大阪松竹座(大阪市中央区)で2月5、6日の2日間、「OSK日本歌劇団 OG公演 FINAL」(総合監修・山村友五郎)が行なわれる。OSKは1922年、翌年の松竹座開場に先立ち、同劇場の専属舞踊団、松竹楽劇部として誕生した。松竹座は今年5月の閉館を発表しており、一昨年、昨年と続いた『生まれ故郷』でのOG公演はこれが最後となる。開幕を前に1月末、熱気あふれる稽古場で取材した。
世代越え、OSKは一つ
これまでの公演で耳にしたことのある懐かしい楽曲が流れる稽古場。この日は公演全体を締めくくる第3部の振り付けが行なわれていた。出演者の世代はさまざま。現役時代は同じ舞台に立つ機会がなかったOG同士もまるでずっと一緒に活動してきたような一体感で稽古が進んでいく。

稽古中のひとこま=同☆
OSKのOG公演は、現役劇団員の公演と同じくらい、いや、それ以上に激しく踊り、歌うレビューショー。長年OSKを応援してきたファンはもちろん、OSK初観劇の観客も存分に楽しませるエンターテインメントとなっている。
第1部は近鉄時代の作品を中心に構成。今回は元トップスター東雲あきら主演の名作ミュージカルのナンバーをふんだんに盛り込み、上演当時を知らない世代のOGも交えて上演する。2024年夏に退団した前娘役トップスター舞美りらは「憧れていたナンバーに出演することができ、夢のようです。ダンスのOSKのプライドを持ち、命をかけて近鉄時代の名場面を踊らせていただきます」と意気込みを語った。
元トップスター洋あおいは男役の正装である黒エンビの群舞で自身の現在・過去・未来を踊る。若手OGまで、ずらりと勢ぞろいした男役陣ひとりひとりとの一体感を伝えるこの景は「新しい挑戦」と洋。「『FINAL』ではあるけれど、チャレンジがなければ、お客さまに楽しんでいただけない。松竹座という劇場そのものへの感謝、松竹座へ通って下さったお客さまへの感謝、スタッフの皆さん、演出や振り付けの先生方、そしてこの企画を考えて下さった松竹の方々…すべてに感謝を込め、新たに飛び立つ気持ちで踊りたい」という。

大阪松竹座は1997年に新築開場したが、1923年に開場した当時の特徴的な外観をそのまま残している=2026年1月、大阪市中央区の大阪松竹座前☆
松竹座とOSK
松竹楽劇部(現在のOSK)の松竹座初公演は1923年5月に開幕した「アルルの女」。現在も歌い継がれているOSKのテーマソング「桜咲く国」(岸本水府作詞、松本四良作曲)は1930年「第5回春のおどり さくら」の主題歌としてつくられたもので、当初のタイトルは「春の唄」という。
1934年、OSKの本拠地は道頓堀の松竹座から千日前の大阪劇場(通称・大劇)に移り、「春のおどり」も大劇で上演するようになった。大劇が火災にあい、復旧が間に合わなかった1938年、「第13回春のおどり 日本むすめ」を4年ぶりに松竹座で上演しているが、その後、66年間、OSKの「春のおどり」が松竹座で上演されることはなかった。
松竹座夕景。昼間とはまたひと味違う魅力的な表情を見せる=同☆
解散の危機を越えて
1967年に大劇が閉館し、OSKの本拠地は奈良市のあやめ池円型大劇場(2004年閉館)へ移転。35年後の2002年5月、当時、OSKの親会社だった近鉄がOSKへの支援終了と1年後の解散を発表する。
ほどなく「OSKを残したい」という思いの劇団員が存続を目指して動き始め、署名活動が広がりを見せたものの2003年5月末、近鉄OSKは解散。直後の6月初め、劇団員有志が「OSK存続の会」を立ち上げて、新たな活動をスタートさせた。
「先の保証のない存続活動のリスクより、OSKを失う怖さの方が大きかった」。存続活動を牽引した元トップスター大貴誠は迷わず突き進めた理由をこう語った。そして2026年、OSKは創立104年目を迎える。大貴は「良いと思ったことをやっていけば、必ず、何らかの形になることを教えられました」と語った。

稽古中のひとこま=大阪松竹座内の稽古場☆
66年ぶりの帰還から
66年ぶりとなる松竹座での「レビュー春のおどり」が実現したのは、近鉄OSKが解散した次の年、2004年4月のことだった。出演は23人の劇団員と9人の研修生。厳しい状況の中で奮闘する「OSK存続の会」にとって松竹座公演は、はかり知れない力となった。
「OSK存続の会」会長として存続活動を率いた男役スター吉津たかし(奈良県宇陀市出身)は「2004年は夢が現実になった年。まさに天にも昇る思いでした」、存続期のOSKの中心を担った娘役スター若木志帆は「この時、松竹座に立てたことが、OSK日本歌劇団の今につながったのだと思います」とそれぞれ振り返った。

「OSK存続の会」会長を務めた吉津たかしは日舞の名手。今回のOG公演でも舞を披露する=同☆
さて、今回のOG公演第2部は66年ぶりに松竹座での上演が復活して以降の「レビュー春のおどり」から、見せ場をぎっしり詰め込んだ、ぜいたくな構成となっている。若木と同じく存続期を支えた娘役スター北原沙織は「2004年の『春のおどり』で初めて披露した娘役4人による演目をさせていただきます。緊張するのと懐かしいのと、いろいろな思いがよみがえります」と話してくれた。

