タラ漁の衰退した島にミシュラン「3キー」ホテル

北大西洋に浮かぶフォーゴ島にそびえる《フォーゴ・アイランド・イン》。カナダで2軒しかないミシュラン「3キー」(ミシュランが新設したホテルの最高格付け)の1軒でもあり、富裕層をターゲットにした1泊28万の最高級のホテル。 
ホテルを所有運営するのは島の財団で、彼らはあらゆる産業や活動に関わり、島の恒久的な地域経済活動に貢献する。

前編「タラが消えた島に生まれた世界最高峰の宿――1泊28万円が地域を救うカナダ・フォーゴ島の逆転戦略」では、タラ漁の衰退によって消滅寸前だった島が、最高級の宿を核に再生していく姿を追った。富裕層を惹きつける圧倒的な体験価値と、その収益が島の漁業や工芸、雇用へと循環する仕組み。そこには、観光と地域の幸福を両立させる、きわめて戦略的な選択があった。

前編「タラが消えた島に生まれた世界最高峰の宿。1泊28万円が地域を救うカナダ・フォーゴ島の逆転戦略」を読む。

後編では、そのすべての出発点となった、一本のドキュメンタリー映画と、能登を始めとする日本の地方にも通じる可能性を、旅行作家・山口由美さんの寄稿でお伝えする。

「この映画が、すべてを変えた」

私がフォーゴ アイランド インを知ったのはコロナ禍のさなかのことだ。カナダ観光局のウェビナーで、漁業の衰退したカナダの離島が最高級の宿を介した観光で再生した事例が紹介され、アンテナが立った。詳細が書かれた本も購入した。そこに「フォーゴ・プロセス」の記述があったことを思い出した。

フォーゴ島の島民と共にインはある 撮影:山口由美客室はフォーゴ島の家庭の一室を思わせる 撮影:山口由美部屋ごとにデザインの異なるベッドカバーは全て島民のハンドメイド 撮影:山口由美

<彼女はずっとその「フォーゴ・プロセス」に力づけられ、勇気を与えられてきた。映画があったからこそ、いつか島に戻り、島を立て直したいと思い続けてきた。今も自分を元気づけたい日には、家に帰ってこの映画を見る。 
「この映画が、すべてを変えた」とジータは言う。ジータと漁師たちの心に「フォーゴ・プロセス」が火を灯し、40年後の大逆転劇を生んだのだ。>(『観光の力』半藤將代著より)

フォーゴ アイランド インの創業者、ジータ・コブ©David Howells