2026
2/02
宮城県のブランド豚「宮城野豚」の肉質を専門家が評価する「宮城野豚枝肉共進会」にて、チャンピオン賞を連続で受賞している「有限会社ピッグ夢ファーム」。宮城県の北東部に位置する農業が盛んな静かな町で、約5,000坪という広大な敷地面積の中、養豚を営んでいる。同社が生産する「宮城野ポークみのり」は、柔らかくてジューシー、そして甘い脂身が好評を得ている。そのおいしさの秘密はどこにあるのだろうか。
目次
宮城県オリジナルブランドの最上級豚肉「宮城野ポークみのり」

「宮城野ポーク」は宮城県で開発された銘柄豚で、止め雄に「しもふりレッド」を交配、きめ細やかな肉質と柔らかくコクのある風味、脂の甘み、さっぱりした食味が特徴だ。その中でも、出荷前の仕上げ段階に米を与え育てた豚は「宮城野ポークみのり」と呼ばれる。脂身にくどさがないため、しゃぶしゃぶで食べるとアクが出ず、さっぱりとした後味で人気を集めている。
国産米を与えて、日本の食文化に合う豚肉を生産
代表取締役の佐々木さんによると、飼料米の割合はその養豚場によってまちまちだそうで、「ピッグ夢ファーム」では、全農グループの配合飼料に国産米を一定割合まぜて与えている。これにより、風味や食感の良さをもたらすオレイン酸が増加し、脂身の質が向上。口どけがよく、なめらかな食感に仕上がる。食べさせ過ぎると脂肪が多く太り過ぎの仕上がりになってしまうため、その配合が味の決め手となるそうだ。そして、国産米を使うのは、日本独自の食文化に合った豚肉を作りたいからだ、と教えてくれた。
また、配合飼料にもこだわっている。佐々木さん曰く「品種はもちろんだが、餌も同じくらい大切」と話す。以前、配合割合を変えたときに消費者から「味が落ちた」と指摘されたことがあったのだという。そして、試行錯誤の結果、現在の飼料に落ち着いた。タンパク質量などのデータを鑑みて、トウモロコシ、大豆粕などを主成分としたオリジナルの飼料を農場のために作ってもらっている。
ストレスのない環境で豚を健やかに育てる

養豚に関わって15年だという農場長の石川和(やまと)さんは「まだまだ豚の飼育は難しいですね」と話しながらも、最も気を付けていることに、豚が病気にかからないようにすることを挙げた。豚熱ウイルスによる伝染病にかかれば、全頭処分を免れない。そのため、衛生管理を十分徹底している。特に豚にストレスのかからないように管理する。豚は人間と関わることがストレスになるので、分娩や介護など以外は豚舎に入ることを避けているそうだ。さらには、豚1頭当たりのスペースにも気を配る。狭すぎればストレスがかかり、広すぎても発育にばらつきが出やすく、事故率が高まってしまう。そのため、豚の成長段階に応じた見極めが重要なのだという。
子豚をしっかり育てなければ、いい肉豚にはならない
多くの養豚場では、病気の治療や予防のために抗生物質、合成抗菌剤、駆虫剤などの動物用医薬品が使用されている。しかし、「ピッグ夢ファーム」では、そうした薬品を基本的に使わずに育てるため、豚舎の衛生管理を徹底している。薬品に依存せずに病気をしない豚を育てるには、子豚のころから免疫力を上げる必要があるという。子豚の段階で母豚の初乳を十分に飲ませ、病気に対しては薬品の使用を控え、ワクチン接種のみの対応だ。
創業以来の一貫経営により県内トップレベルの養豚

