静岡に関するアートやカルチャーに関するコラム。今回は2月28日に開幕する静岡市文化・クリエイティブ産業振興センター(CCC)主催の「CCC Frontier Festival 2026」を題材に。
(文・写真/論説委員・橋爪充、アーティスト写真/「CCC Frontier Festival 2026」制作委員会提供)

「CCC Frontier Festival 」コンセプトディレクターの甲賀雅章さん

CCCは毎年3月に身体表現を中心にしたフェスティバルや祭典を開いている。2016~2019年と2021年は「七間町ハプニング」、2022~2024年は「OUR FESTIVAL SHIZUOKA」を開催。2025年からは新しい体制で「CCC Frontier Festival 」を初開催した。第2回の開幕を前に、コンセプトディレクターの甲賀雅章さんにフェスの方針やお薦めの演目を聞いた。
今はどこであっても「中心」になりうる
-昨年開催の第1回の手応えはいかがでしたか。

甲賀:想定以上に良い感触を得ました。参加アーティストが「大道芸ワールドカップ」とも違うし「ストレンジシード静岡」とも違う。「Frontier Festival」が目指すジャンル、エリアが確かにあるということを実感しました。何より、アーティストがものすごく喜んで帰ったんですよ。彼らが集まって交流できたことが非常に大きい。観客側も、多分初めて見るようなものに触れられたと思います。ボランティアスタッフが、めちゃくちゃ楽しんでやってくれたのも良かった。

-改めて「Frontier Festival」の「辺境(フロンティア)」というキーワードも含め、コンセプトを教えてください。

甲賀:ベースは「世界は中心を失っている」ですね。今はどこであっても「中心」になりうる世の中になってきている。AIや通信速度の進化で「中心」がどんどん移り得ることを感じているんです。

-表現の世界でも同じですね。

甲賀:スタンダードだと言われるものが全てではなくなって、その周辺にあるものこそ、次の可能性、面白さになる。そこにいるアーティストたちを紹介する機会がこれまでなかった、と僕は感じていたんですよね。

-王道を行かなくてもいい、と。

甲賀:「こんな面白い表現があるんだ」「こんな伝え方があるんだ」ということを観客が知るのも重要だと思います。今、みんな悩みを抱えているじゃないですか。「自分は普通であるべきなのか」「一般的じゃなきゃいけないのか」みたいに。そんな人がアーティストに触れることで「みんな違っているから、面白いんだ」と思ってくれたらいい。

-アーティストにはどんなことを期待しますか。

甲賀:異端にいる人たちが集まることで、「俺たちがやっている方向性は間違っていないな」と感じて、それがさらにパワーアップしていけばいい。多様性を認知するだけじゃなくて、もう一歩進んで「インクルーシブ(包摂的)」、みんなと一緒にやっていくきっかけになればいいなと思っています。今年も、解放区のアーティストは、実にフロンティアなアーティストばかりです。台湾からも参加しますし、あまり見る機会のないパフォーマンスに出合えますよ。

リトアニア、韓国のアーティストが来日

リトアニアのアグネ ・ムラリテさんの仮面を使った演目

-今年は「Guest Performance」枠で海外の2組がやってきます。リトアニアのアグネ ・ムラリテさんはどんな演目なんですか。

甲賀:初来日のアグネさんは仮面と人形を使う2作品を1日3回やってくれます。一つは「UMAMA」、仮面と、仮面と同じメイクをした自分を同時に動かす。ストーリーは他人のことは大切にしながらも自分のことは大切にしない女性の物語。もう一つの作品は、Je m’ ?vanouis ( 私は消える)。「人間の存在の脆さ」とでもいうのかな。ある男の人生と、彼が巻き込まれた状況を描いた物語です。繊細だけど、コミカルな要素もあります。

