2026年2月12日 午前7時30分
【論説】福井県は子育て世帯の外出支援を目的とした「ふく育タクシー」で、医療的ケアが必要な子どもの送迎にも対応する体制を整えた。車いす利用や寝たきりなど介助が必要な子どもにも対応する。障害の有無を問わず、育児負担の大きい世帯を支える仕組みを強化した形だ。
ふく育タクシーは、自家用車を1台しか持たない家庭や県外からの移住家族の「外出が難しい」などの声を受け、2023年10月にスタートした。同じような仕組みは全国にあるが、市町単位やNPO主導の運営が多く、県が主導して全県的なサービス体制を整える事例は少ない。
妊産婦や子どものみでも安心して利用できるよう、県の認定を受けたドライバーが乗車する。健診、買い物、学習塾やスポーツなどの習い事などで利用されている。
開始当初17社だったタクシー事業者は、医療的ケア児の利用を担う介護タクシー事業者を含め現在29社。利用実績は24年度の932件から、本年度は12月末時点で986件に達し、徐々に増えている。
利便性向上への取り組みも続けている。「どのタクシー会社を選べば良いか分からない」との声に応え、24年7月には利用者からの電話を受けたオペレーターがタクシーを手配する「サービスプラットフォーム」を開設。ひとり親家庭、多胎児や医療的ケア児を抱える世帯などの経済的負担を軽減するため、昨年6月からは4万8千円分の利用券の配布を始めた。家事育児サポートの「ふく育さん」と共通券となっている。現場の声に対応し、利便性を高める取り組みは評価できるだろう。
一方で、使いやすい制度にする上での課題も浮かび上がっている。需要が集中する時間帯にはマッチングが難しいケースが発生しているほか、タクシー業界全体への制度の浸透が十分ではなく、供給体制の拡充が進んでいない。車両が必要数なければ、利用者が離れていき、制度を維持するのが難しくなる恐れもある。
人口減少が進む地方において、子育て世帯や障害児家庭が「住みやすい」と感じられるかどうかは、まちの将来を左右するポイントの一つだ。住みやすさは住居や教育環境だけでなく、日々の外出など日常生活も評価の対象になるだろう。子どもを連れての外出は心理的な負担も少なくない。移動の不安から、外出をためらう家庭を減らすことができるか。持続可能な地域づくりのためにも、希望する世帯が気軽に利用できるサービスの充実を望みたい。
