
本映画祭は、世界各国の映画祭で高い評価を受けた最新作に加え、公募作品を石垣島に集め、映画を通して世界に触れ、考え、対話する場としての国際文化交流と、未来を担う若い世代への文化的刺激を目的としている。
石垣島には現在、常設の映画館や大学がなく、離島という環境から国際的な文化交流の機会も限られている。本映画祭は、島の子どもたちや地域の人々とともに、ゼロから映画文化を育て、映画を窓に、世界とつながる場をつくることを目指している。
この度、発表された第一弾ラインナップには、日本、中国、ウクライナ、アメリカ、イランなど、世界各地から注目作を招聘し、カンヌ国際映画祭、釜山国際映画祭、トロント国際映画祭など、世界を代表する映画祭で上映・受賞歴を持つ作品が集まった。上映にあわせて国内外の監督が来島し、上映後のトークやQ&A、学生との交流プログラムも実施される。第1回開催は、コンペティション部門は設けられないが、上映作品全体(25-30作品)を対象に、地域企業の協賛による「市民賞」(賞金10万円)が授与される。
※ 第二弾ラインナップは1月下旬に発表予定。
また、八重山諸島の学生支援を行う東京大学Diligentと協働し、国際社会が直面する課題への理解を深めることを目的とした企画「Impact from the Ishigaki Island ―離島から世界を考える―」が、今後毎年実施される。人権、難民、ジェンダー、環境といった国際的課題を扱う、その年の最も重要だと感じた作品をセレクトし、島の学生たちが作品の背景や社会的文脈をリサーチし発表する。記念すべき第1回では、世界最大のドキュメンタリー映画祭である2025年アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭にて11月にワールドプレミアされ、最優秀作品賞を受賞したドキュメンタリー映画『少女は月夜に夢をみる』が上映される。本作は、2019年に岩波ホールで公開した、イラン映画『少女は夜明けに夢をみる』のメヘルダード・オスコウイ監督と、映画の被写体でもある、アフガニスタン出身の難民の少女ソラヤによる共同監督作品。作品は、ソラヤ自らが携帯電話で撮影した素材をもとに作った、難民少女の戦いと自立を描いた作品である。上映後には、学生による成果物の発表と、来島する監督を交えたディスカッションが行われる。さらに、次世代を担う小学生に向けて、ゲーテ・インスティトゥート東京との協働による特別無料上映会も開催される。ドイツの女性映画作家ロッテ・ライニガー監督(1899–1981)による切り絵アニメーションの短編作品を上映し、ゲーテ・インスティトゥート東京の文化担当者が、映画の話だけでなく、ドイツや海外の文化について、子どもたちに関心をもってもらえるよう分かりやすく紹介する。
主催者コメント
6月に拠点を石垣島に移し、日本最南端の映画配給会社サニーフィルムとして活動しています。かねてより憧れていた豊年祭やアンガマなど島の伝統行事に触れるなかで、映画祭も、島の祭りのように、年月をかけて島の文化の一つにしたいと考えています。会場は、市民会館を中心に、あまくま座、CITY JACKなど、島の個性豊かな空間を舞台とします。来島者には島の魅力を、島の方には地域の価値を再発見していただける場を目指します。将来的には、国内の劇場関係者やバイヤー 、特にこれから映画配給・上映活動・地方映画祭立ち上げに挑戦したい若い世代を支援するマーケット機能も育て、石垣島を映画産業の新たな拠点の一つにし発展させていく構想を描いいます。また、本映画祭の開催と継続に向けて、2026年1月より全国に向けたクラウドファンディングの実施も予定しています。
第一弾作品情報
『ルオムに黄昏て』

ジャパンプレミア/監督来島決定
チャン・リュル監督|中国|2025年|釜山国際映画祭最優秀作品
3年前に姿を消した恋人ワンから、「ルオムに黄昏て」と記された一枚のハガキが届く。女性バイはそれを手に、中国・成都近郊にある古都ルオムを訪れる。見知らぬ町を彷徨いながら、彼女は消えた恋人の痕跡を追い、人々の人生が静かに交差する瞬間に立ち会っていく。登場人物たちの孤独や過去の痛みは、温かなユーモアを帯びた筆致で描かれ、やがて真実に辿り着いたバイが下す最後の決断が、深い余韻を残す。東アジア映画を代表する巨匠、チャン・リュル監督による最新作。