-もう1組、韓国のユン・プビットさんはどんなアーティストですか。

甲賀:プビットさんは、去年の「Frontier Festival」にオープンコールで来ています。その時はストリート系のマイム作品でした。韓国では有名なマイミスト(パントマイマー)であると同時に、指導者としても相当なキャリアがあるんですね。

韓国から参加するユン・プビットさん

-作品はどんな形になりそうですか。

甲賀:こちらも2作品を上演してくれます。第1回でドイツ在住のダンサー山口隼人さんを中心に、日本のダンサーたちとオンラインで作品を作る「辺境deマイムクリエーション」という試みをやったんですが、その次を狙おうと思って。韓国にいるピビットさんと、日本にいる9人が今、オンラインでやりとりしながら作品を創っています。もう一つは、ロボットダンスで有名な韓国のアーティストと静岡のために創作しているデュオ作品「Bench Traveler」です。

-ゲスト枠以外の演目では、「とあるベンチで」という共通テーマで静岡県内のアーティストが作品を発表しますね。

甲賀:去年の山口隼人さんのプロジェクトに参加していた秋山実優さん、川根本町のインド舞踊のカンパニー「RasaMasala(ラサ・マサラ)」、浜松をベースに音楽劇を作っている「アチック倶楽部」、高校生の演劇集団「地域クラブ☆劇団葛」には。SPACの宮城嶋遥加さんが絡んでいます。

2年連続参加の秋山実優さん

川根本町を拠点に活動する「RasaMasala」

主催者が自らプログラムを提示
-最終日に主催者企画制作プログラムと銘打って行う「Frontier Rondo-辺境の輪舞曲-」は初の試みですね。

甲賀:今年の目玉です。自分たちのコンセプトを表現してくれるアーティストが集まるのはすごく素敵ですが、主催者が自ら「フロンティア」を一つのプログラムとして提示できないかと考えたんですよ。

-主催者の世界観を主催者が自ら表現するわけですね。

甲賀:それをやってみたい。原作は僕が書いています。ベンチがあって、タコの頭を持った妖精がずっと座っていて。そこに喜怒哀楽の4つの妖精が訪れて。最後は祝祭的な群舞。作曲家の伴正人さんが音楽を作って、韓国のマイミストのイ・ジュンフンさんがタコの妖精を演じてくれます。音楽隊は5人編成で静岡大の吹奏楽部から2人。声楽家の西真理弥さんが最後に歌います。

-観客参加型でしょうか。

甲賀: 最後にみんな、輪の中に入っちゃってほしいんですよ。ARTIEのカフェからワーッとやりながら、だんだん曲が変わって路上へ出る。楽隊がいるけれど、最後はもう完全に即興になってきます。

「Frontier Rondo-辺境の輪舞曲-」に加わる西真理弥さん

-ブレーメンの音楽隊のようですね。

甲賀:最後はもうダンス曲みたいになります。観客の皆さんもついてきて、一緒に踊ってもらいたい。

-今年の開催について、コンセプトディレクターとして意気込みを聞かせてください。

甲賀:このフェスティバルは、まだまだ「入り口」だと思うんですよ。でも「フロンティア」「辺境」というのは、いろんなところに散らばっている。それを探って、静岡に集めて、「辺境のメッカ」みたいになったら面白いなと思っています。辺境的なアーティストが「静岡ってちょっと辺境だよね。だけどめちゃくちゃ刺激的だよね」と口にするようになってくれたらいいですね。

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■ Frontier Festival2026
会場:静岡市葵区呉服町・七間町エリア、ARTIE、CCC、あそviva!劇場ほか
開催期間:2 月28日(土)~3月22日(日)。「haka」「すごせる酒屋MUGI」「リアルフードマーケットあくつ」(ともに静岡市葵区)など市内18店舗にアーティスト18人の作品を設置。3月20~22日にパフォーミングアーツ公演を集中上演。
詳細はCCCの公式サイト(https://www.c-c-c.or.jp/schedule/ccc-frontier-festival-2026-2)参照。