焦点:スペインの移民50万人合法化策、開始前に現場はパンク状態

写真は1月、合法化の申請に必要とされる、犯罪歴がないことを証明する書類を求めてバルセロナのパキスタン領事館に行列する人々。REUTERS/Albert Gea

[マドリード 26日 ロイター] – 少なくとも50万人の不法滞在移民を対象に在留資格を与えるスペインの新たな取り組みが、手続き開始の数週間前にしてすでに移民当局の窓口に大きな負担をかけ、申請希望者の間に不安が広がっている。同国の比較的寛容な移民政策は近年の経済成長をけん引してきたが、情報不足と財源不足がこの大規模な合法化措置をとん挫させる恐れがあると関係者は指摘する。

政府は4月上旬から6月にかけて手続きを実施するとしているが、申請手続きや必要書類に関する詳細はほとんど明らかにしていない。移民当局は1月にウェブサイトで、予想される申請急増に対応するための追加予算や人員配置は予定されていないと表明した。

こうした状況に、申請を考えている移民と、未処理案件で既に手一杯の移民局の現場職員の双方が不安を募らせている。

スペイン移民当局職員組合のセサル・ペレス代表は「事務所は完全にパンク状態だ。人員増や技術的支援、追加予算がなければ処理は不可能だ」と訴える。

ペレス氏によると、同僚の大半が2025年6月提出の在留資格申請書の処理に今も追われているという。

スペイン政府は先月、この取り組みに関する予備文書を公表した。ロイターが入手した2月18日付の未公表の法令草案全文には、合法化窓口向けに「特定的で優先的かつ差別化された手続き」が整備されると記されていたが、詳細は明記されていなかった。

スペインの包摂・社会保障・移民省はロイターの詳細な質問への回答を断った。移民担当省の広報担当者は、最終的な法令はまだ策定中だと述べた。

<混乱は必至>

欧州各国が国境管理を強化する中、スペインの社会労働党政権は移民政策を推進し続けてきた。経済学者らは、この政策が過去4年間の同国の急速な経済成長を後押ししたと指摘している。

保守派政権を含む過去の政権は、この数十年に複数回の大規模な合法化措置を実施してきた。最大規模の措置は05年に行われ、正式な労働契約を提示できた57万人に合法的な地位が与えられた。

合法化を推進する動機は明確だ。政府試算によれば、スペインは福祉国家を維持するために、今後10年間でさらに約240万人の社会保障加入者を必要としている。

しかし政党間の対立により、現政権は下院で過半数議席を失った。この政治的な膠着(こうちゃく)状態により、23年以降予算案を成立させられない状態が続き、政府の新たな移民政策の実行力も制約されている。

今回の合法化策に対する予算の拠出が認められない場合、過去の大規模合法化政策からは大きく軌道が外れることになる。研究者クラウディア・フィノテッリ氏の調査によれば、05年の実施時には、殺到する業務をさばけるよう、1700人の職員が新たに雇われ、742カ所もの案内所が新設されていた。

今年予想される人員不足を補うため、政府は申請処理支援に非政府組織(NGO)や労働組合の動員を検討していると、事情に詳しい4人の関係者が明かした。

前出のペレス氏によれば、別の選択肢として、移民当局の開庁時間延長も検討されている。

しかしいずれも正式に決定されておらず、当局者は手続きが予定通り開始されるか疑問視している。

「政府は楽観的だが、関係者全体の調整は容易ではない。開始時には混乱が予想される」と、移民当局内の議論に詳しい関係者は述べた。

<翻弄される移民>

移民たちも対応に追われている。

警察と公務員組合によると、移民当局の事務所では、職員がまだ詳細を提供できないにもかかわらず、情報を求める移民が列を作っている。

スペイン政府は、犯罪歴がなく、スペインに5カ月以上継続して居住しているか、25年末までに亡命申請を済ませている移民が対象となると発表した。しかし、どのような書類が証明として認められるかは明示していない。

「どんな条件を満たせばいいのか、まだはっきりしない。私が用意できないものを求められるのではと心配だ」と語るのは、ペルー出身で2人の子を持つイリス・ロチャさん(37)。バルセロナで移民支援NGOの講演会に出席後、ロイターにこう話した。情報に飢えた移民にとって、こうしたNGOが頼みの綱となることが多い。

命の危険を感じるほどの暴力を受けたため23年に娘たちと共にペルーから逃れたというロチャさんは、昨年、亡命申請が却下されたため一時就労許可を失った。

再就職には合法的な書類が必要だと彼女は語る。

「そうすれば人生を取り戻せる。それまでは頑張るしかない」とロチャさんは話した。

エルマ・サイス包摂・社会保障・移民相は1月、申請者は書類提出から15日以内に申請受理の通知を受け取り、その時点から合法的に就労できると記者団に説明した。

専門家は懐疑的で、移民制度の慢性的な遅延を指摘している。スペインのシンクタンク「フンカス」によれば、移民は合法的な地位を得るために平均2─3年を費やしており、その過程でおよそ84万人の不法滞在移民が非正規で働いているという。

移民コンサルティングを専門とするガブリエラ・ドミンゴ弁護士は「移民が不法就労状態になるのは、登録したくないからではなく、できないからだ」と指摘する。

複数の弁護士によれば、不安を抱える移民の一部は既に、4月の入国当局の予約を確保するため仲介業者に金銭を支払っているという。

この行為は違法であり、政府は25年11月に予約枠不足が原因だと認めた。

移民支援団体アクルコのピラル・ロドリゲス弁護士は「申請手続き開始日はまだ噂に過ぎないにもかかわらず、予約が売買されている。この手続きが移民に植え付けた恐怖が表れている」と指摘した。

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Corina Pons

Corina is a Madrid-based business reporter focusing on coverage of retail, infrastructure and tourism including some of Spain’s biggest companies like Inditex and Ferrovial. She was previously a senior correspondent in Venezuela, where she reported the Chavez and later Maduro government’s efforts to retain power and the effects on the economy.

Victoria Waldersee

Victoria Waldersee is a Senior Politics & Economics Correspondent in Madrid, Spain. A BA Chinese & Economics graduate, she covered Germany’s auto industry from Berlin for four years, focusing on competition with China amid the transition to EVs. She began her career at Reuters as a correspondent in Portugal and was seconded to the retail beat in 2021 to cover the retail sector in South Asia, China and Europe. Before Reuters, she co-founded and ran Economy, a UK-based charity working to produce accessible economics coverage.