
愛知県の公共DXが、イノベーションの実現に向けて加速している。変革の取り組みは、既存のルールや慣習を見直すことから始まった。愛知県が重視している「当たり前を疑う」とはどういう意味なのか。「第9回 公共DXフォーラム」(Japan Innovation Review主催)に登壇した愛知県総務局デジタル戦略監(CDO)の中谷純之氏の講演を基に、愛知県が目指すイノベーションの本質と独自のDX推進の取り組みを紹介する。
※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第9回 公共DXフォーラム」における「特別講演:愛知発のイノベーション≠技術革新~まずは「当たり前」を当たり前に、そして当たり前を疑うDX~/愛知県総務局デジタル戦略監(CDO)中谷純之氏」(2025年11月に配信)を基に制作しています。
なぜ今、「イノベーション=技術革新」を疑うべきなのか
「イノベーション創出」を掲げる企業は多いが、期待した成果を得られていないケースは少なくない。その背景には、イノベーションとは新しい技術を導入することで起こるものだという発想があるのではないか。こうした考えに対し、中谷氏は「イノベーションは技術革新そのもののことではない」と断言し、イノベーションの本質を次のように説明する。
わが国では、イノベーションを「技術革新」と訳して理解されることが多い。しかし、100年以上前にこの概念を提唱した経済学者シュンペーターの原典に、技術革新という言葉は登場しない。イノベーションとは、複数の経済諸要素を組み合わせる「新結合」によって、新しい価値を生み出し、社会を変革することである。
こうした事例は身近にも多くある。例えば、ドライヤーとくしという既存の機能を組み合わせた「くるくるドライヤー」だ。ブラッシングとブローを同時に行えるようにすることで、利便性と時間短縮という新たな価値を生みだした。
では、こうした新結合の発想はどこから生まれるのか。前例や慣習にとらわれず、物事を先入観なく観察し、「当たり前を疑う」ことが重要だと中谷氏は言う。
