(CNN) ウクライナ国内の奥深くを攻撃するため、ロシアが攻撃ドローン(無人機)に米実業家イーロン・マスク氏の衛星通信システム「スターリンク」を搭載していることが分かった。北大西洋条約機構(NATO)の領土を優に射程に収めるほど航続距離を延伸させている可能性があるという。
複数のアナリストやウクライナ当局者が明らかにした。
ウクライナ国防省の顧問を務める軍事技術専門家、セルヒー・ベスクレストノフ氏も29日、ウクライナはスターリンク端末を搭載したロシアのドローンによる攻撃「数百件」の証拠を収集したと明らかにした。
ベスクレストノフ氏は「(攻撃は)軍事目標ではなく、後方や前線の平穏な都市に向けられており、住居ビルも対象に含まれている。これは実のところ、現代の平和的な通信技術を使ったテロ行為に等しい」と指摘している。
ロシアはスターリンクを搭載することで、GPS(全地球測位システム)の無線信号を妨害してドローンを無力化するウクライナの電子防御を回避することが可能になる。
ロシアはこれまで、光ファイバーケーブルで制御されるドローンを駆使してウクライナの信号妨害を回避してきた。ただ、こうしたドローンは電子的に無力化されない一方、ケーブルの長さから来る航続距離の制約が存在する。
スターリンクを搭載したドローンは、無線式やケーブル誘導型のドローンに比べ航続距離が長く、妨害されることもない。
また、超高速通信ゆえにロシア国内からリアルタイムで操作することができ、精度の大幅な向上が可能になる。
CNNはスターリンクにコメントを求めたものの、回答を得られていない。米国の制裁のため、スターリンクはロシア国内では販売や使用ができない。

ウクライナ当局から配布された写真には、スターリンクを搭載したロシアのドローンの残骸が写っている/Serhii Beskrestnov

スターリンクの技術を利用することで、ドローンはウクライナの電子戦機器への耐性を備えている/Serhii Beskrestnov
ロシアにはこれより長い距離を飛行できる他のドローンやミサイルもあるが、はるかに高価かつ大型で、探知や撃墜もされやすい。
250~500ドル(約3万8000 ~ 7万7000円)の「スターリンクミニ」を搭載した簡易型のドローンなら、数万ドルする高性能モデルと同等の効果を、はるかに低コストで実現できる。
ベスクレストノフ氏はBM35ドローンによるドニプロへの攻撃の写真を公開し、スターリンクを搭載したドローンは最大500キロ飛行できると指摘した。
ウクライナ東部で27日に発生した民間列車への攻撃についても、電子防御をかいくぐっており、操縦者が移動中の列車の中心部に誘導できたことから、メッシュ無線モデムやスターリンクを搭載したシャヘドドローンを使って実施された可能性が高いとの見方を示した。
これに先立ちベスクレストノフ氏は今月、ウクライナ公共放送ススピーリネの取材に対し、チェルニヒウ州のエネルギー施設への最近の攻撃でスターリンクを搭載したモルニヤドローンの群れが使用されたと述べていた。
モルニヤドローンは合板製の非常にシンプルかつ安価な機体で、航続距離は数十キロ。
スターリンクを搭載することで、これらのドローンの3分の1が目標に命中したという。
ベスクレストノフ氏は「(こうしたドローンを)電子戦で封じ込めることは不可能だ。対空ドローンで発見して、物理的に撃墜するしかない」と指摘する。
ベスクレストノフ氏が29日に明らかにしたところによると、前線から約50キロ離れたパブログラード近郊でも、夜間にスターリンク搭載型のモルニヤドローンが使用されたという。