『猫を放つ』

沖縄プレミア/監督来島決定
志萱大輔監督|日本|2025年|釜山国際映画祭コンペティション部門正式出品、東京FiLMEX正式出品
音楽家のモリは、写真家として活動する妻マイコとの距離に悩みながら日々を過ごしている。ある日、彼はかつての恋人アサコと偶然再会し、ふたりは長い散歩を重ねる中で、二人にだけ許された時間の中を行き交うように、近づいては、また離れていく。未熟さゆえの痛みや、まだ形を持たない未来に漂うモラトリアムの感情が静かに滲み出し、出会いと別れ、心のすれ違いの繊細な軌跡が誠実に描かれる。自らの行き先に迷う若い世代の心に深く響く、新進気鋭・志萱大輔監督による長編デビュー作。

『佐藤忠男、映画の旅』

監督来島決定
寺崎みずほ監督|日本|2025年|東京国際映画祭アジアの未来部門・特別オープニング作品
日本映画史を体系化し、60年にわたり評論活動を続けた映画批評界の巨人・佐藤忠男。独学から歩み始めたその道のりは、アジア映画の発掘と紹介に生涯を捧げ、韓国、フランス、モンゴル、ベトナムなどから勲章を授与されるに至った、唯一無二の存在である。本作は、91歳で逝去した佐藤が、映画を通して見つめ続けた世界の行方を辿るドキュメンタリー。社会派ドキュメンタリー会社、グループ現代所属の若手監督・寺崎みずほによる長編デビュー作である。

『ミリタントロポス』
Screenshot
アジアンプレミア/監督来島決定
アリーナ・ゴルロヴァ監督|ウクライナ|2025年|カンヌ国際映画祭監督週間正式出品
ロシアによるウクライナ侵攻がもたらした、断片化された現実を通して、人間の存在そのものを見つめる。戦争によって日常を奪われ故郷を去る者、大切な人を失う者、祖国に留まり抵抗を続ける者。戦禍を生きる人々にカメラが寄り添い、それぞれの断片が緻密に重ね合わされ映し出す戦争の現実。呑み込むように美しい映像と、過酷な現実が交錯し、観る者を圧倒する強烈な映画体験を生み出す。ウクライナ南部ザポリージャ出身の新進気鋭、アリーナ・ゴルロヴァ監督による長編ドキュメンタリー。

『パウワウ・ピープル』
Screenshot
アジアンプレミア/監督来島なし
スカイ・ホピンカ監督|アメリカ|2025年トロント国際映画祭正式出品
歌と踊りによってアイデンティティを表現するパウワウは、ネイティブ・アメリカンのコミュニティにとって欠かすことのできない祝祭である。映画監督でありメディア・アーティストでもあるスカイ・ホピンカは、自らのルーツに根ざした視点から、この文化を外側ではなく内側から記録する。司会者のルーベン、歌い手のフレディ、そして、多様化する現代パウワウを象徴する、ノンバイナリーの若きダンサーのジェイミーなど個性が揃う。ハーバード大学で教鞭を執るホピンカ監督による長編ドキュメンタリー第2作。

『少女は月夜に夢をみる』

アジアンプレミア/監督来島交渉中
メヘルダード・オスコウイ、ソラヤ共同監督|イラン|2025年アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭最優秀作品
アフガニスタンの少女ソラヤは5歳で父を亡くし、叔父のもとで暮らすようになる。幼少期から暴力にさらされ、8歳で母と引き離され、やがてそれが児童結婚であったことを知る。本作は、イランで難民生活を送る15歳のソラヤが、8年間会えずにいる母のいるオーストリアを目指す5年間の道のりを、彼女自身の携帯電話で記録したドキュメンタリーである。深刻な人権問題に直面する少女の姿を通して、現代社会の現実を鋭く映し出す。岩波ホールで劇場公開された『少女は夜明けに夢をみる』のメヘルダード・オスコウイ監督との共同監督作品。

