青葉 やまと

フリーライター・翻訳者

中国でIKEAの7店舗が閉店セールに入り、客同士が家具を奪い合う騒動に発展した。閉店するほど家具が売れない理由の一つとされるのが、中国に広がる深刻な不動産危機だ。海外メディアは、不動産価格が暴落する中、退職金を全額つぎ込んで購入してしまった男性などの事例を報道。絶望の声が中国全土で聞かれるという――。


未完成の超高層ビルと五星紅旗

写真=iStock.com/HUNG CHIN LIU

※写真はイメージです



腕力で奪い合うセール会場

1月15日、午前10時。中国のIKEA店舗は混乱を極めていた。


店舗が開くと同時に、広い通路幅をぎっしりと埋め尽くす人の波が店内へ殺到。ダッシュで商品へと群がり、アウトレットコーナーでは小競り合いが繰り広げられた。


シンガポールメディアのチャンネル・ニュース・アジアが取りあげた動画では、ある中年男性が右手にコンパクトチェア、左手に革張りの回転椅子を持ったまま、さらに商品棚の方へ身をねじ込むようにして移動式のシェルフを確保。


別の女性客は腕を交差させながら、右手でキャスター付きラック、左手で昇降式テーブルをつかみ取る。欲しい品を見定める余裕などなく、多くの人はただ一番近くにある商品から手に取っている様子だ。キャスターの付いたあらゆる商品がコンクリートの床の上を振り回され、ガツガツとぶつかり合う音が売り場にこだまする。


人々が鬼気迫る表情で商品を抱え込む中、遅れてやってきたフード姿の男性が奪い合いに参戦。先の中年男性から、移動式シェルフを堂々と奪い取る。中年男性の連れの女性も加勢して商品を力任せに引き合い、互いに怒号を飛ばす事態に。シェルフは結局、後から来たフードの男性が奪い去った。


開店3時間前から行列

ハルビンの店内では、カートがひしめき合って身動きが取れない状態になっている。人気商品を巡って客同士が言い争う場面もあった。「イケアがこんなに混んでいるのは人生で初めて」という声がSNSで拡散した。


2026年2月1日、中国東北部黒竜江省ハルビン市のイケア店舗で買い物をする人々

写真=Imaginechina/時事通信フォト

2026年2月1日、中国東北部黒竜江省ハルビン市のイケア店舗で買い物をする人々



列は朝7時頃、開店3時間前から伸び始めたという。IKEA中国の担当者は九派新聞の取材に対し、「人混みがすごい。入店まで3〜4時間待つお客様もいるかもしれない」と語った。


人々の目当ては、この日始まった閉店セールだ。IKEA中国は、上海や広州、ハルビンなどの計7店舗を2月2日に閉店すると発表していた。


なぜIKEAは、中国で大量閉店に至ったのか。ブルームバーグは、IKEAが不動産危機のあおりを正面から受けたと分析する。


新たな住宅が売れないということは、新居移転に伴う大型家具の購入がないことを意味する。安価な小物しか売れない状況では、比較的高価格帯のベッドや特注のキッチンキャビネットの需要は薄い。IKEA中国にとって、大型のショールーム兼倉庫型店舗を維持する必然性は薄くなった。