新潟県立近代美術館(新潟県長岡市)で、「描く人、安彦良和」が3月7日から開催されます。

『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイナー兼アニメーションディレクターをつとめ、また、『アリオン』『巨神ゴーグ』等のアニメ監督としても知られ、さらには『ナムジ』『虹色のトロツキー』『乾と巽ーザバイカル戦記ー』といった日本の古代史や近代史をテーマとした歴史漫画も数多く手がけてきた安彦良和やすひこよしかず(1947-)の魅力を存分に味わえる回顧展です。

初公開を含むアニメ制作時の貴重な資料、端正美麗なカラーイラスト、漫画原稿など800点を超える作品資料をとおして、約50年にわたる創作活動の軌跡をたどることができます。

描く人、安彦良和

会場:新潟県立近代美術館 企画展示室(新潟県長岡市千秋3丁目278-14)

会期:2026年3月7日(土)~5月24日(日)

開館時間:9:00~17:00(観覧券の販売は16:30まで)

休館日:毎週月曜日(5/4は開館し、5/7は休館)

観覧料:一般 1,700円、大学・高校生 1,000円、中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方は観覧料が免除。受付にて手帳を要提示

アクセス:
JR長岡駅大手口からバスで約15分(「近代美術館」下車)
関越自動車道長岡ICから車で約10分

詳細は、新潟県立近代美術館公式サイトまで。

展覧会の見どころ
デビュー前の貴重な資料を展示

授業の要点をまとめた中学時代のノート、高校~大学生の頃に描いた漫画作品などを公開。卓越した安彦の画力が早くから培われ、早熟な才能を見せていたことがうかがえます。

制作過程のわかる初公開資料

映画ポスターのラフ原画や、キャラクター設定の際のラフスケッチ、アニメ制作における絵コンテなど、名作が生み出される過程がわかる資料を多数紹介。今回の展覧会の準備中に見つかった貴重な初公開資料もあります。

圧倒的な画力を味わえる多彩なイラスト

ポスターの原画や雑誌表紙を飾ったイラストなど、総数800点を超える作品を展示します。卓越した画力に基づく漫画原稿の流れるような線や美麗な色彩は、見る者の目を惹きつけます。

展示構成
1章 北海道に生まれて

北海道遠軽町のハッカ農家に生まれ、幼い頃から絵を描くのが大好きな少年でした。授業の要点をまとめた中学時代のイラスト入りのノートや大学時代に描いた漫画『遙かなるタホ河の流れ』などにより、「描く人」の原点を探ります。

『遙かなるタホ河の流れ』 上巻より
2章 動きを描く

学生運動に身を投じたことにより、大学を退学になった安彦。上京して「虫プロダクション」の養成所へ入り、アニメーターとして歩み始めることになります。その後、『宇宙戦艦ヤマト』で注目を集めた安彦は、様々な作品の中で、生き生きとしたキャラクターを描きました。初期のアニメーション作品『わんぱく大昔クムクム』、『宇宙戦艦ヤマト』、『無敵超人ザンボット3』などが紹介されます。

『無敵超人ザンボット3』 設定資料 ザンボット3 武装 ザンボット・ブロー決定稿 ©創通・サンライズ
『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』 ポスター原案 ©東北新社/著作総監修 西崎彰司
3章 カリスマ・アニメーターの誕生

花形アニメーターとして活躍する安彦は、『機動戦士ガンダム』ではキャラクターデザインとアニメーションディレクターを務めました。社会現象を巻き起こすほどの人気作品となった『機動戦士ガンダム』の制作において、安彦が果たした役割を貴重な資料やイラスト原画により紹介されます。

『機動戦士ガンダム』(劇場版) 宣伝ポスター用イラスト原画1981年 ©創通・サンライズ
『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編』(シャアとアムロの決闘) 原画 ©創通・サンライズ
4章 アニメーターとして、漫画家として

1980年代のアニメーションブームの中で安彦は、アニメーションの監督や小説の挿絵、漫画執筆など、旺盛な制作意欲を見せました。安彦が監督を務めたアニメや小説挿絵、小説、さらには実現しなかった企画まで、安彦の挑戦を振り返ります。

『ネオ・ヒロイック・ファンタジア アリオン』 宣伝ポスター用イラスト原画 ©安彦良和・THMS
『クラッシャージョウ』『ジ・アニメ』 1983年2月号表紙イラスト原画 ©高千穂&スタジオぬえ・サンライズ
『巨神ゴーグ』『アニメージュ』 1983年8月号付録 ポスター原画 ©サンライズ
5章 歴史を描く

1989年以降、漫画に専念するようになった安彦は、日本の古代をテーマにした『ナムジ』をはじめ、日本の古代・近代史、さらには西洋史やキリスト教をテーマにした作品を手掛けるなど、歴史漫画家として数多くの作品を生み出しました。日本近代の戦争を描いた『虹色のトロツキー』、キリスト教を主題とした『ジャンヌ』『イエス』などの歴史漫画が紹介されます。

『ナムジ』より ©安彦良和/KADOKAWA
『虹色のトロツキー』第5集第3章より 漫画原稿 1994年 ©安彦良和/潮出版社
『王道の狗』より
『ジャンヌ』 愛蔵版カラーイラスト原画 2002年 ©安彦良和
6章 安彦良和の現在

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で再びアニメーションに携わるようになった安彦。最新のアニメーションや長編漫画などから、今もなお第一線で活躍を続ける安彦の作品にこめられた思いを読み解くことができます。

左:『機動戦士ガンダム THE ORIGIN V 激突ルウム会戦 Blu-ray Disc Collector’s Edition (初回限定生産)』/右:『機動戦士ガンダム THE ORIGIN VI 誕生 赤い彗星 Blu-ray Disc Collector’s Edition (初回限定生産)』、ともに 飾れる収納箱用イラスト原画 ©創通・サンライズ
『乾と巽ーザバイカル戦記一』 第1話より 漫画原稿 2018年 ©安彦良和/講談社
安彦良和やすひこよしかず プロフィール

1947年北海道遠軽町に開拓民の3世として生まれる。66年弘前大学入学、学生運動に参加したことから退学となり上京、79年に『機動戦士ガンダム』でキャラクターデザインとアニメーションディレクターを担当、83年に『クラッシャージョウ』で劇場版アニメの初監督を務める。テレビアニメ作品では83年放送の『巨神ゴーグ』で原作、監督を務める。79年に『アリオン』で漫画家としてデビュー。89年以降は漫画に専念し、『ナムジ』『虹色のトロツキー』 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』などを発表。2025年3月より集英社週刊ヤングジャンプにおいて、新連載『銀色の路ぎんいろのみち―半田銀山異聞はんだやまいぶん―』の短期集中連載を開始。

安彦良和近影

アニメーションと漫画の両分野で、約半世紀にわたり業界の先頭を走り続けてきた安彦良和氏。その圧倒的な画力と、歴史や神話に深く切り込む作家性は、世代を超えて多くの人々を魅了し続けています。本展は、少年時代の習作から最新作まで、800点を超える膨大な資料が一堂に会する過去最大級の回顧展となります。キャラクターたちの力強い線や、美麗な色彩の原画を間近に鑑賞すれば、ファンならずとも心揺さぶられる体験となるはずです。稀代の表現者・安彦良和氏が描く情熱の世界を、ぜひ肌で感じてみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)

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