主催者コメント(第一弾ラインナップとゲスト招聘について)
『ルオムに黄昏て』のチャン・リュル監督は、現在の東アジアを代表する最も重要な映画作家の一人です。韓国、中国、日本(福岡)を拠点に、国境を越えて移動しながら映画制作を続けている点が監督の大きな特徴です。今回、初めて石垣島に来島されますが、監督が好む様な小道や小さな酒場を紹介させていただき、将来、八重山を舞台とした映画を制作していただけたらという願いを込めてご招待しました。また、現在の日中関係を鑑みて来島の意思を確認した際、チャン・リュル監督は次のように語ってくれました。――このような時代だからこそ、映画の価値はとりわけ重要だと思います。芸術のあらゆる分野がそうであるように、映画は政治によって引き裂かれたものを縫い直し、人間へのより深い理解を示すことで、世界が前に進む手助けをします。アジア外交の最前線でもある石垣で、チャン・リュル監督を迎えることは、文化的にとても大きな意味を持つと考えています。
『猫を放つ』の志萱大輔監督とは、昨年の釜山国際映画祭のマーケットで出会い、意気投合し、長く石垣島と関係を築いていける若い監督だと感じ、お声がけをしました。東京フィルメックスの上映後トークで語られていた「シナリオは役者やロケーションから生まれる」という言葉が印象的で、初めて訪れる石垣の風土や空気に触れることで、新たな物語が生まれることを期待しています。
『少女は月夜に夢をみる』は、11月にアムステルダムで開催されたIDFA(アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭)にて上映され、最高賞を受賞した作品です。15、6歳の少女が抱く強い信念と闘いの姿は、ぜひ島の同世代の子どもたちに観てもらいたいと考え、アジアプレミア作品として招待しました。監督のメヘルダード・オスコウイ氏とは、 2019年にアムステルダムで出会っていて、本年度のIDFAで直接映画祭の構想を伝え、スカウトしました。
『ミリタントロポス』のアリーナ・ゴルロヴァ監督は、2021年に発表された前作から注目してきたウクライナの若き先鋭的なドキュメンタリー作家です。戦禍のウクライナを記録した作品を、現在の緊迫した国際情勢の中で上映し、さらに監督本人を招いて自国の戦争について語ってもらうことは、「世界平和を願う都市」である石垣市にとって大きな意味を持つと信じています。
また、同じく2021年頃から追いかけてきたアメリカの映画作家、スカイ・ホピンカ監督の最新作『パウワウ・ピープル』の上映も決定しました。残念ながら監督の来日はかないませんでした。ネイティヴ・アメリカンとしての自身のルーツや文化を内側から記録するホピンカ監督の作品は、伝統文化を受け継いできた石垣・八重山諸島とも強い共鳴をもたらすと感じています。
最後に、すでに劇場公開されている作品ではありますが、『佐藤忠男 映画の旅』も招待しました。監督の寺崎みずほさんとは、約15年前、社会派ドキュメンタリー制作集団・グループ現代で同じ時間を過ごした仲間です。若い頃、「今、記録しなければ、いずれできなくなる」と語り合っていた中で、グループ現代の創始者・小泉修吉氏(1933-2014)が急逝しました。その後、寺崎監督が同じ世代を生きた映画評論家、佐藤忠男先生(1930-2022)を題材に、初の劇場公開作品としてドキュメンタリーを完成させたことに、彼女の強い信念を感じました。そうした長年の縁もあり、ぜひ石垣島でこの作品を紹介したいという思いから、お声がけをしました。
特別プログラム
① 第1回 Impact from the Ishigaki Island ―離島から世界を考える―


島の学生と、八重山諸島の教育支援を進める東京大学Diligentが協働し、その年において特に重要とされる国際的な社会課題(人権、環境、ジェンダー、移民・難民問題など)をテーマとした作品を1作選び、上映します。対象となるのは、社会的な関心と速やかな支援を必要としている世界の現実を描いた映画。上映後には、本作の監督を交え、島の学生たちによる作品の背景や社会的課題についての解説とディスカッションを行う。第1回に選出された作品は、イランで難民生活を送るアフガニスタン出身の15歳の少女ソラヤの自立を描いたドキュメンタリー映画『少女は月夜に夢をみる』。アフガニスタンの少女たちが直面する児童結婚、日常的な家庭内暴力、そして余儀なくされる難民生活という現実を、島の高校生たちと同世代の少女の視点から映し出す。学生たちのプレゼンテーション後には、映画の被写体であるソラヤを直接支援するため募金活動を実施する(会場設置、QRコード、郵便局振り込み用紙配布)。
② ロッテ・ライニガー監督の切り絵アニメーション
石垣島と八重山の子どもたちに向けて、現存する最古の長編アニメーション映画とされる『アクメッド王子の冒険』(1926年公開)を手がけたドイツの映画作家、ロッテ・ライニガー監督(1889年6月2日–1981年6月19日)による短編切り絵アニメーション作品を上映し、その魅力を紹介する特別プログラムを実施する。解説は、ゲーテ・インスティトゥート東京の文化担当、ウルリケ・クラウトハイム氏が務める。ミルク神やアンガマー、アダンや椰子の葉など、豊かなモチーフに満ちた石垣・八重山の文化と、ライニガー作品の繊細で詩的な切り絵表現は強い共鳴を生み出す。現存する最古の長編アニメーションを生み出した作家の切り絵アニメーションとの出会いを通して、島の子どもたちに新たな想像力と創造のインスピレーションを届けるプログラムである。


第1回 島んちゅぬ映画祭(読み:しまんちゅのえいがさい)開催概要
日程:2026年3月20日(金・祝)から22日(日)
会場:市民会館、あまくま座、CITY JACK ほか
主催:株式会社サニーフィルム
映画祭Instagram:https://www.instagram.com/siff.ishigaki/(外部サイト)
(オフィシャル素材提供)
