万博開催最終日、大屋根リングから「フランス・パビリオン」など、会場を見下ろす(10月13日 大阪・関西万博 撮影:バンリ)

『大阪・関西万博』が閉幕して3ヶ月が経ち、会場だった夢洲では、撤去作業が日々行われ、パビリオンや施設について、残されるもの・解体されるもの・移築されるものが、報道され続けている。各パビリオンの設計者たちは、万博開催への風当たりが強い中で、万博に関わり始めた。建物が利用されるのは半年だけ、という期間限定のなかで、それぞれの立場で何を優先し、どんな工夫をしたのか。そして、各パビリオン建築に込められた願いとは…。『大阪・関西万博』のパビリオン建築を振り返ります。

『万博から生まれた可能性とこれからのまち・建築について』参加メンバーが集合

「NTTパビリオン」「大屋根リング」「森になる建築」「大阪ヘルスケアパビリオン」「日本館」「全体のランドスケープ」と「静けさの森」「フランス・パビリオン」に携わった設計者7名が、「日建設計」大阪オフィスで開催された『万博から生まれた可能性とこれからのまち・建築について』(11月27日開催)で万博を振り返った。そのトークの中から、3回に分けて各パビリオン建築について紹介する。【前編「大屋根リング」「森になる建築」「日本館」】  【中編 「NTTパビリオン」「大阪ヘルスケアパビリオン」】に続く、今回【後編】では、「フランス・パビリオン」「全体のランドスケープ」と「静けさの森」を取り上げる。

◆ パリの「オペラ座」のような「フランス・パビリオン」

夜の「フランス・パビリオン」外観(4月9日 大阪・関西万博 Lmaga.jp編集部撮影)

「フランス・パビリオン」の設計者として登壇したのは、「安井建築設計事務所」の仁賀亮太さん。「フランス・パビリオン」はフランスの建築デザインチームがいて、ローカルアーキテクトとして「安井建築設計事務所」が参画している。

パビリオンのテーマのひとつが「舞台」だったため、パリの「オペラ座」のような謎めいた部分を持った建築を目指した。その象徴的なデザインが、高さ17メートルの外壁を覆う白いカーテンのような布で、風になびくと中身がチラッと見えるようなエロチックさを演出。最も心配したのは台風だったそうで、風対策の検討と、台風が来たときには取り外せるように設計されていた。

万博最終日にはパビリオンのバルコニーからシャンソン歌手ソワレさんによるコンサート。感動的な『愛の賛歌』が会場内に響き、最後の瞬間まで、まさに「劇場」だった(10月13日 大阪・関西万博 Lmaga.jp編集部撮影)

2023年10月から基本設計をスタートしたため、短期間でパビリオンを創り上げなくてはならなかったそう。施工図面はほぼ書かずに、3Dデータを使い、現地調整で建物ができてしまったことも驚きだったと仁賀さん。「もうひとつのテーマが“愛の讃歌”だったので、建築を通して多くの方がフランスの愛を感じてもらえたら」と締め括った。

「フランス・パビリオン」の設計者、「安井建築設計事務所」の仁賀亮太さん

◆ 「海と島の風景」をイメージ「ランドスケープデザイン」と「静けさの森」

建築のランドスケープデザインは、敷地内の建物と自然・景観全体のデザインを指すが、万博会場のランドスケープデザインは、約155ヘクタールと広大。ランドスケープデザインディレクターとして忽那裕樹さんがディレクションを行い、それをもとに会場全体の舗装や植栽をデザイン。2年間という限られた時間の中で「森」をつくり上げるべく、「静けさの森」を設計をしたのが、「日建設計」の岩田友紀さんだ。

「メディアデー」(9日実施)に会場内で、「桜咲いてる~」「キレイ!」と声が上がっていたのは「桜咲いてる~」「キレイ!」と声が上がっていた「静けさの森」(4月9日 大阪・関西万博 Lmaga.jp編集部撮影)

会場内に島のように盛り上がった植栽エリアがところどころにあったが、これは忽那さんのスケッチ「海と島の風景」をもとに、植栽を「島」に、舗装を「海」に見立てたデザインだった。会場の中央にあるのは、一番大きな島である「静けさの森」だ。「高低差を利用した動線計画により、森の中心に行くにつれて周りの喧騒から外れて、自然の中に入り込んでいくという空間構成になっていて、自分自身と向き合える場となっています」と岩田さん。

閉幕日翌日の「静けさの森」期間中に木々たちも成長した(10月14日撮影 大阪・関西万博)

自然な森に見えるように、来場者が心地よく感じる条件などを設定し、コンピューターを用いて樹木の配置を検討。「暑くてちょっと湿っぽい、日本特有の自然感や、場の空気感が、万博に行った皆さんの心の中に残ったらいいな、と思っています」と話した。

また、普段岩田さんが携わる設計では、建物と敷地境界線の間の限られたスペースが対象となるが、今回の万博では、建物よりも敷地の方が圧倒的に広いという珍しいパターン。「ランドスケープが、個々の建物の個性的なデザインを受け止め、つなぎとめる役割ができたらよいと思った」と振り返った。

「静けさの森」について語る「日建設計」の岩田友紀さん

◆ 時間がとにかくない!今回の「万博」を経て、今後は…?

同イベントの2部では、大阪公立大学教授・建築史家の倉方俊輔さんをモデレーターに座談会もおこなわれた。そこで話し合われたのは、「万博会場の閉幕後の利用について、ビジョンを持って仮設建築を作っていたら、また違った万博になっていたのではないか」、ということ。

今回は、「設計時にリユースのことを考えて作る時間がなかった」と言い「今は、壊してしまうものをどう利用するかを考えることがメインになっている。しかし、再利用する目的で取り外した部材や材料をどう使うかを試行錯誤することにも価値があり、今回のように設計者が集まることで、いいものを作るための土台ができるのでは」という意見も。今回の万博をきっかけにできた設計者同士のつながりも、今後の建築業界に影響をもたらすのかもしれない。

取材・文・写真(一部)/太田浩子

大屋根リングから撤去作業が進む会場をのぞむ(10月14日 大阪・関西万博 Lmaga.jp編集部撮影)