2025年度のFIA世界ラリー選手権(WRC)で、圧倒的な強さを見せた“FIT-EASY”のロゴを纏ったGRヤリスの活躍は記憶に新しい。全国にアミューズメントフィットネスクラブを展開するフィットイージー株式会社。代表である國江仙嗣氏はクラシックカーコレクターと知られており、なかでも圧倒されるのは、いわゆるワークスカーと呼ばれる本物のコンペティションカーたちである。
コレクターというだけでなく自らもステアリングを握りル・マン クラシックなど海外クラシックカーレースにも積極的に参加している國江仙嗣氏。上のメイン写真が2029年4月、ヘリテージ クラフト ミュージアムとして利活用される旧岐阜県庁舎に展示予定のクラシックカーたちだ。
トヨタチーム ヨーロッパ(TTE)の歴代のWRC参戦車や、サザンクロスラリー優勝のスタンザといったラリーカー。ル・マン24時間レースやデイトナ24時間レースといったロングディスタンスレース出場車といった海外で活躍したマシンに加え、富士グランチャンピオンレース(GC)、全日本GT選手権出場車といった日本にゆかりのあるレーシングマシンたちが並んでいる。
デイトナ24時間レースでは総合3位と好成績を残したKUDZU MAZDA DG4、MAZDA RX-792P、SARD MC8Rが並んだ手前は、國江さんの日本車回帰のきっかけとなったトムス童夢85C-L。
ほとんどがロールケージを備えたコンペティション仕様となっており、全世界で開催中のリバイバルイベントにも即出場できる動体状態だ。
IMSA GTUクラス出場のRX-7、そして國江氏の思い出の詰まったポルシェ911T、アメリカではスーパーマンという愛称で一時代を築いたヒーリー100M、100Sのヒーレーが並ぶ。
1978年のデイトナ24時間レースに初めてマツダ東京が挑んだRX-3と並ぶのはグループBのニッサン240S、この個体は南アフリカで活躍。
セリカ参戦10年前にして初優勝を掴んだのは1982年のニュージーランドラリー出場のセリカ2000GTと、1979年サザンクロスラリー優勝のスタンザが並ぶ。
すべて動態状態での保存というマシンたちは積極的にイベントで走行させるだけでなく、後世へ残すべく2025年5月には一般財団法人ワールドヘリテージ財団を立ち上げ、ミュージアムの設立を目指していた。
海外でのオークションを経て日本へと戻ってきたロータス エリートは、まだ2輪車メーカーだった黎明期のホンダが購入した個体そのもの。
そうしたタイミングで、岐阜県の“サウンディング調査”から、國江氏の生まれ育った岐阜市に残る歴史的建造物“旧岐阜県庁舎”の利活用事業者を“公募型プロポーザル”により募集するという発表があった。
“公募型プロポーザル”とは、国や自治体が業務委託先を選定する際に広く提案を募り、企画力、技術料、専門性など総合的な評価で最も有益となる事業者を選ぶ、公平性もあり近年増加している方法だ。
対象となる“旧岐阜県庁舎”は1924年(大正13年)に建設され1966年(昭和41年)まで岐阜県庁舎として県民に親しまれていたが、平成25年に閉庁した。
岐阜県の中枢が集まった岐阜市司町に佇む旧岐阜県庁舎、2029年4月のリニューアルオープンを待つ現在の姿、ヒマラヤ杉の巨木と共に焦土と化した街の復興を見守ってきた。
太平洋戦争時の1945年(昭和20年)7月9日、129機のB29による岐阜空襲では、旧岐阜県庁舎も被弾。コンクリートの屋根を突き破って落下した焼夷弾を、10人程の宿直員が木桶の水をバケツリレーで運び消火し、周囲は瓦礫の山の壊滅状態となるなか、最小限の被害に食い止め消失を免れる。戦前から現存している道府県庁舎24棟の中でも8番目に古く歴史的な価値もあるのだが、耐震補強などの課題もあり自治体による活用法は閉ざされていた。
そうした状況下、周囲では2015年に岐阜市中央図書館(通称メディアコスモス)が完成した。2021年には岐阜市内を一望できる無料の展望スペース「つかさデッキ」を備えた新庁舎へと岐阜市役所が生まれ変わるなど、新しい時代へ変化する官公庁街にポツンと取り残されていた”旧岐阜県庁舎”に「いつかは解体されるのではないか」と危惧していた國江氏が、この公募型プロポーザルに応募した。
宿泊施設を備えたミュージアムとして2029年4月にリニューアルオープンする旧岐阜県庁舎、幹事としてクラシックジャガーのエンスージアストとして知られる新谷永氏もプロジェクトに取り組む。
1階には岐阜県の工芸品、クラシックカーとゴルフのミュージアム、カフェ、2〜3階にはスポーツジム、レストランとホテルを整備し知事室はバーとして運用したいという提案は、競合4社の提案のなかから最も高い評価を受け、優先交渉権者に選ばれる。そして2026年1月には基本協定が結ばれ、正式に複合施設として再構築されることが決まったのである。
2029年4月のリニューアルオープンが決まった旧岐阜県庁舎、設計デザイン建築家の山下泰樹氏による完成パース。
自動車博物館としてリニューアルオープンする旧岐阜県庁舎の設計デザイン建築家の山下泰樹氏による完成パースから西側は追加建造の予定がわかる。
正面玄関左右にあるヒマラヤ杉の巨木と共に、100年以上、岐阜の街を見守り続けた“旧岐阜県庁舎”は往時の姿のままでリニューアルされる事となり、県民にとって馴染み深い岐阜のシンボルは、これからも地域の交流の場所として、またホテルやレストランを備えたミュージアムとして文化を発信の場となる、新たに岐阜県への観光拠点として2029年4月のオープンすることが発表された。3年後が非常に楽しみである。
自動車博物館としてリニューアルオープンする旧岐阜県庁舎の設計デザイン建築家の山下泰樹氏による完成パースでは、庁舎の中央に位置する中央階段ホールは、エントランス受付を追加し特別館のある受付となる。
2029年4月のリニューアルオープンが決まった旧岐阜県庁舎、設計デザイン建築家の山下泰樹氏による完成パースでは旧知事室はBarとしてホテルの付帯施設として特別な空間へと、その価値をさらに高める空間となる予定だ。
文・写真:奥村純一 Words and Photography: Junichi OKUMURA
