このたび、米国とイスラエルがイランに対して軍事行動を行う事態となりました。中東情勢は一気に緊迫し、世界経済にも重大な影響を及ぼす可能性が高まっています。

特に日本にとって現実味を帯びるのが、ホルムズ海峡 の安全確保です。日本の原油輸入の大半はこの海峡を通過しています。仮にイランが報復措置として航行妨害や商船攻撃を行った場合、日本のエネルギー安全保障は直撃を受けます。
さらに、日本の商船が攻撃された場合、それは単なる経済問題にとどまらず、安全保障上の重大事態に発展する可能性があります。
存立危機事態は認定されるのか
2015年の平和安全法制により、日本は限定的ながら集団的自衛権の行使を可能にしました。
あの頃は公明党がこの法案に賛成し、民主党が反対していましたが、いまや立憲民主党と公明党は同一の政党・中道改革連合となっていますが、これについては本当にめちゃくちゃな話です。

もしホルムズ海峡が封鎖され、日本のエネルギー供給が長期間断たれれば、「存立危機事態」に該当する可能性は十分にあります。その場合、自衛隊は武力行使に踏み出すことになります。
ここで問題になるのが、「戦うことを認めた制度が、自衛官を本当に守れるのか」という点です。
国会審議での重要答弁
2015年の国会審議において、当時の法務大臣であった 上川陽子 氏は、
個々具体的な状況によっては刑法上の殺人罪が成立し得る
という趣旨の答弁を行いました。

これは、「直ちに殺人罪になる」という意味ではありません。刑法35条の正当行為や自衛隊法に基づく適法な武器使用であれば、違法性は阻却されます。
しかし同時に、
要件を逸脱すれば一般刑法の適用対象になり得る
という構造が維持されていることも事実です。
日本には軍法がない
諸外国と比較すると、日本の制度の特異性が浮かび上がります。
例えば、

アメリカ合衆国 には統一軍事司法法典(UCMJ)

イギリス にも軍事司法制度

フランス にも軍事裁判制度
があります。
しかし日本には軍刑法も軍法会議もありません。憲法76条により特別裁判所が禁じられているため、理論上は戦闘行為も一般刑事裁判所で審理される構造です。
この点が、自衛官の法的安定性に対する不安を生んでいます。
米国・イスラエル対イランという現実
現在のように、米国とイスラエルがイランと軍事衝突する局面では、米軍が中東地域で作戦行動を行う可能性が高まります。日本は 日米安全保障条約 に基づき米国と同盟関係にありますが、ホルムズ海峡は日本の施政下ではありません。
それでも、日本の商船が攻撃されれば、政治判断として自衛隊派遣が検討される可能性は十分にあります。
もしそのとき、自衛官が防衛のために武力を行使した場合、その法的評価はどうなるのでしょうか。
国家の命令に従い、国会承認のもと、国際法に則って行動したとしても、「場合によっては殺人罪が成立し得る」という答弁が残っている現実は、決して軽いものではありません。
国家の責任として何が必要か
安保法制は、日本が「戦えない国」から「限定的に戦える国」へと転換した制度です。
しかし、
戦うことを認めたなら、戦う人を制度として守る責任がある
という原則も同時に成立します。
考えられる制度整備としては、
交戦行為に関する免責規定の明文化
国家による全面的訴訟支援制度
有事における特別手続の整備
などがあります。
これは好戦的かどうかの問題ではありません。制度の整合性の問題です。
結び
米国・イスラエル対イランという現実の緊張は、日本に対しても安全保障の覚悟を問いかけています。
✔ 存立危機事態は理論上あり得ます。
✔ 自衛官は直ちに殺人罪になるわけではありません。
✔ しかし制度の曖昧さは残っています。
国家が武器を持てと命じるのであれば、その法的帰結から隊員を守る制度を明確に整えることこそ、真の安全保障ではないでしょうか。
いま必要なのは、制度の完成度を高める冷静な議論だと考えます。
