南米アルゼンチン最南端の都市ウシュアイア。人口は約8万人で「世界の果て」とも呼ばれる。南極を目指す観光客の“憧れ”でもある小さな港町が、いま大国間競争の「最前線」として注目を集めている。
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今年1月、アメリカ議会の与党議員らが突然、この町を視察に訪れた。ウシュアイアには「海軍基地」の建設計画があり、地元の市民からは「米軍の拠点化に向けた地ならしではないか」という疑念の声が挙がっている。
中南米への影響力を強化し、グリーンランドの領有を主張するなど、“西半球戦略”を加速させるトランプ政権。なぜいま「南極の玄関口」に目を向けるのか。専門家インタビューから、その戦略的重要性を読み解く。
■世界が注目する南極の資源と重要航路
ウシュアイアは南米大陸の南端に位置し、南極に最も近い主要港の一つとされる。南極観測船や補給船の出発拠点であり、資源開発や研究活動の拠点として各国が注目してきた。
アメリカの安全保障と海洋政策に詳しいアメリカン大学のギャレット・マーティン教授は、その地理的重要性が高まっていると指摘する。
「南極の氷床の下に膨大な資源が存在する可能性がある。気候変動や砕氷技術の向上もあり、将来を考えればウシュアイアは非常に重要な場所と言える。アルゼンチン政府は、南極開発にむけたインフラ整備の面で隣国・チリに後れをとっていると考えていて、なんとかして拠点の整備を急ぎたいと考えている」
さらに、ウシュアイアは海上交通の要所・マゼラン海峡にも近い。パナマ運河を通航できない大型船が利用する代替ルートとして知られ、近年その価値が再評価されている。世界各地の紛争によって主要航路の安定性が揺らぐなか、南米南端ルートの戦略的重要性は増しているという。
■アメリカとアルゼンチンの蜜月
こうした地理的条件に、アルゼンチンの政治的転換も重なった。
2023年に就任したハビエル・ミレイ大統領は、外交方針を大きく転換した。前政権が進めていた中国やBRICSとの関係強化から距離を置き、アメリカとの連携を外交の中心に据えたのである。
