コラム:トランプ氏の化石燃料戦略、中国を利する大きな賭け

トランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席。2025年10月、韓国の釜山で撮影。REUTERS/Evelyn Hockstein

[ロンドン 14日 ロイター] – 安価な石油と天然ガスで米国の産業を再び活性化させようとしているトランプ大統領の試みは、その成否にかかわらず、中国が世界有数の低炭素技術大国となる状況を招きかねない大きな賭けだ。

こうした対照的なエネルギー戦略は根深い地政学的分断を反映しており、今後数十年にわたり、世界経済をけん引する二大経済大国間の覇権争いを左右することになるだろう。

トランプ氏は公然と化石燃料を重視し、再生可能エネルギーに否定的な姿勢を示している。電気自動車(EV)や低炭素技術に対する政府支援を削減する一方で、石油掘削を認める範囲を拡大し、環境規制を緩和してきた。

米国は最近、ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束し、同国の石油資源の開発を米企業に促した。政権が米経済を化石燃料主導の将来へと方向付けようとしていることを、かつてないほど明確に示すものだ。石油輸出国機構(OPEC)によると、ベネズエラの確認埋蔵量は世界最大の3030億バレルに上るという。

米政権はこうした野心を、昨年12月に発表した国家安全保障戦略に明記した。この戦略では、豊富な米国の石油、ガス、石炭、そして核資源が「国内製造業の再活性化」を後押しし、人工知能(AI)などの技術における米国の優位性維持につながると主張している。

世界最大の経済大国であり、最大の石油消費国でもある米国の昨年における石油消費量は日量約2060万バレルに達したもようで、世界需要の約5分の1を占めた計算になる。10年にわたるシェールオイルブームを経て、現在では石油・ガスの最大の生産国でもある。

最大の液化天然ガス(LNG)輸出国でもあり、昨年は世界の取引高のおよそ4分の1に当たる1億1000万トン超を出荷した。

安価で大量に確保できることを考えると、米国が化石燃料への依存を強めるのは理解できる。だが、戦略としては近視眼的かもしれない。理由は気候変動への影響だけではない。米政府はエネルギーの将来の主導権を、最大の経済的ライバルに明け渡そうとしているように見える。

<中国の自立>

米国が前世紀型の産業モデルへ回帰しようとする動きは、中国政府が21世紀の経済発展の基盤となっていた化石燃料への依存を断ち切ろうとする取り組みとは非常に対照的だ。

中国の最新の5カ年計画はエネルギー、重要鉱物、半導体やAIといった先端技術における自立を目指す姿勢を強調している。この野心的な転換を成功させるため、同国は経済全体の電化を推進し、「電気国家」を支える産業を育成してきた。その結果、太陽光発電、バッテリー、EV分野において比類なき世界的リーダーとなった。

EVは昨年、中国国内の乗用車販売の半分以上を占め、中国メーカーは世界のEVの70%超を生産した。電動トラックの国内販売も増加しており、ディーゼル車からの転換が着実に進んでいる。

再生可能エネルギーの導入は猛スピードで進められている。政府統計によると、昨年新たに導入された太陽光および風力発電容量は500ギガワット(GW)を超え、年間では最大の増設規模となった。 国際エネルギー機関(IEA)は、昨年における世界の太陽光・風力の新規導入量の3分の2超を中国が占めたとみている。

ただ、こうした大規模な取り組みにもかかわらず、中国は依然として外国からのエネルギー供給に大きく依存している。分析会社Kplerのデータによると、中国の石油輸入量は昨年には日量約1040万バレルと、10年前の日量600万バレルから大幅に増加。石油輸入は依然として国内消費量の60%以上を占める。

EV普及に伴って輸入は徐々に減少すると見込まれているが、外国産石油への強い依存は引き続き中国の「アキレス腱」であり、同国政府にとって戦略的なエネルギー転換が急務であることを示している。

皮肉なことに、米国によるベネズエラへの軍事介入やイランに対する軍事行動のほのめかしは、中国のエネルギー転換をむしろ加速させかねない。ベネズエラとイランは合わせて中国の石油需要の7%以上を供給するが、米国は供給を混乱させる姿勢をにじませており、結果として中国の戦略をさらに後押しする可能性が高い。

<勝つのは誰か>

次の米政権でトランプ氏の政策路線が変更される可能性はある。だが仮にそうなったとしても、急激な転換は、新たなエネルギー覇権を巡る競争で中国に追いつこうとする米国の力をむしろ削ぐかもしれない。

化石燃料を中心に据える戦略には、「資源は無尽蔵ではない」という単純な事実を含めてほかのリスクもある。枯渇していく油田やガス田には継続的な再投資が必要となるため、価格変動のリスクが高まる。

再生可能エネルギーは多額の先行投資を必要とするほか、日照量や風が弱い時期をカバーするため、ガスや石炭を燃料とするバックアップシステムも必要であり、価格変動を引き起こし得る。ただ、化石燃料に比べてはるかに大きな潜在的成長力と、技術革新の恩恵を受けられる可能性を秘めている。

おそらく最も重要なのは、政府が特定のエネルギー源を直接支援し、新技術に反対する形で介入することは、「勝者と敗者の決定は市場に委ねる」という米国の長年の信条から大きく逸脱している点だ。この姿勢は歴史的にコストの低減と技術革新の加速をもたらし、米国を世界の覇権国家に押し上げてきた。もしトランプ氏の賭けが成功しなければ、状況は一変するかもしれない。

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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

Ron Bousso

Ron is the Reuters Energy Columnist. He offers commentary on global energy markets and their intersection with geopolitics, the economy and every day life. From oil and gas to solar and wind power, the world’s growing demand for energy is shaping governments’ efforts to expand their economies while the world also seeks to decarbonize.
Prior to that, Ron was Oil and Gas Corporates Correspondent at Reuters since 2014, covering the world’s top oil and gas companies and their transition into low carbon energy. He has broken major stories on companies including Shell, BP, Chevron and Exxon. He also looks at the physical oil markets with a focus on European refining.