2026年1月12日 午前7時30分
【論説】若狭三方五湖観光協会(若狭町)などによる地域独自のオンライン旅行代理店(OTA)の専用サイト「漁師の宿帖」が本格稼働し、町内漁師民宿の宿泊予約を受け付けている。外部OTAに流れていた手数料が町の観光振興に役立てられるほか、漁師民宿の業務の効率化が期待できる。家族経営による人手不足や高齢化が指摘される中で、地元観光産業の持続的な発展につながるか注目したい。
若狭町の漁師民宿は63軒。5年ごとに実施する農林水産省の統計調査・漁業センサス(2023年)では全国最多で、地元観光産業の大きな柱となっている。
地域OTAの専用サイトの立ち上げは19年のコロナ禍前から検討されていた。全国的に宿泊施設のオンライン予約が進む中、家族経営が中心の漁師民宿の多くは独自対応に限界があったためだ。観光協会のほか、町や福井銀行でつくるコンソーシアムが観光庁のDX推進による地域活性化モデル実証事業の採択を受けた。
現在、地域OTAの専用サイトでは約20軒の漁師民宿が紹介されている。「宿から港まで徒歩1分」のフレーズとともに、船上で若狭湾の魚を水揚げする漁師や世久見漁港で漁船の帰りを待つ家族らの様子が流れ、漁師民宿の魅力を伝える。
地域OTAの強みは水揚げの情報が観光協会にダイレクトに入ることにある。小回りがきき、旬の食材を使った料理メニューなどを専用のサイトですぐに発信できる。観光協会が民宿に伴走しながら誘客に取り組めるというわけだ。
民宿も予約管理システムの導入によって手書きの領収書づくりなどが不要になり、業務の効率化が図れる。若狭町の漁師民宿は全国最多とはいえ、1980年代末の約150軒をピークに減少傾向となっている。人手不足で携帯電話を手に船上で予約を受け付ける漁師もいるほどだ。
漁師民宿は、海水浴や釣り、若狭の新鮮な海の幸を同時に楽しめる観光の拠点として発展してきた。常連客も多いが、予約管理システムによって、観光協会が宿泊客の流入経路を一元管理し、誘客の宣伝活動にピンポイントで取り組むことも可能になる。
今回の実証事業には県内自治体からの問い合わせも少なくない。漁師民宿は若狭町以外にも多く、都道府県別にみても全国最多となっている。将来的には連携によるPRも考えられるのではないだろうか。福井の文化として漁師民宿の盛り上がりを期待したい。
