インド科学技術省(MoST)は1月8日、同省傘下の研究機関の研究者らが、冷却原子の局所密度を原子の量子状態を乱すことなくリアルタイムで測定できる新たな手法を実証したと発表した。研究成果は学術誌Applied Physics Lettersに掲載された。

図: RDSNSは原子雲を高い時間分解能および空間分解能で探査できる非侵襲的な測定手法である
(出典:PIB)

従来の冷却原子実験では、レーザー冷却とトラッピングによって原子の運動エネルギーを絶対零度近くまで低下させ、量子特性を顕在化させる。このような冷却原子は、量子計算や量子センシング研究に用いられているが、量子状態を測定する既存手法には課題があった。吸収イメージングは高密度原子雲では測定精度が低下し、蛍光イメージングは長時間露光を必要とし、いずれも測定時に原子状態を変化させる場合が多い。

今回、インド科学技術庁(DST)傘下のラマン研究所の研究者らは、ラマン駆動スピンノイズ分光法(RDSNS)を実証した。この手法は、原子を通過するレーザー光の偏光ゆらぎからスピンの自然な揺らぎを検出するスピンノイズ分光法に、2本のラマンレーザーを組み合わせたものである。

ラマンビームによって隣接するスピン状態間の遷移を駆動することで信号は約100万倍に増幅され、直径約38µmに集光したプローブにより、体積0.01mm3、約1万個の原子を含む局所領域の密度を測定できる。研究チームは、磁気光トラップ(MOT)内のカリウム原子を用いた実験で、原子雲中心部の密度は約1秒で飽和する一方、蛍光測定による全原子数は約2倍の時間を要することを確認した。

また、RDSNSによる局所密度分布は、蛍光画像に逆アーベル変換を適用した結果と良好に一致し、軸対称性を前提としない点も示された。研究チームは、遠く離調した低出力プローブを用いることで、マイクロ秒スケールでも数パーセントの精度が得られるとしている。

ラマン研究所で量子混合物(QuMIX)研究室を率いるサプタリシ・チャウドゥリ(Saptarishi Chaudhuri)教授は、「この技術は、中性原子を用いた量子計算や冷却原子による量子シミュレーションの文脈において、冷却原子実験のリアルタイム診断に幅広く応用されると考えています」と述べている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部