出港する中国の漁船。出港する中国の漁船。Oriental Image via Reuters Connect東シナ海で数千隻の中国漁船が、足並みを揃えて隊列を組む様子が2度にわたり確認された。これらの船舶は、船舶位置データと衛星画像の双方で捉えられている。専門家によれば、この異例の動きは、中国の「海上民兵」に関連した活動である可能性が高いという。

東シナ海では、数千隻にもおよぶ中国の漁船が集結し、連携して行動しているとみられる隊列を組んだ。専門家は、この異例の動きに関して、通常の商業的な漁業活動を超えるものである可能性を示唆している。

船舶位置データによって追跡されたこれらの隊列について、この地域の情勢に詳しい中国ウォッチャーや専門家は、その規模が前例のないものであり、通常の漁業慣行とはかけ離れていると指摘している。

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専門家によれば、こうした動きは中国の「海上民兵」に関連している可能性があるという。これは、中国政府が統制する半ば秘密裏の船団だ。直接的な軍事衝突を引き起こすことなく、係争海域での支配権を主張するために用いられることが多い。表立って活動している一方で、政府の関与を否定できる余地も残された戦力だ。ただし、中国側はこうした見方を否定している。

中国漁船によるこれら一連の不審な動きは、まず2025年12月25日に発生した。上海沖で2000隻以上の船舶が2つの「逆L字型」の隊列を形成し、その長さは約467kmを超えた。次いで2026年1月11日には、ほぼ同海域で約1500隻が確認され、およそ321kmにわたって一列に並ぶ隊列を形成した。これらの活動はニューヨーク・タイムズが最初に報じている。

この海域に集結した船舶の数だけでも、専門家を驚かせるには十分だった。戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア海洋透明性イニシアチブ(AMTI)のハリソン・プレタ(Harrison Prétat)副局長は、「長年この種のデータを観察してきたが、これほどのものは見たことがない。関与している船の数があまりに多いため、最初はデータのエラーか何かの間違いではないかと思ったほどだ」とBusiness Insiderに語っている。

ニュージーランドを拠点とする海洋監視・分析の専門企業Starboard Maritime Intelligenceのデータによれば、いずれのケースにおいても、東シナ海全域に分散していた漁船が、数日かけて上海沖の特定の海域に集結し、連携した隊列を形成したことが示された。また、小型衛星群を運用するPlanet Labsが1月10日に撮影した衛星画像には、膨大な数の船舶がその海域に向かって移動する様子が捉えられた。

1月初め、東シナ海で漁船が集結して隊列を組む様子が、船舶位置データによって捉えられた。1月初め、東シナ海で漁船が集結して隊列を組む様子が、船舶位置データによって捉えられた。Starboard Maritime Intelligence

一度所定の位置につくと、船舶は動きを止めた。その後、数時間にわたってその隊列を維持した後に解散した。

「これほどの規模、幾何学的な配置、組織性、そして迅速な集結と解散という一連の動きは、通常の漁業行動とは到底相容れないものだ」と、米海軍大学校の教授であり、中国の海上民兵に詳しいアンドリュー・S・エリクソン(Andrew S. Erickson)がBusiness Insiderに語っている。

また同氏は、大学や米海軍を代表する立場ではなく、あくまで個人の見解として、これを「巨大で、地理座標に基づいて精密に連携されたフラッシュモブ」と表現している。

この分野の専門家らは、こうした行動パターンが、中国の海上民兵のこれまでの活動実態と一致しているとの見解を示している。

アメリカ国防総省は、中国軍に関する最新の評価報告書の中で、次のように述べている。

「中国当局は、地方および省レベルのさまざまな商業組織に補助金を支給し、通常の民間の商業活動とは別に、臨時の『公的』任務として、中国の海上民兵の船舶を運用している」

「海上民兵の部隊は、漁師などの海洋産業従事者で構成され、中国海軍(PLAN)および中国海警局(CCG)を補完する役割を担っている。彼らは本業を続けながら、主にPLANやCCGによって組織され、訓練を受けており、必要に応じて動員される」

中国は、南シナ海の紛争海域に海上民兵を展開することで、PLANやCCGを直接介入させるよりも深刻な事態を招くことなく、領有権を主張することができる。

海上民兵自体は新しいものではないが、過去10年の間に、その規模と活動範囲は拡大してきたとみられており、ますます目立つようになってきた「グレーゾーン」での活動において中心的な役割を果たしている。

1月初めに、東シナ海で確認された船舶。1月初めに、東シナ海で確認された船舶。Planet Labs PBC

アジア海洋透明性イニシアチブ(AMTI)は2025年2月、次のような見解を示した。

「これまでであれば、船舶は漁を装うことができる無人の岩礁に停泊することが多かったが、それとは対照的に、今回は大半の漁船が中国の軍事拠点に停泊して1日の大部分を過ごしていた。このことは、中国当局がもはや海上民兵を正当な漁船団に見せかけるという『崩れかけた建前』を維持するよう、船主たちに圧力をかけなくなったことを示唆している」