2026年02月16日 19時00分
メモ


欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会(EC)は2026年2月9日に、「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」に基づく措置として、売れ残った衣類やアクセサリーなどのアパレル商品を廃棄することを禁止する規則の具体的な委任法・実施法を発表しました。廃棄によるCO2の排出を軽減することや、持続可能なビジネスモデルを採用する企業に公平な競争を提供することを目的としています。

New EU rules to stop destruction of unsold clothes and shoes – Environment
https://environment.ec.europa.eu/news/new-eu-rules-stop-destruction-unsold-clothes-and-shoes-2026-02-09_en


ECによると、ヨーロッパでは毎年売れ残った繊維製品の4~9%がそのまま着用されることなく廃棄されているそうです。この廃棄物はスウェーデンの2021年の総排出量にほぼ匹敵する約560万トンのCO2を排出しているとのこと。一部のラグジュアリーブランドがブランド価値を守るためにリセールを避けて売れなかった衣料品を焼却処分していたことも、廃棄が増える問題の一因と考えられています。

また、2024年3月に公開されたEUの政策立案ブリーフィングでは、オンラインショッピングによる衣類の購入と返品も議題に挙がりました。2020年の繊維・衣料品のオンライン販売割合は11%で2009年の2倍以上となるなど、オンラインの衣料市場が成長を見せています。EUでは「オンラインで商品やサービスを購入した消費者は、正当な理由なく14日以内に注文をキャンセル・返品する権利を有する」と定めており、オンラインで販売された衣料品の5着に1着が返品されているという記録もあります。この返品率はこの返品率は実店舗で販売された商品の約3倍です。オンラインで返品された衣料品の22~43%が最終的に廃棄されていると推定されることから、オンラインショッピングが衣料品の廃棄につながると問題視されていました。


無駄な廃棄による環境被害を削減するため、EUは「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(Ecodesign for Sustainable Products Regulation(ESPR)」という規則を2024年7月18日に発効しています。ESPRは循環性、エネルギー性能、リサイクル性、耐久性を向上させることで、ヨーロッパの市場に投入される製品の持続可能性を大幅に向上させることを目指しています。

ESPRの一環として、EUは企業に対し廃棄物として廃棄する売れ残った消費者製品に関する情報の開示を義務付けています。また、売れ残った衣料品、衣料品アクセサリー、履物の廃棄を禁止しています。

ECが2026年2月9日に採択した委任法および実施法は、未販売の衣料品や靴、アクセサリーを理由なく破壊することの禁止を明確に定めました。また、企業に未販売品の扱い状況を開示することも義務付けています。そのほか、例外規定として「安全上の理由や製品の損傷など、廃棄が認められる具体的かつ正当な状況」を規定したり、標準フォーマットを導入することで情報開示を促進したりすることで、企業が規則を順守できるように明確化しています。

ECの環境・水レジリエンス・競争力のある循環型経済担当委員であるジェシカ・ロスウォール氏は「繊維産業は持続可能性への移行を先導していますが、依然として課題は残っています。廃棄物の数値は、対策の必要性を示しています。これらの新たな措置により、繊維産業は持続可能かつ循環型の生産活動へと移行する力を得ることができ、競争力を高め、依存度を低減することができます」と述べています。


この規制を支える技術として「デジタル製品パスポート(DPP)」の導入も2030年までの全面導入を目指して進められています。DPPは衣類に付けられたQRコードなどを通じて、素材の構成や修理のしやすさ、製品の識別情報、コンプライアンス、持続可能性、廃棄時の扱いを可視化するもので、製品の循環性を促進し、法令遵守を強化するための関連情報を保存することを目的としています。

売れ残った衣料品、衣料品アクセサリー、履物の破棄の禁止および特例措置は、2026年7月19日から大規模企業に適用されます。中規模企業には2030年に適用される予定となっています。ESPRに基づく開示規則は既に大企業に適用されており、2030年には中規模企業にも適用される予定です。また、小規模企業は対象から外されています。

ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでは、衣料品の廃棄を禁止する法律により、「ヨーロッパで売れ残った衣類を廃棄する代わりに、メーカーは主に法の支配がほとんど尊重されていないアフリカやアジアの国の『再販業者』に販売することになるでしょう。これらの業者は『消費者に販売された』と報告した上で、それらの衣類を廃棄することになります。そのため、ヨーロッパでそれらの衣類を破棄する代わりに、ただヨーロッパで廃棄する場合に不必要な輸送ステップを追加し、大量の不必要なCO2を排出することになります」と予測するコメントも挙がっています。

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