かつて『婦人画報』では毎月いけばな特集がありました。作品制作をお願いしたのは、昭和、平成に活躍された各流派のお家元や作家の方々です。この連載では、いまでは大変貴重になった各流派の季節の作品を、小誌バックナンバーから特別に掲載してご覧いただきます。

4月は天平時代、光明皇后によって総国分尼寺として創建された法華寺のいけばな。重要文化財の本堂からひな会式の声明(しょうみょう)が流れる4月初旬、法華寺を場に、桜の作品をいけていただきました。解説は、当時の婦人画報いけばな編集者・星野眞理子さん。今月のいけばな展情報(2026/3/11~3/16開催)は記事の最後にお知らせします。

・・・

■この続きはログインするとお読みいただけます

法華寺御流作品1●花材:桜(サクラ)、松(マツ)、透百合(スカシユリ)、ストレリチア 花器:陶器法華寺御流作品2●花材:桜(サクラ) 花器:御紋章制定花器法華寺御流作品3●花材:桜(サクラ)、椿(ツバキ)、水仙(スイセン) 花器:信楽水盤法華寺御流作品4●花材:桜(サクラ)、アイリス、トルコギキョウ、鳴子百合(ナルコユリ)、フリージア、葉蘭(ハラン) 花器:制定花器今月のいけばな展情報:2026/3/11~2026/3/16開催

■この記事をプレゼントできます!

その他の有料会員限定記事はこちら

仏様にお供えするためのいけばな4月 家元のいけばな撮影=井上博道

法華寺御流作品●花材:桜(サクラ)、松(マツ)、透百合(スカシユリ)、ストレリチア 花器:陶器

8世紀半ば、聖武天皇の后、光明皇后によって創建された奈良の法華寺は、「法華滅罪之寺」と称され、公家や将軍家の子女が住持となる尼門跡寺院として、敬虔なる信仰心と高貴な文化が受け継がれてきました。華道の流派、法華寺御流は、宮中女官や尼僧たちの心身修養のため光明皇后が華道道場を建て「小池の坊」と名付けたのが創始と伝えられ、法華寺門跡が家元を務めています。

毎朝、本堂の仏様に花をお供えするために生まれたいけばな。天下飢病の人々を救う悲田院を作った光明皇后の信仰と慈愛が感じられます。

上の作品は、法華寺客殿、本玄関の格花(かくばな)。帝(みかど)の行幸(みゆき)を描いた大きな衝立を背に、桜(サクラ)と松(マツ)の凜とした迎え花です。極楽鳥花の別名を持つ南アフリカ原産のストレリチアは、鳳凰のイメージ。本玄関にふさわしい格調を漂わせています。

下は奥書院、上段の間控えの格花一対です。客殿の襖には大柄な裏菊紋と牡丹紋が配され、尼門跡寺院の格式を伝えています。菊の紋章が入った八角柱の漆器に、桜一式の格花。一対であることは、いけばなが仏様に献花されてきたことの証です。

4月 家元のいけばな撮影=井上博道

法華寺御流作品●花材:桜(サクラ) 花器:御紋章制定花器

4月 家元のいけばな撮影=井上博道

法華寺御流作品●花材:桜(サクラ)、椿(ツバキ)、水仙(スイセン) 花器:信楽水盤

四季折々の花が咲く、祈りの尼門跡寺院

法華寺では毎年4月1日から1週間、ひな会式(ひなえしき)が営まれます。「法華滅罪之寺」の「法華経」信仰による華厳会で、開基である光明皇后の法要として行われています。

法華寺の境内は春に限らず、四季折々の花に満ちています。境内の西、江戸時代初期に作庭された国史跡名勝庭園には、京都仙洞御所の庭園から石や庭木が移されていて、5月には杜若(カキツバタ)が見頃を迎えます。また東の華楽園では約100本の椿や珍しい法華寺蓮をはじめ、和洋取り混ぜた四季折々の花が咲き、散策の小道も設けられています。毎朝、仏前にお供えする花もここで摘まれています。

上は、光月亭の床の間の盛花です。梅林で名高い奈良・月ヶ瀬村(当時)にあった300年ほど前の庄屋宅で、縁あって法華寺に移築されました。簡素な床の間に信楽の水盤。境内に咲く花々でお客さまを迎えます。

