

人口14億人を抱え、アメリカや中国に次ぐ経済大国へひた走るインド。都市化にともなう深刻な住宅不足を背景に、日本の大手不動産各社が「インド進出」を本格化させています。三井不動産はIT拠点ベンガルールでメトロ直結の分譲住宅事業に初参画し、阪急阪神不動産や東急不動産も現地の金融スキームを活用した投資を加速。日本の街づくりのノウハウは、インドの居住環境をどう変えるのか。各社の最新プロジェクトと、鉄道アクセスを軸とした開発の全貌を解説します。
日系不動産大手がインドへ熱視線、三者三様の参入戦略
近年、インドの住宅市場が熱を帯びています。2025年から2026年にかけて、三井不動産、阪急阪神不動産、東急不動産の3社が、インドの住宅開発プロジェクトへの参画を相次いで発表しました。
インドは現在、約14億人の人口を背景に世界トップクラスの経済成長を続けています。都市部では中間層の拡大により良質な住宅への需要が急増していますが、供給が追いつかない状況が続いています。インド政府が掲げる「全国民への住宅供給(Housing for All)」という政策目標に対し、日本の不動産会社が「駅を中心とした街づくり」や「安定した資金供給」という形で応える構図となっています。
【参考】
【インド新幹線】全508kmの軌道設計を日本企業が完遂へ!難工事が必要な工区の契約締結でプロジェクトは新局面、2027年試験走行へ(※2026年1月掲載) https://tetsudo-ch.com/13018320.html
【三井不動産】ベンガルール・メトロ駅前で初の分譲事業

「マヒンドラ ブロッサム」内観・庭園・プール・ジムイメージ(画像:三井不動産)
三井不動産は、インド初となる分譲住宅事業「マヒンドラ ブロッサム」への参画を決めました。同社は2020年からベンガルールで大規模オフィス開発を進めており、住宅分野への展開は同都市での事業基盤拡充の一環と位置づけられます。
物件はベンガルール市東部、ホワイトフィールドエリアに位置。IT企業が集積する都市で、住宅開発が進む都市圏人口は年間約3%と高い伸びを示しています。交通はナンマ・メトロのパープルライン「ホープファーム チャンナサンドラ」駅近くという鉄道利便性が極めて高いエリアで開発され、2030年完成予定です。
約9,000平方メートルの共用施設と約1万6,000平方メートルの緑地空間を備え、25メートルプール、ジョギングトラック、バドミントンコート、フィットネスジム、ペットパークなどを整備予定。敷地内に商業施設も併設し、生活利便性を高めます。屋上太陽光発電や自然換気を考慮した設計を取り入れ、環境配慮型の開発を進める方針です。
【阪急阪神不動産】最大手銀行系ファンドで広域展開を加速

ファンド融資プロジェクトの一例・イメージ(画像:阪急阪神不動産)
阪急阪神不動産は、インド民間最大手「HDFC BANK」グループのファンドに出資。ムンバイ、ベンガルール、デリー、プネなど主要都市の住宅プロジェクト向け担保付社債を投資対象としています。
このファンドは、インド主要都市における住宅分譲事業への融資を目的としており、現地デベロッパーが手がける開発事業に資金を供給。これにより、ミドルクラスまでの所得層に向けた住宅供給の拡大につなげる考えです。
【東急不動産】ムンバイの鉄道至近エリアを狙う戦略

ムンバイ市北東部の住宅開発プロジェクト(Maverick 2)イメージ(画像:東急不動産)
東急不動産は現地子会社と連携し、中間層向け住宅開発への投資を進めています。ムンバイの分譲住宅事業を対象に「インド住宅開発プロジェクト向け社債ファンド」を組成し、複数案件に分散投資するとともに信用補完を付すことで、リスクとリターンのバランスを図る方針です。
同社は第1号案件として2025年9月、ムンバイ市北東部ムルンド・ウエスト地区の住宅開発プロジェクト向け社債を引き受けました。同地区は鉄道や主要道路のアクセスが良く、商業施設や教育・医療機関が整備された住宅需要の高いエリアです。
日本の「駅街一体開発」はインドに根付くか
インドの都市部では慢性的な交通渋滞が課題となっており、近年急速に整備が進む「メトロ(都市鉄道)」沿線の価値が急騰しています。日本のデベロッパーが、日本国内で培った「駅を中心とした利便性の高い街づくり」をインドに持ち込むことは、現地の中間層にとって「渋滞からの解放」と「安全な居住空間」を同時に手に入れる選択肢となります。これは単なる住宅供給に留まらず、インドのライフスタイルそのものを変える可能性を秘めています。
急成長するインドの都市風景の中に、日本の鉄道系・不動産系デベロッパーが描く「駅近・高品質」な暮らしが溶け込もうとしています。これらのプロジェクトが完成を迎える頃、インドの通勤文化や不動産価値の基準がどう塗り替えられていくのか。世界が注目する巨大市場の変貌から、目が離せません。
(TOP画像:三井不動産)
鉄道チャンネル編集部
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