京都市京セラ美術館(京都市左京区)で、「西洋絵画400年の旅―珠玉の東京富士美術館コレクション」が3月20日から開催されます。

1983年に東京都八王子市に開設した東京富士美術館は、国内外で制作された幅広い時代の絵画・版画・彫刻・写真・陶磁器等を約3万点収蔵しています。とくに西洋絵画コレクションは、16世紀のイタリア・ルネサンスから20世紀の近現代美術までを網羅し、国内屈指の充実度を誇ります。本展では東京富士美術館の所蔵品から選りすぐられた80点あまりの西洋絵画が展覧されます。

西洋では伝統的に神話画や宗教画が高尚な絵画ジャンルとして重視されましたが、近代になると斬新な絵画主題の開拓や、造形表現そのものの革新へと画家たちの関心が移っていきました。

ティントレットやヴァン・ダイク、クロード・ロラン、カナレットらオールドマスターの名画から、新たな絵画表現を先導したモネやセザンヌ、モディリアーニ、マグリットといった近現代の重要画家たちの作品を通して、西洋絵画400年の歴史をじっくりと堪能してみてはいかがでしょうか。

ジャック=ルイ・ダヴィッドの工房《サン=ベルナール峠を越えるボナパルト》1805年 油彩・カンヴァス

西洋絵画400年の旅―珠玉の東京富士美術館コレクション

会場:京都市京セラ美術館 本館 北回廊1階
(京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124)

会期:2026年3月20日(金・祝)~5月24日(日)

開場時間:10:00~18:00 ※入場は閉場の30分前まで

休館日:月曜日(ただし5月4日(月・祝)は開館)

観覧料:
一般 2,000円、高大生 1,500円、小中生 500円
※未就学児は入場無料
※障がい者手帳等を提示の方は本人及び介護者1名まで無料(要証明)

アクセス:
地下鉄東西線「東山駅」から徒歩約8分
市バス「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ

詳細は、展覧会公式サイトまで。

展示構成
第I部 絵画の「ジャンル」と「ランク付け」

西洋絵画では、ルネサンスから19世紀前半まで、絵画の価値は「ジャンル」によって格付けされていました。最も格が高いのは神話や聖書の物語を描いた「歴史画」、次に肖像画、風俗画、風景画、静物画の順で格付けされ、この序列の背景には、キリスト教的価値観やルネサンスの人間中心主義が関係していました。

ノエル=ニコラ・コワペル《ヴィーナスの誕生》1732年頃 油彩・カンヴァス
アントニー・ヴァン・ダイク《ベッドフォード伯爵夫人 アン・カーの肖像》1639年 油彩・カンヴァス

なかでも特殊なのは17世紀のオランダで、共和制かつ偶像崇拝を禁止するプロテスタントを国教としていたため、美術作品の需要は裕福な市民階級の中に高まり、特に風俗画や静物画が絶大な人気を博しました。

カナレット(ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)《ヴェネツィア、サン・マルコ広場》1732-33年頃 油彩・カンヴァス
ジャン=バティスト・モノワイエ《花》17世紀 油彩・カンヴァス
第II部 激動の近現代―「決まり事」の無い世界

第II部では、産業革命と市民革命によって誕生した近代社会における絵画を紹介します。18~19世紀のフランス美術界では、古典主義を重んじるアカデミズムが支配的であり、サロンへの入選が画家の成功に不可欠でした。しかし、革命や産業化を経て既存の価値観が揺らぎ、感情や個性を重視する新たな美の価値観が生まれ、美術は伝統よりも独創性を求めるものへと変化していきます。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《赤い服の女》1892年頃 油彩・カンヴァス
ポール・セザンヌ《オーヴェールの曲がり道》1873年頃 油彩・カンヴァス

印象派など独自の展覧会を開く動きが広がり、さらに、中産階級の台頭により風俗画や風景画の需要が増え、歴史画の優位性も失われ、ジャンルの序列が解消されていきました。

クロード・モネ《睡蓮》1908年 油彩・カンヴァス
ルネ・マグリット《観念》1966年 油彩・カンヴァス

本展では、国内屈指の西洋美術コレクションを誇る東京富士美術館が所蔵する80点を一挙展示。ルネサンスから近現代まで、約400年にわたる西洋絵画の変遷を辿ることができます。かつて厳格に定められていた「ジャンル」の序列が、時代の荒波とともに解き放たれ、画家たちの自由な感性が花開いていく過程を、珠玉の作品群を通してじっくりと味わってみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)