部にも開かれているこの土地の文化に可能性を見出し、移住を決心。2016年に「Bed and Craft」を開業し、宿泊者が地域の職人の工房を訪れ、木彫刻や漆芸などの制作を体験できる「職人に弟子入りできる宿」として、従来の観光とは異なる滞在のあり方を提示してきた。

Bed and Craftの特徴は、「一棟一職人」という設計にある。宿泊棟ごとに異なる作家が関わり、設計段階からその作家の思想や作品を反映させる「マイギャラリー制度」を採用。宿自体がその作家のギャラリーとしても機能し、滞在を通じて作品との出会いから購入までをつなげる仕組みが組み込まれている。

宿泊棟は町中に点在し、滞在者はひとつの施設に閉じるのではなく、町を歩き、工房を訪れ、地域の日常に触れることができる。空き家など既存の建物を活用することで、過度な開発に依存せず、地域に溶け込む形で宿泊機能を拡張してきた点も大きな特徴だ。

今回開業する「OUKA」は、初のエグゼクティブクラスとして設計され、専用コンシェルジュサービスなども導入される予定だ。滞在の快適性を高めることで、より深い体験価値を提供する。

手工業デザイナーの大治将典が参画し、北陸各地の工芸メーカーと協業して生まれた家具や日用品が空間に配置されている。宿泊者はそれらを実際に使いながら体験し、気に入った作品は購入することもできる。工芸を「展示・販売」から「体験」へと転換することで、新たな流通のかたちを生み出している。

Bed and Craftが提示するのは、滞在を通じて作り手との関係が生まれ、その後も続いていく構造だ。コラレアルチザンジャパンの取り組みは、工芸を保存するのではなく、現代の生活の中で機能させるための仕組みづくりともいえる。

Forbes JAPAN 編集部