長野・伊那市の長野県伊那文化会館で「かみ派の美術―諏訪につどった前衛たち 1969−1974」が開催されている。会期は3月1日まで。担当は同館学芸員の木内真由美。

長野県伊那文化会館の外観
担当の木内は長野県立美術館で2022年に開催された「生誕100年 松澤宥」を同館の学芸員(当時)として手がけた。長野県下諏訪町出身の美術家・松澤宥(1922〜2006)の生涯とその思想を丁寧に追った同展は、松澤の活動の全貌に迫るものとして意義深いものだった。いっぽうで、とくに諏訪を中心に松澤の周囲で活動していた前衛的表現者については、同展を契機に本格的な研究が始められたものも多い。「かみ派の美術―諏訪につどった前衛たち 1969−1974」は、この研究に取り組んできた木内の現時点での成果が実った展覧会といえるだろう。また、本展は、木内とともに長らく調査研究に取り組んできた戦後美術研究者の細谷修平が代表を務める、一般社団法人戦後芸術資料保存が共同監修を担っている。地域の芸術表現の軌跡をより深く掘り下げて分析し、展覧会に結実させるために、外部の専門家との共同を意欲的に行っていることも、今日における先進的な取り組みと言える。

右が松澤宥《天の空へ向け両心臓を飛ばす執行》(1971、安倍道明撮影)の記録写真
展覧会タイトルにある「かみ派」とは、「もの派」を意識したもので、松澤周辺の作家たちの紙を媒体とした非物質的な表現や記録によるその活動を総評できるため、一部の作家や批評家によって用いられていた呼称だ。今回採用した木内も「当時の作家たちが自らを称する言葉として用いていたわけではない」ということを強調した。
本展の展示構成は、展示室の外枠を当時集団で行われていた集団のパフォーマンス資料、内枠をそこに参加していた各作家の紹介というかたちでまとめられていることが特徴だ。こうした発表と作家を分ける展示方法は、「かみ派」の芸術がつねに流動的であり、企画ごとに様々な作家が入り乱れていたことを端的に表しているといえる。

展示室。外周がパフォーマンスの紹介、中央が各作家の紹介となっている
