ベン・ノートン
Geopolitical Economy report, 2026年1月27日
翻訳:脇浜義明

 ダボス会議で、カナダノマーク・カーニー首相が、西側の「法に基づく秩序」は「虚偽であり、偽善的であり、搾取的」であることを認めた。彼の「米国覇権」批判は何を意味するのか。

 カナダのマーク・カーニー首相は、2026年ダボスのおける世界経済フォーラムで行った演説で注目を集めた。彼はトランプ米大統領を非難し、カナダは「基本的に戦略的姿勢を変え」、米国一辺倒をやめて「多様化路線」を採ると言った。
 その数日前にカーニーは中国を訪問し、関係修復を図った。彼は2017年以降、中国を訪問した最初のカナダの指導者となった。北京で習近平国家主席との会合で、彼は外交関係は「新たな世界秩序」の中で変化しなければならないと述べた。
 この二つの出来事は歴史的に大きな意味がある。
 多くのアナリストは貿易摩擦の激化を述べるだけで、肝心な点を見逃している。ダボス会議演説でカーニーが西側帝国主義の偽善を暴露した発言である。彼は次のように言った。

「我々は、国際的な法の支配が部分的であり、最も強い国が都合に合わせて自分を法支配から免除し、通商ルールは非対称的に実行されることを知っていた。また、我々は、国際法が加害者や被害者が誰であるかに応じて異なる厳密さで適用されることを知っていた。この虚構は役に立った。特に米国覇権が公共財、航路開放、金融システム安定、手段的安全保障、紛争解決のための枠組み支援などを、都合のよい形で提供するのに役立った。そこで我々は窓に看板をかけた。我々はこの儀式に参加し、言葉を現実の間の隔離を指摘しないようにしてきた。しかし、もうこの取引は通用しなくなった。率直に言おう。我々は移行ではなく、破壊の真っ只中にいるのだ。」

 つまり、カーニーは、彼が西側「中間大国」と呼ぶもの(カナダや欧州諸国)は米国の覇権に加わり、周辺部グローバルサウスへの体系的従属的支配と搾取を前提とする米国主導の帝国主義的システムの一員なっていることを認めたのである。グローバルサウスの略奪から「中間大国」も利益を得ていることを認めたのである。注目すべきことは、カーニーが、「中間大国」がいわゆる「法による支配」が偽善的で搾取的であることを知っていたと指摘している点である。しかし、米覇権の下位パートナーでいる方が利益になるとして、この役に立つ虚構に従ってきたと、カーニーは指摘している。カナダのカーニー首相は、キャリアをウォールストリートのメガバンクであるゴールドマン・サックスに始め、カナダ銀行とイングランド銀行の頭取を歴任したネオリベラル・テクノクラートであり、こうした「虚構の仕組み」を熟知している。その彼が、「この取引は通用しなくなった」と言っているのだ。
 米国は、これまで「同盟国」と呼んできた「中間大国」に対して、敵対的な態度を取り始めた。一方で中間大国たちは、数世紀にわたって自分たちがグローバルサウスに対して行ってきたことを、今度は米帝国から受ける立場となり、自らも共犯であったそのシステムに(少なくとも外見上は)反旗を翻し始めた。
 カナダは、イスラエルに武器供給をしてガザ・ジェノサイドを促進した。カナダは、2011年NATOのリビア攻撃を援助して、リビア政府を転覆し、リビアを無秩序で荒廃した地にした。カナダは、ハイチの植民地的軍事占領の重要な一部であった。カナダは、グローバルサウスにおける米主導のクーデターを支援した。
 カーニーは、トランプ政権によるベネズエラ初のクーデター未遂事件が起きた2019年にイングランド銀行総裁を務めており、ベネズエラ政府所有の数十億ドル相当の金を違法に凍結(つまり盗んだ)した。
 カナダをはじめとする西側諸国の「ミドルパワー」は、自国に利益をもたらす限り、米国主導の帝国主義体制を支持してきた。米国が支援するパレスチナ領土の植民地化には容認していたものの、トランプ大統領によるグリーンランド(NATO加盟国デンマークの自治領)への露骨な植民地化の試みは、彼らにとって受け入れ難いものだった。
 帝国主義システムが「中間大国」にもはや利益をもたらさなくなった今になって、彼らは突然、国際法遵守、主権尊重という原則に基づく行動をとるジェスチュアを始めた。客観的に見れば、西側帝国主義同盟が崩壊すれば、世界人民の大多数(その大半はグローバルサウス)にとってよいことである。ただ、カーニーの経歴を踏まえると、彼の「新しい世界秩序」発言を真剣に受け取ることは困難である。

カナダ首相のマーク・カーニー(左)と習近平(右)

元記事は以下から↓
Western imperial alliance in crisis: Canada condemns USA, declaring ‘new world order’ in China