2月5日にサザビーズ・ニューヨークで開催されたオークション「Master Paintings & Works of Art Part I」の目玉とされていた、イタリア・ルネサンス期の巨匠アントネロ・ダ・メッシーナによる両面パネル作品《エッケ・ホモ》《荒野の聖ヒエロニムス》(1430-79頃)が、競売直前に出品を取り下げられた。
本作は、片面に首に縄をかけられ茨の冠を被ったキリストの苦悩に満ちた表情を、もう一方の面に荒野の風景のなかでインク壺と書物を前に跪く聖ヒエロニムスを描いた小型のパネル作品だ。片手で持てるほどのサイズであることから、制作当初の所有者はこれを私的な信仰の対象として手に取り、触れ、口づけするなど、親密なかたちで崇敬していた可能性が高い。
15世紀半ばの制作以来、本作は複数のコレクターの手を渡ってきた。1967年にワイルドンスタイン商会が取得する以前は、スペインの個人コレクションに所蔵されており、その後は、イタリアの美術商ファブリツィオ・モレッティを通じて現在の所有者へ売却された。
一枚のパネルの表裏に2人の聖人像を描く形式は、アントネロの特徴的な作例として知られる。さらに、現存約40点とされるアントネロ作品のなかで、本作は唯一の個人蔵であったことから、今回のオークションのハイライトとして注目を集めていた。予想価格は1000万〜1500万ドル(約15億3000万円~22億9600万円)に設定されていた。
サザビーズのオールド・マスター部門国際責任者クリストファー・アポストルは本作について、「この作品の中で、アントネッロはキリストの人間らしさを見事に捉えています。それは、真に偉大な芸術家にしか成し得ないことです」と評価していた。
しかし、競売を目前に控えたタイミングで出品は取り下げられた。そして2月9日、サザビーズは、重要な文化遺産の国外流出を防ぐために国家が行使できる優先取得権(先買権)を発動し、イタリア文化省が1490万ドル(約22億8000万円)で本作を取得したと発表した。
これにより作品はイタリア国内に留まることとなり、今後は公立美術館で展示される可能性が高い。サザビーズおよびイタリア文化省は、最終的な収蔵先については明らかにしていない。(翻訳:編集部)
from ARTnews

ウフィツィ美術館で見るべき名作23選──古代ローマ・ルネサンスの至宝やマニエリスムの代表作など
ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》など、誰もが何かで一度は目にしたことがある有名絵画をはじめ、圧倒的な質と量の所蔵品を誇るウフィツィ美術館。イタリアの芸術・文化の豊かさを肌で感じられるこの美術館で見逃せない名作23点を紹介する。

1. ジョット《オグニサンティの聖母》 (1300-05年)Photo: Uffizi Gallery
ルネサンスの先駆けとも言えるこの作品は、西洋美術が新たな段階へと進むきっかけを作り、1世紀以上にわたってフィレンツェの画家たちに影響を与え続けた。【作品の詳細はこちら】

2. シモーネ・マルティーニ《受胎告知》(1333年)Photo: Uffizi Gallery
上部に華麗な彫刻が施され、金箔とテンペラで描かれたこの大作は、ルネサンスへの移行期における傑作の1つ。【作品の詳細はこちら】

3. パオロ・ウッチェッロ《サン・ロマーノの戦い:ニッコロ・マウルジ・ダ・トレンティーノは、ベルナルディーノ・デラ・カルダを倒した》(1435-40年頃)Photo: Uffizi Gallery
1432年のサン・ロマーノ(ピサ)の戦いを描いた3連作の板絵の1枚。【作品の詳細はこちら】

4. ピエロ・デッラ・フランチェスカ《ウルビーノ公夫妻の肖像》(1473-75年)Photo: Uffizi Gallery
ルネサンス期の最も有名な肖像画の1つであり、傭兵隊長として活躍したフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ公爵と、出産後に26歳で命を落としたその妻バッティスタ・スフォルツァを描いた作品。【作品の詳細はこちら】

5. ピエロ・デル・ポッライオーロ、サンドロ・ボッティチェリ《7つの美徳》(1469-72年)Photo: Uffizi Gallery
仮想の最高裁判所のようにも見える威風堂々たるこの連作絵画には、7つの美徳を擬人化した女性像が描かれている。【作品の詳細はこちら】

6. サンドロ・ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生》(1485年)Photo: Uffizi Gallery
さまざまな雑貨に、この作品が印刷されているのを見たことがある人は多いに違いない。彼女はリーボックのスニーカーの売り上げに貢献し、著名アーティストのインスピレーションの源泉になってきた。【作品の詳細はこちら】

