
4人が襲われた現場(C)日刊ゲンダイ
【2025年 あの事件・騒動の今】
クマによる人身被害が過去最悪となった2025年、奥羽山脈の麓、秋田県東成瀬村の人口2000人ほどの山あいの集落で、男女4人が襲われる悲劇が発生。住民の佐々木喜行さん(38)が犠牲になった。
10月24日午前11時ごろ、自宅2階の洗濯物干し場で「助けて」という悲鳴を聞いた佐々木さんの母親が喜行さんを呼び、2人で家の外に出た。10メートルほど先の畑付近で70代の男女2人が倒れ、そばに体長120センチの雌グマがいるのを発見。喜行さんは母親に「家の中にいて」と言って、ホークと呼ばれる4本爪の農作業具を手にして現場に向かった。家の中にいた大工の父親、秀雄さん(65)も息子の後を追った。
母親から連絡を受けた役場職員と消防隊員が現場に駆け付けると、男女4人が血まみれになって倒れていた。
「4人とも顔面を爪でえぐられ、特に喜行さんは執拗に攻撃されたようで、原形をとどめていなかった。死因は顔面損傷による低酸素脳症です。秀雄さんも瀕死の状態だったが、何とか一命は取り留めた」(捜査関係者)
4人を知る80代の近隣女性が当時を振り返る。
「ご夫婦の畑はウチと隣り合わせで、もともと奥さんの実家があったところです。冬支度のために、夫婦で隣町から来ていました。クマに襲われる30分ほど前、奥さんと『久しぶりだね』なんて話をしたところだった。長いこと住んでいるが、こんなことは初めて。外に出るのが怖い」
秀雄さんは普段県外に出稼ぎに行き、当日は農作業のため、自宅に戻っていた。喜行さんは父親の留守を預かり、家の手伝いをしていた。
「素直でやさしい子でね。若いから力があるし、雪かきなんかを手伝ってもらった。それでもクマにはかなわなかったんだね。行かなきゃよかったのにって思っても、あの子にしたら、そうはいかなかったんだろうね。助けを求められればね」(近隣女性)
事故以降、村全体が深い悲しみに包まれている。
