2026/01/23 13:15

工藤宗介=技術ライター

事故概要

事故概要

(出所:さくら風力、日立パワーソリューションズによる報告書)

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ブレード破損の推定原因

ブレード破損の推定原因

(出所:さくら風力、日立パワーソリューションズによる報告書)

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事故当時の様子。ブレードが折損して落下した

事故当時の様子。ブレードが折損して落下した

(出所:日経BP)

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 経済産業省は1月21日に開催した有識者会議(電力安全小委員会 電気設備自然災害等対策ワーキンググループ)において、秋田市で2025年5月2日に発生した「新屋浜風力発電所」の風車ブレード(羽根)落下事故の対応状況について報告した。

 同発電所は、出力1.99MWの独エネルコン製風車1基から構成され、支柱の高さは約78m、ローター直径は約82m。2009年11月に竣工し、2010年3月に運転を開始した。事業主体は新エネルギー技術研究所(東京都千代田区)の子会社・さくら風力、風車の施工・メンテナンスは日立パワーソリューションズが担当していた。

 事故の発生推定時刻は午前10時7〜8分ごろ。ブレード3枚のうち1枚が先端から約30mで折損し、破片は北西にかけて最大約250mの範囲に広く飛散した。近くには81歳男性が倒れており、その後死亡が確認された。

 経産省は、さくら風力に原因究明や再発防止などを求めるとともに、同型風車の設置者に日立パワーソリューションズが進める緊急点検への協力を要請した。さくら風力は、日立パワーソリューションズなどと事故調査委員会を立ち上げ、原因究明と再発防止策を検討してきた。

 事故原因は、ブレードに設置されていた中間レセプターとダウンコンダクターをつなぐC形金属が取り外される前の落雷で損傷を受け、損傷が拡大し折損に至ったと推定される。ブレード内部のCFRP製スパーキャップ部と、ダウンコンダクターおよびC形金属が、電気的に接続されていない構造だったため、被雷時に大きな電位差が生じて放電が発生し損傷したとみられる。

 また、損傷箇所が点検の範囲外だったため、保守会社はブレード点検で被雷による損傷や積層部の剥がれが拡大・進展していることを見つけ出せず、損傷が修繕されないまま長期運用により拡大し、ブレード強度が低下して折損に至ったとしている。

 今後の対応については、さくら風力は同発電所を可及的速やかに撤去し事業を廃止する方針。日立パワーソリューションズは、事故機と同じCFRPブレードを持つ同型風車に落雷検出装置を新設し、通常検出する電荷量と電流値に加え、電流変化率dl/dtの検知機能を追加し、落雷検出能力を強化する。また落雷で風車が停止した後は、ブレードの非破壊検査を行い、損傷の有無を確認する。メーカーと情報共有を密に行う体制を確立し、未経験な事象や不具合事象に対して協力して解決を試みるという。

 このほか、事故原因などの報告を踏まえた国の対応案を示した。事故原因と推定された構造と同じ構造を持つ風車の調査および安全確保に向けた対応を検討する。また、雷撃の保護に関するブレード内部の構造について「発電用風力設備技術基準の解釈」(20140328商局第1号)、ブレード内部の検査範囲として「電気事業法施行規則第94条の3第1号及び第2号に定める定期自主検査の方法の解釈」(20230310保局第2号)の記載の明確化を検討する。さらに、ブレードの複合材内部の損傷を点検する最適な技術的方法の検討、業界団体などと協力して知見の横展開・情報共有を挙げた。