66年ぶりの大阪松竹座「レビュー春のおどり」に向けた制作発表=2004年1月21日、大阪市内
2月1日まで南座(京都市東山区)で「わが歌ブギウギ~笠置シヅ子物語」に出演していた元トップスター桜花昇ぼる(奈良県斑鳩町出身)は「2004年に初めて松竹座に入った時、ここで先輩方が歴史を築いてこられたのだなと、身震いするほど感動したことを覚えています。近鉄時代はOSKが松竹座で誕生したという歴史を意識することがほとんどなかったのですが、解散があったことでOSKの原点に戻れた気がします」とメッセージを寄せてくれた。

出演者、スタッフらが初めて集まる「顔寄せ」に続いて行われた稽古=2004年3月3日、大阪松竹座内の稽古場
「私たちの生まれ故郷に戻らせていただいた2004年、松竹座の舞台に立たせていただけることが、ただただ嬉しくて。舞台に立てるのは決して当たり前じゃない。常に『次はない』と思ってやってきました」というのは元トップスター高世麻央。「この場所があったからこそ、OSKの歴史はつながりました。想いがあふれて、とても言葉では伝えきれません」と松竹座への特別な想いを語った。
2004年、66年ぶりの「春のおどり」で初めてOSKを知り、その場で入団を目指すと決めたという前トップスター楊琳は「松竹座ができたからこそ誕生したOSK。思いは舞台に表れると思うので、舞台での立ち姿や一曲一曲への魂の込め方を通して、お客さまに受け取っていただけるよう演じたい」とOG公演への意気込みを語った。

66年ぶりに復活した大阪松竹座「レビュー春のおどり」第1部・桜咲く国=2004年4月(松竹提供)
2004年「春のおどり」~それぞれの思い
今回のOG公演「FINAL」には、2004年の「レビュー春のおどり」を経験したOGが数多く出演する。この日の稽古場で話を聞けたのはその一部だが、感謝の思いに続く、それぞれの言葉を集めた。
「66年ぶりの『春のおどり』から3年後に退団した私は、松竹座で卒業させていただいた初の劇団員です。その時も、いろいろご配慮いただき、感謝でいっぱいです」(萌川菜)
「上級生の方々をはじめ出演者の熱い思いがあふれていたから、少人数でも劇場全体を満たすことができたのだと思います。お客さまのパワーもすごかったです」(折原有佐)
「まさか松竹座の舞台に立てるなんて思っていませんでした。みんな必死で、ただただ前だけを見て進んでいた、あの時の空気感は今でも忘れられません」(春咲巴香)
「私たちOSKのために、わざわざ楽屋の整備をして下さったとうかがいました。楽屋の入り口に掲げる、名前が書かれた木札も全員分作っていただき、ものすごく感動したのを覚えています」(森野木乃香)
「研修所に入って半年で立った松竹座。『分からないことは聞いて』と言われても『分からないことが分からない』という状況でした。今、思えば上級生の方々にとっても初めての松竹座。そんな中で、私たちの面倒を見て下さったこと、本当に大変だったと思います」(鈴峯ゆい)

66年ぶりに復活した大阪松竹座「レビュー春のおどり」第2部・ルネッサンス=2004年4月(松竹提供)
みんなの故郷
OSKは松竹座とともに生まれた。だから現役時代に出演したかどうかにかかわらず、ここは全員のふるさと。稽古場で話を聞くことのできた出演者のコメントを紹介する。
「第1部の通し稽古の時、最近退団された若手OGが近鉄メンバーと同じ景で一緒に踊っていらっしゃるのがとても頼もしくて感動しました」(奈美ちはる)
「それぞれ退団してからの人生で、色々な経験をしてきたからこそ、現役の時にはなかった何かが加わって、さらに素晴らしいものになっていると思います」(美影ひとみ、奈良県上牧町在住)
「松竹座閉館までの限られた日程の中でOG公演をさせていただけることに松竹さんの愛情を感じております」(有希晃)
「きっと、いつかどこかで松竹座がよみがえってくれることを信じています。その時は、また、この板(舞台)を踏みたいな、と思っています」(千爽貴世)
「お稽古場で感じるのはOSKならではの上級生と下級生の関係。きちんとしたあいさつ、気づかいなど、しっかり受け継がれていました」(相羽美穂)
「OG公演のお稽古場、すごい方たちが揃っておられて感動します。下級生の人たちが伝統をどんどん引き継いでいってくれたらうれしいです」(涼風うらら)
「道頓堀に最後に残った劇場である松竹座がなくなることが本当に残念。松竹座での最後のOG公演、命を燃やして頑張ります」(夏城佑季)
「OSK日本歌劇団 OG公演 FINAL」のチラシ
※香月蓮は体調不良のため降板
◇OSK日本歌劇団OG公演「FINAL」公演情報◇
2月5、6日 昼の部=13時30分開演、夜の部=18時開演
※6日(夜の部・昼の部)はS席・A席ともに完売。
※5日も残席わずか。
S席8500円、A席4500円
チケットホン松竹(10~17時)=電話0570(000)489 または 電話06(6530)0333、チケットWeb松竹=https://www1.ticket-web-shochiku.com/t/ で受け付け
