ライオン(群馬サファリパーク 群馬県富岡市) 昨年誕生の3頭 百獣の王へ歩む 相性見極め観察

仲間とくつろぐ(手前左から)キール、スコッチ、ライ。3頭の後脚の一部に黒い模様が残っている(群馬サファリパーク提供)

<2026 飼育員の推し!>=⑥

 2025年の漢字が「熊」だったように、人間と動物の関係を考えざるを得なかった昨年。今年こそは、穏やかな心で動物たちの姿に癒やされるときを過ごしたい。首都圏各地の動物園・飼育施設で、飼育員が「イチ推し」する動物が登場し、皆さんをお招きします。

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 「2けたを数えるライオンの赤ちゃんを世話してきたけれど、この3頭は自分にとって特別なんです」。群馬サファリパーク(群馬県富岡市)のライオン・トラ担当の飼育員山本剛さん(38)は、そう言って目を細めた。

 3頭は昨年5月30日に生まれた。偶然にも自身と同じ誕生日。施設でのライオンの赤ちゃん誕生は3年ぶりで、スタッフは歓喜に沸いた。父のラサラス(7)と母のベルモット(9)の子。母にちなんで酒に関連するライ(雄)、スコッチ(同)、キール(雌)と名付けられた。

 ベルモットにとって3回目の出産。前日の5月29日、過去の経験から「予定日より早いけれど、明日あたり生まれるかも」と他のスタッフと話していた。予感は的中した。

 ライオンの繁殖には日々の観察が欠かせない。「それぞれ性格が異なり、どの雄雌ならうまくいくかの見極めが肝心なんです」。交尾から約110日で出産する。予定日の約30日前には雌の腹部が目立つようになり、獣舎の産室で過ごすことになる。

 出産前後で最も気を使うのは「ストレスを与えず、安心できる環境をつくること」。産室の柵に高さ1メートル余の板を立てて目隠しし、遠くからのぞいて様子を確認。出産から5日後、初めて3頭に近づき、体重測定をした。かけた時間はわずか数分だった。

 ベルモットは、毛づくろいや排せつ物の処理などかいがいしくわが子の世話をした。飼育員は、母乳から肉への餌の切り替えなどがうまくいくように手助けをする。ただ、昨夏の猛暑は動物も苦しめた。エアコンがない獣舎は気温が40度近くになることもあり、ファンを増設して何とかしのいだ。3頭ともすくすくと成長し、尾を含まない体長は約1メートルに。子どもの特徴である黒い模様は今も後脚の一部に残っている。

 威厳あふれる百獣の王も赤ちゃんのころはかわいらしい。山本さんは「こんな体験ができるなんて」と笑顔ではしゃぐ来園者の姿が忘れられない。昨年6月下旬から約1カ月間実施した3頭との「ふれあい体験」での出来事だ。入社以来、初めての試み。来園者は軽いタッチのみできる体験だったが、もちろん成獣になってからは無理なので、大人気となった。

 「3頭は来園者との架け橋になってくれた」。そんな思いを強くしている。(服部展和)

<群馬サファリパーク> 群馬県富岡市岡本1。動物約100種類、千匹を飼育。車やバスで巡るサファリエリアにはライオン29頭をはじめ、ホワイトタイガーやスマトラゾウなどがいる。入園料金は高校生以上3200円、3歳〜中学生1700円など。エサやり体験バス(入園料金+1500円〜)や獣舎見学ツアー(同2600円)などさまざまなプランも楽しめる。水曜休園。電0274(64)2111。