
「カツラーメン部」を発足
岡山経済新聞(オカケイ)ではこれまで「オカケイ・カレー部」を発足し、記者と読者が岡山のカレー店を訪問し食レポしてきました。今回、岡山の食文化を伝える活動を広げるため、ラーメンにトンカツをのせた「カツラーメン」「カツそば」をリポートする「カツラーメン部」を発足した。
「カツラーメン」とは
秋田県小坂町のウェブサイトによると、カツラーメン1970(昭和45)年ごろに誕生し、2023年度文化庁認定の100年フードに選ばれた「こさかまちかつらーめん」と青森県まで続くカツラーメン街道にも提供する店があるようだ。
「中華そば 備前岡山 浅月」
岡山ラーメン学会によると、岡山ではチェーン店を含め約100店で提供しているという。発祥は定かではないが、カツラーメンを提供する、恐らく最も古い店の一つであるラーメン店「浅月(あさづき)本店」(岡山市北区奉還町2)を訪れた。

創業昭和23年
同店スタッフによれば、関西から移り住んだ上山政治さん・ハルエさん夫婦が1948(昭和23)年に今と同じ場所で創業。当初はだしの色は薄く、物足りなかったという。知り合いの精肉店から豚骨を調達し砕いて煮ることで濃いだしを作るようになったという。当時、中華そばは30円だった。
関東から同店を訪れた客から「東京ではカツをのせた中華そばがある」と聞き、「カツそば」を提供し始める。約45年前に現在の建物に建て替える前からメニューにあったことから、スタートは50年以上前と推察される。当時は、カツの他に、エビ天や餅をのせたメニューも当時はあったという。現在は、年季を感じる調理白衣に身を包み、背中の曲がった2代目と3代目が味を引き継いでいる。

「カツそば」
「カツそば」(1,290円)は、注文してからカツを揚げ始める。注文時にスタッフと(恐らく)2代目が独特なかけ声をかけるが内容は聞き取れない。カツの揚がり具合と麺のゆで具合を、声をかけながら合わせていく。縦に長い店内は客席と厨房が近く、油の香りが漂い、揚げる音が響いてくる。

メニューは基本となる「中華そば」(890円)にモヤシ、ワカメ、高菜、卵、ネギ、のり、カツ、チャーシューのトッピングの組み合わせで構成。「全部のせ」の「浅月スペシャル」(1,800円)もある。

着丼した「カツそば」の、濃い茶色をした豚骨しょうゆラーメンは「ワイルドでガツンとした味と香り」が特徴。丼には、チャーシュー、メンマ、ネギ、面積の約半分を占める四つ切りにしたカツがのる。スープが濃く、塩味も強いはずだが、カツの油がまろやかにし、岡山市東区百枝月(ももえづき)で育てた岡山九条ネギの食感と爽やかさが中和している。
まずはカツを口に運ぶ。硬めのパン粉を使い、揚げたてのカツはカリカリといい音がする。ロースの厚みと同じくらいの衣が両サイドを包み込む。衣だけはがしてスープに漬けて食べてもいいくらいの存在感。カツの両端に脂身があることが多く、また衣も厚くなる。揚げたてのカリカリを楽しむ端の一切れ、スープが染みてジューシーさを楽しむ端の一切れ。好みにもよるが、どちらも衣の厚みと油の甘さを感じられる。

麺は中細麺でスープがよく絡み、すすりやすい。カツとスープのインパクトが大きいが、麺とチャーシューは程よさを追求している。(この味を)長く愛してもらうためには、どちらの要素も必要なのだろう。スープの塩分強目を助けるためには、拳より大きなおむすびにエビ天の尻尾が出る「天むす」(180円)と一緒に食べるといい。14時までは100円追加でご飯を付けることができる。

「高校生の頃、カツそばを食べたかったが、ぜいたくで食べられなかった」という客が食べに来ることもあるという。現在は全メニュー共、学生は50円引き。受験シーズンには必勝祈願の「勝ツそば」として食べる人もいる。
カツラーメンは、ラーメンにカツをのせただけと安易に考えていた。今回は、スープも豚、チャーシューも豚、トンカツも豚というトリプル豚。カツを揚げた油にスープの油。チャーシューやトンカツの脂身。要素は複雑に絡み合うことを初回にして味わった。香りに食感、食べ終わるまでの温度などを考えると奥深く、大食いメニューではなく、岡山で食を楽しむ必須メニューの一つであると実感した。
営業時間は10時30分~19時30分。木曜定休。
(文=岡山経済新聞・松原龍之)