牛肉にA5ランクなどの格付けがあるように、豚にも格付けがあるのをご存じだろうか。公益社団法人日本食肉格付協会によるもので、脂肪の厚さや肉のしまり、きめの細かさなどを数値化した上で、「極上、上、中、並、等外」の5等級に格付けされる。牛肉の等級が「歩留等級(A・B・C)」と「肉質等級(5〜1)」を組み合わせた15段階評価であるのに対し、豚の格付けはシンプルだ。
極上肉が出ることは非常にまれだそうだが、「一部の人が手に取るような高級な豚ではなく、一般の人が手に取りやすく、おいしい豚を目指している」と佐々木さんは話す。「ピッグ夢ファーム」では、上(極上含む)と中が9割以上を占めている。この格付けは、消費者の目に直接触れる指標ではないが、流通上は、品質を測る重要な物差しとして機能している。
おいしくて安全な食料を届けるための徹底管理
この優れた格付を維持するためには、出荷の見極めが重要となる。一般的な飼育期間の平均180日で出荷するが、早いものでは160日、体重や体形をしっかり観察した上で出荷する。出荷時には目勘(目視での体重推定)の養豚場が多い中、「ピッグ夢ファーム」では出荷する豚を毎日一頭一頭測定し、歩留まりを考慮し出荷しているのだという。
こうした管理により、格付成績並びに出荷頭数は県内でもトップレベルを誇る。毎年11月に開催される農林水産祭(宮城県総合畜産共進会:一般社団法人宮城県畜産協会主催)では、約20年にわたり数多く「農林水産大臣賞」を受賞している(コロナ禍による未開催時期を除く)。農林水産祭とは、国民の農林水産業や食への理解を深めるとともに、生産者の意欲向上を図るための祭典のこと。日本の伝統的な収穫祭「新嘗祭(にいなめさい)」に由来しており、秋には明治神宮の宮司様よりお招きいただき参加している。
高品質な養豚で利益を生み出す
現在、年間目標出荷数を8,500頭から9,000頭に設定。飼料に使われるトウモロコシや大豆、小麦の多くは輸入に頼っており、円安の影響により飼料価格は高騰しているものの、価格転嫁が難しい状況だ。
夏場は豚の食欲不振により出荷数が減少し、冬場は繁殖サイクルの影響を受けて出荷数が増加する。夏場の出荷数を増やせると、売上増加が期待できるという。そのため、「ピッグ夢ファーム」では、夏場の暑さ対策として、気化熱を利用して空気を冷却するクーリングパットや屋根の表面温度を下げる石灰散布などの対策を行っている。
また、全国農業協同組合連合会を通して宮城県内のスーパーへ流通を行っているが、東京での販売も検討しているという。東京食肉市場で行われたイベントが大好評だったことをきっかけに、「うちでも扱わせてほしい」との卸売業者から要望を受けたそうだ。
生産課題はアニマルウェルフェアと老朽化する設備

今後の課題について聞いた。佐々木さんは、「ヨーロッパを中心にアニマルウェルフェアの基準が厳しくなっており、日本でもフリーストール飼いなどの飼育方法が求められるようになっている。しかし、母豚を個別に柵で囲って飼う『ストール飼育』にもメリットがあり、豚同士の喧嘩や子豚の圧死などを防ぐことができる」と述べる。引き続き政府の飼養管理指針にも注視していく。
アニマルウェルフェアとは、家畜が肉体的・精神的に健康でストレスや苦痛を最小限に抑えるよう配慮する概念のことで、「家畜の快適性に配慮した飼養管理」とも訳される。
そして、「病気対策と施設についても課題」だと話す。会社設立から20年以上が経ち、豚舎だけでなく糞尿処理の施設・機械など、修理をしながら使ってはいるものの、どうしても老朽化による欠陥は免れないため、これも経営上の継続課題となっている。
将来は「6次産業化」で生産価値の最大化へ

今後について尋ねると、「将来的に農場を建て直し、加工や販売まで一体で行える体制をつくりたい」と返ってきた。単なる生産の強化ではなく「6次産業化」を目指していくという。生産から加工・販売を自社で完結させることで、付加価値を高められ、ブランド力を維持しやすい。市場価格の変動に左右されにくく、ファンづくりや地域経済への貢献にもつながるといったメリットが期待される。
一口食べればその旨味が口いっぱいに広がり、あっさりしながらも甘味のある脂身に感動すら覚える「宮城野ポークみのり」。全国のグルメファンにぜひ一度食べてみてほしい。
