昨年10月、AppleはM5チップを搭載した「Apple Vision Pro」の最新モデルを投入しました。
主なアップデート箇所はこんなところ。
1. M2チップからM5チップに
→全体的なパフォーマンスを向上
2. デュアルニットバンドを採用
→付け心地が良くなった
3. リフレッシュレートが最大120Hzまで対応
→より滑らかな体験に
4. ピクセルを10%多くレンダリングできるように
→よりくっきりなビジュアルに
5. バッテリー性能の向上
→最大3時間のビデオ再生が可能に
Photo: 小野寺しんいち
そんな新しくなったVision Proを、ガッツリ長期間使用したのがこの男、編集部員の代田です。
ギズモードでは動画編集を担当している彼いわく、
Vision Pro使ったら、人生設計練り直すことになっちゃいました。
って意味深発言。今回は、最新モデルのレビューを含め、彼の身に一体何があったのか、聞いていきます。
ワイドスクリーンで作業領域を拡大。気分を変えて、南国へGO
初代Vision Proは、リリース直後に使用経験のある代田。久しぶりにVision Proを試して、たくさんのアップデートに驚いたといいます。
まず、代田が今回最もVision Proの恩恵を実感できたのは、日々の仕事。
代田がたどり着いた仕事用セットアップは、超シンプル。Mac1台とVision Pro1台。Vision Proは高品質な空間オーディオにも対応しているため、イヤホンすら必要ありません。
Video: ギズモード・ジャパン
とにかくワイドスクリーンが便利でした。
モニターがない環境でも目の前に大きな画面を広げられるので、作業効率がかなり上がります。画面の湾曲も絶妙で見やすく、長時間使っても思ったほど疲れませんでした。
Vision ProはMacと接続することで、Macの画面を空間上に表示する仮想ディスプレイとして使えます。便利なのが、アスペクト比を変更できる点。「ワイド」や「ウルトラワイド」を選べば、物理モニターでは実現できないほど、広々とした作業領域を確保できます。
Mac立ち上げて、Vision Proをスチャッとつければ、目の前に最適な作業環境が立ち上がる。そんな空間コンピューティングならではの体験が、動画編集のように大画面と集中力を求められる作業と見事に噛み合ったのです。
Photo: 小野寺しんいち
これまでにも多くのXRデバイスを試してきましたが、動画編集で実用レベルで使えるのは、現状Vision Proしかないと思います。
他のデバイスだと、遅延が出て音と映像がズレたり、FHDまでしか対応していなかったりして(Vision Proは4K対応)、編集用途には厳しいんです。Vision ProはMacと繋げたときの動作がとてもスムーズで、色味の違和感もありませんでした。
こうした体験の裏側には、M5チップの搭載によるリフレッシュレートの向上や、ピクセルを10%多くレンダリングできるようになったことが効いているはず。映像の滑らかさや精細さが、そのまま作業のしやすさに直結しています。
M5による進化は、Vision Proを“面白いガジェット”から、“リアルに現場で使える仕事道具”へと引き上げました。
Video: ギズモード・ジャパン
さらには、こんな使い方もしていたそうで、
周りの景色(バーチャル背景)を変えてよく作業していました。鳥のさえずりとか波の音とか、ホワイトノイズを流しておくと集中できるんですよね。
年末の寒い日に、景色を南国に変えて、気分だけアゲるなんて使い方をしてました(笑)
デュアルニットバンドが、付け心地を改善
とはいえ、動画編集のような作業をVision Proを装着したまま長時間続けるのってさすがに大変そう…。
――1日どれぐらい使ってたんですか?
着けたり外したりしながらですが、トータルで3時間ぐらい使ってたと思います。
――結構長いですね。疲れませんでしたか?
