2021年に高知で上演した土佐和紙をテーマにした舞台が、2026年3月東京で再演されます。芸術の分野から土佐和紙の魅力を発信する思いを取材しました。
ことば、音楽、そして全身で表現する舞台芸術。テーマは『土佐和紙』です。
2026年3月8日、高知市の蛸蔵で行われた舞台「いとなむ」。もともとは2021年に高知で上演された作品で、今回5年ぶりに東京での再演が決まりました。その上演に先駆けて、音楽や照明を簡素化した公開の最終稽古=ワークインプログレスが高知で披露されました。
演出・振付を担当したのは国内外で活躍する振付家でダンサーの鈴木竜さんです。
■鈴木竜さん
「この作品は、もともと土佐和紙とはなにかという問いを出発点にしている。土佐和紙というものが、ただのモノではなくて、ひとつの生命体みたいなものではないかと。そこにあった水は同じ水は流れていないんだけれども、土佐和紙ってずっと続いているよねっていうところ。それを、ひとつ生命のようにとらえて、その生命体の姿を、舞台上に現出させるということをやってみようというのが、今回の作品になる」
午後7時、開演を迎えます。まず登場した女性が、大きな三角の筒状のものを回し始めます。
実はこれ、表面に和紙を貼り付けて乾燥させる機械なんです。実際に工場で使っているものを、そのまま持ってきました。
回転したときに出る音も別に作ったものではなく、機械からのそのままの音。そこに女性の歌声が加わります。
土佐和紙をひとつの生命体ととらえ、人々の1000年のいとなみを落語で表現したり、楽器を持ち全身を使って表現したりと、絶えず変化しながら受け継がれてきた土佐和紙と、それにかかわる人々を演じています。
■鈴木竜さん
「今回の特にこの作品については、僕がどうしたいかというよりも、そこに何があるかというものに秩序を与えていくことだったりとか、それを順序だてていく、観客の皆さんや他の出演者と一緒に、それを共有できるできるように順序だてていく作業という感じだったので、そこについては、ある意味でさほど苦労しなかったというか、そこにあるものというものに、どれだけ素直に目や耳や意識を向けられるかというところだったかなと思う」
この作品は土佐和紙がテーマですが、舞台上に土佐和紙が1枚も出てくることはありません。演者が声と身体、そして音で表現することで観客に想像してもらうことがねらいです。高知の自然、人、伝統技能から生み出された舞台芸術は5年の歳月を経ていよいよ東京で再演です。
■ 鈴木竜さん
「地方制作の作品が上演されること自体が、かなり稀有な機会かなと思っていて、いろいろなことが、世界では日本でもいろいろな場所で起きていて、こういうふうに生きている人たちがいるんだということが、少しでも感じ取ってもらえるといいなと思う」
■主催者・浜田あゆみさん
「伝統工芸とか、和紙って聞くと、美しいところしかあまり伝えることができないと思っていて、ただ私たちの作品は、そこに隠された人々の思いだったりとか、どれだけ人々が努力して、和紙というものを作り続けてきたかというところがあるので、みなさんにそういったことを知っていただきたいと思っている」
土佐の地に息づく伝統を身体と音でつむぐ舞台「いとなむ」は、3月13日から15日に、東京都世田谷のシアタートラムで上演されます。