7. イノシシ(紀元前2-1世紀)Photo: Uffizi Gallery
このリアルなイノシシは、無名のローマ人彫刻家による大理石の彫刻で、ヘレニズム時代のブロンズ像を参考にしたものと考えられている。【作品の詳細はこちら】

8. バッチョ・バンディネッリ《ラオコーン》(1520-25年)Photo: Uffizi Gallery
叙事詩『アエネーイス』の一場面を表現した古代ギリシャの彫刻は、1506年にローマのエスクイリーノの丘で発見されて以来、数多くの芸術家たちに影響を与えている。【作品の詳細はこちら】

9. ピエロ・ディ・コジモ《アンドロメダを救うペルセウス》(1510-15年)Photo: Uffizi Gallery
翼のあるサンダルを履いたペルセウスが空を飛び、尻尾の先がくるくる巻いた巨大な海の怪獣がアンドロメダを襲おうとする場面を描いている。【作品の詳細はこちら】

10. レオナルド・ダ・ヴィンチ《東方三博士の礼拝》(1482年)Photo: Uffizi Gallery
1481年にダ・ヴィンチは、フィレンツェ近郊のサン・ドナート教会に飾るための絵を、アウグスチノ会の修道士たちから依頼された。【作品の詳細はこちら】

11. ラファエロ《ヒワの聖母》(1506年2月以前)Photo: Uffizi Gallery
ラファエロの《ヒワの聖母》は、ミケランジェロの《聖家族》の近くに展示されている。2人の画家がともにフィレンツェに住んでいた時期に制作されたことを考えると、納得できる組み合わせだ。【作品の詳細はこちら】

12. ミケランジェロ《聖家族(別名:トンド・ドーニ)》(1505-06年)Photo: Uffizi Gallery
ミケランジェロが完成させた板絵の中で唯一現存するトンド(家庭に飾る目的で描かれた円形宗教画)。【作品の詳細はこちら】

13. ヘルマプロディートス(紀元2世紀)Photo: Uffizi Gallery
元前2世紀の古代ギリシャのブロンズ像をもとにしてローマ時代に作られたこの作品は、ギリシャのパロス島で採掘された大理石から彫られている。【作品の詳細はこちら】

14. エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン《自画像》(1790年)Photo: Uffizi Gallery
画家ルイ・ヴィジェの娘で、有名な画商ジャン=バティスト=ピエール・ルブランの妻だったエリザベートは、肖像画で成功を収めた作家だ。【作品の詳細はこちら】

15. パルミジャニーノ《長い首の聖母》(1534-40年)Photo: Uffizi Gallery
聖母の長い首と指、そして乳首とへそが見える薄布の衣服が描かれたこの絵には、典型的な聖母子像にはない官能性がある。【作品の詳細はこちら】

16. ポントルモ《エマオの晩餐》(1525年)Photo: Uffizi Gallery
ポントルモの《エマオの晩餐》は、復活したイエスが旅人に扮し、2人の弟子とともに食卓にいる様子を描いている。【作品の詳細はこちら】

17. ロッソ・フィオレンティーノ《エテロの娘たちを守るモーセ》(1523-27年)Photo: Uffizi Gallery
筋骨隆々の男たちが、カンバスから飛び出そうな勢いで前面に押し出されている混乱したシーンは、聖書の物語の一場面で、そこに登場するモーセが活劇のヒーローのように描かれている。【作品の詳細はこちら】

18. ティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》(1538年)Photo: Uffizi Gallery
16世紀のヴェネツィアでは横たわる裸婦像が大流行した。【作品の詳細はこちら】

19. カラヴァッジョ《バッカス》(1598年)Photo: Uffizi Gallery
カラヴァッジョは、たびたび暴力沙汰を起こしただけでなく、(殺人を含む)より重大な犯罪に関わったことでも知られる。【作品の詳細はこちら】

20. ヘリット・ファン・ホントホルスト《Supper Party With Lute Player》(1619年頃)Photo: Uffizi Gallery
オランダのカラヴァッジスティ(カラヴァッジョの追従者、カラヴァッジョ派)のリーダーだったホントホルストは、キアロスクーロ(陰影法)を極限まで追求した画家だ。【作品の詳細はこちら】
![]()
21. アルテミジア・ジェンティレスキ《ホロフェルネスの首を斬るユディト》(1620年頃)Photo: Uffizi Gallery
この有名な物語は多くの画家が題材として取り上げているが、その中でも最も真に迫ったものの1つがこの作品だ。【作品の詳細はこちら】

22. ユストゥス・スステルマンス《Madonna “Domenica delle Cascine,” la Cecca di Pratolino, e Pietro Moro》(1634年)Photo: Uffizi Gallery
人物同士がやり取りをしている瞬間をカメラで捉えたかのように描写されている。【作品の詳細はこちら】

あわせて読みたい
