2026年2月14日 午前7時30分

 【論説】福井県大野市が、市内9地区の組織や拠点のあり方を見直すガイドライン「市民協働によるこれからの住民自治の方針」を策定した。人口減少による担い手不足などを見据え、各種団体を再編して「地域運営組織」を設立し、拠点となる公民館を「地域交流センター(仮称)」の機能に移行するのが柱だ。市は行政サービスを低下させない前提を市民に丁寧に説明した上で、各地区の実情に合った仕組みを築いてもらうよう時間をかけて促す姿勢を欠かさないでほしい。

 「住民自治の方針」は、区長会長やまちづくり団体の代表者らで構成する検討委が市に答申案を提出し、昨年10月に策定された。人口減少と高齢化が急速に進む中で行事や会議、事務の共有化を進め、担い手の負担軽減や活動時間の確保につなげるのが狙いだ。具体的な地域づくりの方向性を3段階で示している。

 最初の段階では地区ごとに地域運営組織を設立。区長会や婦人会、地区社協などのうち類似目的で活動する団体を統合、分野ごとの部会に組み入れる。第2段階で公民館から地域交流センターに機能を移行。第3段階では各地区で策定した「地域づくり計画」に基づき活動を展開する。

 市地域文化課によると、公民館は社会教育法で社会教育施設と規定され、収益活動に制約がある。公民館を公民館設置条例から外して地域交流センターに移行すれば、例えば水道検針と高齢者宅の訪問を組み合わせた事業や移動販売事業、特産品の物販事業なども可能になるという。坂井市が公民館をコミュニティセンター(コミセン)に移行したのをはじめ、従来の公民館のあり方を見直す動きは他の市町でも広がっている。

 一方、慣れ親しんだ公民館や各種団体の仕組みが変わることに今後、戸惑いの声が上がるかもしれない。大野市の場合、各公民館には館長をはじめ2~4人の市職員が配置され、全9公民館の維持費(管理運営経費)として市から年間で計1億円前後が配分されている。市は「センター移行後も市職員の配置や維持費は変わらない」としており、各地区で順次開く説明会では、改めてその方針を丁寧に説く必要があるだろう。また、住民による地域活動と市による行政サービスの線引きを明示し、今後も行政サービスを低下させないという趣旨を、市民に十分理解してもらうべきだ。

 同市内で人口最多の地区は1万2千人余り、最少地区は三十数人と規模の差は大きく、地理的・歴史的な事情も異なる。決して市からの「押しつけ」ではない取り組みが求められる。これらを通して住民が地区のまちづくりに関心を持ち、組織や活動を見つめ直す契機になるよう期待したい。