子どもへの英語教育熱の高まりとともにインターナショナルスクールや海外留学に注目が集まるようになりました。その選択肢のひとつとして人気が高まっているのが、イギリスのボーディングスクールです。
イギリスで学ぶ小中高の留学生、約700名のサポートを行う英系企業、ピッパズ・ガーディアンズのカントリー・マネージャーを務める黒田よりこさんに、ボーディングスクールの最新事情などを教えていただく短期連載。前回は、イギリスの私立学校で体育とは別に授業がおこなわれる 『Games(以下、ゲームズ)』というスポーツを紹介しましたが、今回はそもそもボーディングスクールで“さまざまなスポーツ”への取り組みが推奨される理由について教えていただきます。
ひとつのスポーツだけに絞らない理由
前回はイギリスのボーディングスクールにおけるスポーツの取り組みのひとつとして、「ゲームス」をご紹介しました。今回は、もう少し深く掘り下げ「なぜ、ボーディングスクールでは多種多様なスポーツに取り組むことを奨励しているのか」についてお話しします。
よく「イギリスにも部活動はありますか?」と聞かれますが、イギリスのシニアスクールでは授業が終わると「コカリキュラー」という部活動とは異なる課外活動の時間があります。ですが、テニスを選んだら、週4日テニスの活動に参加するということではありません。例えば、月曜日はアーチェリー、火曜日はオーケストラ、水曜日は卓球……というように、自分の興味に合う異なる活動をいくつか選びます。
その理由について、前回もお話しを伺った、ブランデルズ・スクールのディラン先生に伺いました。
「イギリスのボーディングスクールでは、たとえ早期に才能を示しても、16~18歳までは一つのスポーツに特化するのではなく、幅広いスポーツを体験すべきだと考えています。その理由は単純です。身体的・心理的発達には個人差が大きく、多くのアスリートが真に頭角を現すのは10代以降、あるいはそれ以降だと考えているからです。研究によれば、トップアスリートは主要スポーツを遅くから始め、運動能力や回復力を育む多様な初期経験の恩恵を受けているケースが多いのです。
まず複数のスポーツを経験することで、早期にスポーツを絞ってしまうと頻発する怪我や燃え尽き症候群を軽減できます。その研究では複数のスポーツに参加することが、身体能力の習得と長期的な楽しみを促進すると発表しています。
多様なスポーツに取り組むことは、補完的スキルも育むと感じています。ホッケーで培った敏捷性はサッカーに活かせ、水泳で得た筋力はあらゆる競技に役立つのです。身体的成長を超え、このアプローチは社会的成長も促すと考えています。異なるスポーツを通して新しい友だちも作れますし、適応力、チームワーク、回復力を磨くことができます。
男子寮の寮長として10年間勤務した経験から、複数のスポーツに取り組むことの重要性を直接目の当たりにすることがありました。スポーツを一種に絞ってしまった生徒が怪我をしてしまうと、チームから疎外されたような気持ちになり、チームメイトとのつながりを維持するのに苦労をし、しばしば苛立ち、集中力が低下し、不安感は増大。それが時に問題行動として現れることがありました。複数のスポーツへの参加が社会的、情緒的安定にとって重要であることが理解できる例です」。
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日本では運動会も楽しめなかった子が……
