決断の座標 2026いわて衆議院選挙 ④1次産業
2月8日の投開票まで、戦後最短の政治決戦となる衆院選は、各地で真冬の舌戦が繰り広げられている。物価高、外国人との共生と地方創生、1次産業、そして外交・安全保障。課題は山積し、主権者であるわたしたちの1票が政権と日本の針路を左右する。大切な決断の座標軸を探る。
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④「サケ、サンマだけでは食べていけない」食の担い手、岩手から訴え 政治どう応える
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「農地を荒らしたくない」若手が奮闘
食料生産を支える本県農業の現場で歯止めがかからない担い手の減少。水稲30ヘクタールと和牛繁殖を手がける紫波町南伝法寺の吉田辰巳さん(36)は、地域でコメを作る人がやめていく現状を、日々肌で感じている。
8年前に就農して以降、経営面積は2倍に増えた。高齢になって米作りができなくなった人から、後を託されることが多いためだ。中山間地域で効率化は難しいが「農地を荒らしたくない」と踏ん張っている。
米価上昇「長くは続かないだろう」
2025年農林業センサス(速報値)によると、本県の基幹的農業従事者は3万2562人で、5年前の前回調査から1万1896人(26・8%)も減った。減少率は比較可能な1985年以降で最大となった。
長らく続いた米価低迷も離農に拍車をかけた。今は価格が上がったが、吉田さんの視線は冷静だ。「ようやく収益を確保し、設備投資もできる水準になった。でも、長くは続かないだろう」。全国的な在庫積み増しによる需給の緩和が懸念材料となっている。
抽象論ばかりの政策
担い手をどう増やしていくか。再生産できる環境をいかに構築するか-。主要政党の農業政策は「食料安全保障は重要」「自給率を向上させる」という抽象論ばかりで「具体的な政策が見えない」と指摘する。
吉田さんは会社を設立し、雇用を創出することで、地域全体の農地を守る体制を整えようとしている。「新規就農の受け皿になり、次世代の担い手も育成したい。法人化して大規模に取り組む経営体への支援を充実させてほしい」と訴える。
サケ、サンマだけでは食べていけなくなった
海に目を向けると、主力魚種の不漁が深刻化し、沿岸の地域経済は疲弊している。岩泉町小本の水産加工業、竹下水産の竹下幸治社長(81)は「何しろ魚が取れない。このままでは駄目になる事業者が増えてくるだろう」と憂う。
東日本大震災前は「サケやサンマだけで1年食べていくことができた」が、今やそれだけでは事業が続けられない。県内の秋サケの水揚げ量は、震災前3カ年(08~10年度)平均のわずか0・2%に激減。1キロ約30円だった仕入れ価格は約900円に高騰している。
安定して取れる魚がいない中で、サバの未利用部位を使ったメンチやサツマイモのコロッケを製造するなど試行錯誤する。震災前と比べた浜の活気を度合いで言うと「10%くらいかな」と現状を見つめる。
食の担い手に、政治はどう応えるか
衆院選では、肝心の水産業を巡る議論が聞こえてこないと感じる。「養殖への支援に力を入れてほしい。養殖の取り組みが広がれば、原料の安定的な確保につながる」と強く求める。
地方の農業・水産業の苦境は、国民の食卓を脅かす問題に直結する。現場の切実な声に政治はどう応えるか。日本の食を支える担い手たちが注視している。