下の作品は、中庭に面した客殿廊下の二管投入れ。春の日差しが溢れています。斑模様が軽快さを感じさせてくれる二管の竹花器に、斑入りの葉やアイリス、フリージアなど春の可憐な草花を添え、桜の開花を待ちました。

4月 家元のいけばな撮影=井上博道

法華寺御流作品●花材:桜(サクラ)、アイリス、トルコギキョウ、鳴子百合(ナルコユリ)、フリージア、葉蘭(ハラン) 花器:制定花器

4月 家元のいけばな

撮影=井上博道

【今月の作家】久我高照
こがこうしょう●1921年生まれ。旧侯爵・久我家出身で明治天皇皇后の姪。1936年に15歳で法華寺に入門得度。1939年に第45世門跡に就任、70年以上門跡を務めて大遠忌法要を2度勤める。書道や絵画などにも秀で、華道「法華寺小池御流(現・法華寺御流)」の家元も務める。2011年没、享年90。

4月 家元のいけばな

撮影=井上博道

【今月の流派】法華寺小池御流(法華寺御流)
ほっけじこいけごりゅう(ほっけじごりゅう)●法華寺が建立されたころ、光明皇后が宮中女官や尼僧たちの心身修養のための華道道場を建て「小池の坊」と名付けたのが創始で、以来法華寺門跡が家元を務める。2012年、長年副住職を務めた樋口教香尼が門主に就任。近年、法華寺小池御流を法華寺御流と改める。草木特有の美を主材とし、花型には格花、盛花、投入れなどがあり、法華寺内教場と奈良近鉄文化サロン教場で学べる。

法華寺御流

いけばな作品の初出:『婦人画報』2012年4月号(撮影=井上博道)

3月のいけばな展情報(2026年3月11日〜3月16日開催)

第64回いけばな協会展

4月 家元のいけばな©一般社団法人いけばな協会

2025年いけばな協会展 挿花:勅使河原 茜(一般社団法人いけばな協会理事長 草月流家元)

関東のいけばな作家によって設立された一般社団法人いけばな協会の展覧会が、3月11日(水)から3月16日(月)の6日間、東京・新宿高島屋で開催されます。一般社団法人いけばな協会は、流派を超えた個人参加による団体で、植物研究旅行を開催するなど、格式張らない和やかな雰囲気が特徴です。展覧会では作家の植物への思いが感じられる作品が並びます。会期中は2日ごとに作品が変わり、のべ57流派、395名の作家が美と技を競います。春の花々が競い咲く季節、ぜひ爛漫の美を楽しんでください。

日程/2026年3月11日(水)~3月16日(月)
   第1次展:3月11日(水)・12日(木)
   第2次展:3月13日(金)・14日(土)
   第3次展:3月15日(日)・16日(月)
場所/新宿高島屋 11階催会場
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2
Google mapで確認
時間/10:30~19:30(12日、14日、16日は17:30まで) ※入場は閉場30分前まで
入場料/1,000円(税込) 高校生以下無料
主催/一般社団法人いけばな協会
問い合わせ/一般社団法人いけばな協会事務局 tel.03-5972-4687

春のいけばな展 -池坊中央研修学院祭-

4月 家元のいけばな©華道家元池坊

2025年 会場風景

室町時代に華道の理念を確立し、継承してきた華道家元池坊の、春のいけばな展が3月13日(金)から3月16日(月)まで、京都の池坊で開催されます。この花展は、池坊の最高教育機関である池坊中央研修学院の卒業・修了作品発表展で、期間中は華道家元四十五世池坊専永氏や学院長の次期家元池坊専好さんの作品をはじめ、最高レベルの作品、約800点が展示されます。ぜひお立ち寄りください。

日程/2026年3月13日(金)~3月16日(月)
   前期:3月13日(金)・14日(土)
   後期:3月15日(日)・16日(月)
場所/華道家元池坊(家元道場、池坊ビル、WEST18ビル)
京都府京都市中京区堂之前町248
Google mapで確認
時間/10:00~17:00(14日、16日は16:00まで)
入場料/1,000円(税込) 高校生以下無料
主催/華道家元池坊総務所、一般財団法人池坊華道会
問い合わせ/池坊中央研修学院 教務課 tel.075-221-4550

〇選りすぐりの記事を毎週お届け。『婦人画報』メールマガジン(無料)ご登録はこちら

〇この記事をプレゼントできます!詳細はこちら