3時間を超えると、首や目はさすがに疲れてきます。でも、初代Vision Proと比べると、付け心地ははるかに良くなったと感じました。
Photo: 小野寺しんいち
付け心地の改善に大きく貢献しているのが、今回新たに採用された「デュアルニットバンド」です。頭の上にもバンドが追加され、後頭部と上部の2点でしっかりと支える構造になったことで、装着時の安定感が向上しました。
実際、本体自体の重さは、初代が600~650gだったのに対し、新モデルは750~800gと重くなっています。しかし、重量の増加を感じさせないバランス設計と、デュアルニットバンドによる荷重分散が、長時間使用における負担を減らしているようです。
Photo: 小野寺しんいちiPhone以外で撮った写真も、空間写真に
作業用途だけでなく、Vision Proにはプライベートの楽しみを広げてくれる機能もありました。代田が強く惹かれたのが、進化した「空間写真」です。
Video: ギズモード・ジャパン
Vision ProやiPhoneで撮影していない写真でも、空間写真にできるようになったんです。
昔の写真がすごくリアルになって、記憶を蘇らせてくれるです。他のカメラで撮った写真でも、その色味をきちんと残したまま空間写真にできるのがいいところですね。
visionOS 2のアップデートによって実現したこの機能では、過去に撮影した写真も立体的な奥行きを持つ空間写真へと変換できます。
Video: ギズモード・ジャパン
一眼レフやフィルムカメラで撮った写真まで空間写真として蘇らせられる点は、写真好きにとっても大きな魅力でしょう。
Personaがリアルすぎる。もう本当にそこにいる
また、代田が純粋に「楽しかった」と語る体験のひとつが、Personaを使ったFaceTime通話でした。
Personaは、参加者それぞれのアバターを3Dで生成し、同じ空間内に配置して会話できるようにする機能。
Video: ギズモード・ジャパン
Personaがすごくリアルになっていて、話している相手が本当に目の前にいるように感じました。
試しにハイタッチしてみたんですが、実際には触っていないのに、触ったような感覚があるんです。声が聞こえてくる方向も人それぞれちゃんと分かれていて、“空間”を感じられました。
これまでの2Dのビデオ通話では、どうしてもコミュニケーションが平面的になりがちでした。表情や声は伝わっても、その場の距離感や空気感までは共有しきれず、盛り上がりに欠けてしまうことも。
新しいM5チップの搭載により、Personaの収録プロセスが高速化され、生成の精密さや動きの反映速度の向上にも寄与していると考えられます。オンラインコミュニケーションがどんどんリアルな会話に近づいてきているのです。
Personaは事前に登録した自分のアバターを使ってくれるので、実際にはパジャマのままでも相手に気づかれずに通話できるのもいいところです(笑)
朝のミーティングで、寝起きだからカメラをオンにしたくない、という話もよく聞きますが、これなら解決できそうですよね。
単なる“便利な通話機能”ではなく、人と人との距離感そのものを作り替える可能性を感じさせる体験となりました。
僕、人生設計変えました
最後に代田から、これまでよりも一段と真剣な面持ちでこんな発言がありました。
これからは、データそのものに価値がつく時代になっていくと思うんですよ。
……どゆこと?
Vision Proの空間ウィジェットは、3Dコンテンツを空間のなかに“置ける”機能です。Vision Proを外しても配置が記憶され、同じ場所に表示され続けます。たとえば、壁にペタッと時計を貼り付ければ、次に装着したときもそこに“掛かっている”のです。
そんなウィジェットの中で代田が特に面白いと感じたのが、『SunnyTune』というアプリでした。
Video: ギズモード・ジャパン
スノードーム型の天気アプリで、現実世界で雪が降ればスノードーム内でも雪が舞い、朝になれば太陽が昇り、動物が現れます。デジタルでしかできない演出付きの、その場にずっと“置いておける”インテリアです。
現実の部屋ってスペースに限りがあるので、新しいインテリアを増やすのは大変ですよね。でもXRの世界で過ごす時間が増えれば、こういう“置けるデジタルアイテム”のニーズは、確実に増えていくと思うんです。
スマホのアプリだと700円くらいでも買うのをためらうのに、実際の空間に置いて楽しめるインテリアなら、1万円払ってもいい気がしました。これって、これまでに味わったことない感覚です。
Photo: 小野寺しんいちSunnyTuneの動物を動かしているところ
この体験を通して、映像クリエイターである代田のなかで、ひとつの閃きがあったといいます。
もしかしたら、これからは映像そのものが高値で売られる時代が来るんじゃないかと思ったんです。
写真はこれまでも作品として売られてきましたよね。でも映像は、基本的に再生されるもので、単体で所有される存在ではありませんでした。でも、空間に置けるようになれば、映像も“作品(オブジェクト)”として買われるようになるんじゃないかと思うんです。
Video: ギズモード・ジャパン
AIの進化が加速する中で、代田は自分自身の将来に強い危機感を抱いていたと言います。
正直、めちゃくちゃ焦ります。食いっぱぐれないために、次に何をすべきか考えていたタイミングでVision Proに出会って、これかもしれないと思ったんです。
代田が見据えているのは、映像クリエイターとしての新たな価値の創出方法です。これからは、「撮る」、「編集する」に加えて、それを「多くの人が部屋に飾りたいと思う形にする」。新しい映像表現に挑戦していきたいと思ったといいます。
また、XRデバイス向けのイマーシブ映像の需要も今後さらに高まり、機材のアップデートで制作のハードルも下がっていくでしょう。Vision Proは、まさにそんな映像クリエイターの新しいチャンスを開拓してくれるデバイスだと、代田は感じたといいます。
まだまだ高いけど、着実に進歩しているVision ProPhoto: 小野寺しんいち
リアルとデジタルの境界を少しずつ溶かしていくVision Pro。今はまだ実感しにくいかもしれませんが、Vision Proの中で過ごす時間が増えれば、私たちが求めるものや、生活基盤が全く異なる形になっていくのかもしれません。
すでにゲームの世界では、アバター用の服が高値で取引されています。 将来、世界的なブランドが作ったPersona用の衣装が高額で売られる時代が来ても、不思議ではないかも?
M5チップの搭載と新しいバンドの採用によって、一歩、ちゃんと使えるデバイスに近づいたVision Pro。価格面ではまだまだハードルが高いですが、人の生活様式や表現の価値そのものを塗り替える可能性を秘めた存在であることは間違いなさそうです。
さて、Vision Proとの出会いによって、人生設計を見直すことになった代田。Vision Proと、今後の彼の動向にも、注目を!(?)
Source: Apple (1, 2)
