汚れた水を砂の層に浸透させると、不純物が砂粒の表面にくっついたり、砂粒同士の隙間でこされたりして、きれいな水が得られる。古代文明の頃から変わらない「命の水」を作り出す砂を使った浄水技術だ。
Forbes JAPANのスモール・ジャイアンツアワード2025‐2026で「アースレボリューション賞」を受賞した日本原料は、国内浄水場の8割以上にろ過用の砂(ろ過砂)を納めているパイオニア。現在、同社のビジネスを牽引しているのは、水処理に必要な装置をコンパクトに収めた移設が可能な浄水装置「モバイルシフォンタンク」だという。災害や紛争地域でも活躍するその実力とは──。
2022年、日本原料のもとに政府からある要請があった。ロシアの攻撃によって破壊された水道設備を復旧させるために、ウクライナにモバイルシフォンタンクを送ってほしいという。「当時はまだ激しい戦闘が続いていて、我々がウクライナの国自体に入れないような状況でした。そこで、ウクライナから技術者に来てもらい、1週間のトレーニングで浄水装置を使えるようになってもらったのです」と、社長の齋藤安弘は振り返る。
日本原料の社員(左)からレクチャーを受けるウクライナの技術者たち
齋藤は23年11月、ウクライナから4人の技術者を迎え入れた。浄水装置の操作方法をレクチャーし、首都キーウと南部の港湾都市オデーサに計4基を提供した。日本原料の浄水装置は、コーポレートカラーのブルーで統一されているが、この4基はウクライナの国旗をイメージしてブルーとイエローの2色で彩られた。
「これには、現地の人々も大喜びでした。ただ、その後に装置がドローン攻撃で狙われたこともあり、『次は目立たないように迷彩色でお願いしたい』と連絡がありました」
26年1月には、同社の幹部がウクライナを訪れて、インフラを所管する当局と追加の装置提供について議論したという。
4万5000人分の水「いつでも」
モバイルシフォンタンクは、河川でも湖でも、あるいは沼のような濁った水でも、淡水であればどんな水でもろ過できる。だが、最初から災害や紛争地域などでの利用を想定していたわけではなかった。きっかけはモバイルシフォンタンクが完成した05年に、宮崎県で起きた台風による豪雨災害だ。宮崎市内の浄水場が水没してしまったため、日本原料は急きょモバイルシフォンタンクを貸し出して復旧にあたった。