2026年1月13日(火)
太田昌克の視点
『太田昌克の視点』
力による現状変更 台湾にも深刻な含意
2026年1月9日(金)放送分より
年明け早々、米軍のベネズエラ攻撃、マドゥ-ロ大統領夫妻拘束という驚愕の事件が起きた。これは武力を背景にした「力による現状変更」ではないか。ウクライナ戦争や欧州安全保障、そして少なからず台湾情勢にも深刻な含意がある。
まずウクライナだが、当面はベネズエラの混乱でトランプ大統領の関心は中南米・ベネズエラに向かい、ウクライナ・欧州方面への注意がお留守になる。いま、英仏などがウクライナの「安全の保証」を条件とした和平を構想しているが、米国は全面支援というより「半身」のサポートになってしまうという心配がある。
年末に取材でロシアと国境を接するバルト三国のエストニアを訪問し、国境の町ナルバを訪れた。ナルバに入る直前、エストニア国防省の担当者から「携帯は機内モードに」と注意された。なぜかというと「ロシアがあなたの携帯をハッキングするかもしれない」との説明だった。到着すると防空訓練のサイレンが鳴り響き、まさにハッキングによるサイバー・情報戦に備える「前線国家」の現実を見た。
エストニアとロシアの国境に架かるわずか150メートルほどの「フレンドシップ橋」を挟んで、双方に親戚が住んでいる住民も少なくない。現在、車両は通行止めで有刺鉄線も張られているが、エストニア当局の話だと1日平均1600人が橋の端にある通路を歩いて行き来している。ウクライナを支援するエストニアは人道上の理由でこうした人の往来も認めながら、英仏軍を自国領内に駐留させて軍事力を増強し、現在の戦争と未来の戦争に「二重の備え」をしている。そんな緊張の現場を目の当たりにした。
それでは、米軍のベネズエラ攻撃は台湾にも影響があるのか?もちろんある。
中国が今回の軍事侵攻とマドゥ-ロ氏拘束から学ぶ点が多いのではないだろうか。ドローンも使った空爆で相手の対空防衛システムを麻痺させ制空権を奪い、少数精鋭部隊で瞬時に相手国トップを拉致、指導者の首をすげ替える「斬首作戦」が今回のベネズエラ攻撃の本質だ。
さらに「法の支配」を重視してきた米国自らがむき出しの武力で「力による現状変更」をしてしまった。ウクライナの現状を力でねじ曲げたロシア、台湾をにらむ中国は米国の失策にほくそ笑んでいるだろう。2026年は国際政治、国際安全保障にとって波乱の年になる。
※このコーナーでは、BS11の報道番組で放送した内容を元に記事にして掲載しています。
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太田昌克の視点
番組キャスターで共同通信編集委員、ジャーナリストの太田昌克が取材したネタを中心に、独自視線で語るコーナー。毎月第2・第4金曜日放送中。
番組サイト:https://www.bs11.jp/news/houdou-live-insideout/
