
肝臓オルガノイドの研究について話す武部貴則教授=東京都文京区で
昨年は、ノーベル賞を受賞した日本人の科学者2人が「いま若手研究者の支援が非常に重要」と訴えました。今年、みんなの科学面では、さらなる飛躍が期待される若手研究者を紹介するインタビュー企画を始めます。タイトルは「イノベーター <革新者>」。研究の道を切り開く思いや、20年後の世界の展望などを語ってもらいます。初回は「肝臓オルガノイド(ミニ臓器)」や「腸呼吸」などの研究成果で注目を集める武部貴則・東京科学大・大阪大教授(39)です。 (増井のぞみ)
-ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)から2013年に血管などを持つ肝臓のミニ臓器、19年には肝臓、胆管、膵臓(すいぞう)などがつながったミニ多臓器を、いずれも世界で初めて作製したと報告しました。
大学2年生のとき、iPS細胞が初めて作製され、再生医療が(政府によって)すごく後押しされました。高校時代、近しい友人の父親が生体肝臓移植を受けた後に亡くなるということがあり、もともと臓器移植に関心を持っていました。肝臓の細胞だけではなくて血管や周辺の細胞も含めて、立体的で複雑な構造をつくりたいとずっと思っていたんです。

培養により形成されたミニ多臓器。左は顕微鏡写真。右は各臓器を色分けした写真で、肝臓・胆管は赤と水色、膵臓は黄色、腸は緑色=シンシナティ小児病院提供
細胞同士がくっつく、あるいは集まって綱引きのように引っ張り合う力が発揮しやすい環境を与えると、細胞が自分で立体化して臓器の一部の構造を再現する現象を突き止めました。この研究をさらに発展させ、多臓器を連携させながら再現することにしました。
-ミニ臓器研究の現状は。
昨年10月、肝臓オルガノイドの臨床応用に向け、肝機能を補助するための体外循環装置を世界で初めて開発したと発表しました。ラットを使って検証した結果、生存率を大幅に改善できることがわかったのです。オルガノイドは直径0・1ミリほどで、量産しやすい特長があります。

肝臓オルガノイドを用いた体外循環装置=大阪大・東京科学大提供
これが何百個も入った「人工イクラ」を体外のカートリッジに満たして、そこに血液を循環させます。この装置で救える患者さんの規模は結構大きい。急激に肝機能が低下する疾患の人が、2週間から1カ月のヤマ場を越えるために使うことに適していると思います。
一方、長い時間、肝機能を完全に補うことが必要なケースに関しては、より複雑なつくりの臓器モデルで治療しなくてはいけません。それは、まだ基礎的な研究開発が必要です。肝臓、胆管、膵臓の初期的なものはできるんですけど、臓器がもっと大きく成長していくために何が欠けているのかなど、まだまだ疑問が残っています。
-ブタなどの哺乳類がお尻でも呼吸できる「腸呼吸」の発見で、24年にイグ・ノーベル賞の生理学賞を受賞しました。
こういう全く新しい概念を世の中の人々に知ってもらう意味で、すごくいい機会になりました。肺の呼吸の問題を解決できないかと、大学院生と一緒に生物図鑑を見て、ドジョウなどの魚の腸呼吸が「一番面白いじゃん」と始めた研究です。

健康な成人男性を対象に、直腸から液体を投与した臨床試験のイメージ=小高明日香さん作成
健康な成人…
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