16年ぶりに東京から故郷に帰ってきた女性が、奈良の魅力やあるあるを、ギャグを交えて紹介する漫画「出戻りて、奈良。シカ県民やりなおし日記」(ホーム社)を出版した。クスッと笑いを誘う内容が注目を集めている。奈良市在住の漫画家で、イラストレーターの
蟹(かに)
めんまさんは「静かな一面だけではない奈良を面白おかしく読んで知ってもらいたい」と話す。(遠藤絢子)
本を手に「面白おかしく読んでほしい」と話す蟹めんまさん(奈良市で)
蟹めんまさんは大学時代は大阪で過ごし、その後は関東へ。東京で漫画家としてビジュアル系バンドの女性ファンの日常を描くなどしていた。ふるさとに帰ることになったのは2023年。22年に父が亡くなり、高齢の母親が一人になったことがきっかけだった。
もともと地元は好きだった。一方、「神社仏閣と鹿しかない」「地味」というイメージを持っていた。それが<出戻って>、がらっと変わった。
作中の一コマ。広瀬大社の砂かけ祭で、砂をかける白装束の「田人」の見た目の怖さに驚く=蟹めんまさん、ホーム社提供
高校卒業後、奈良を離れるまでは奈良市の近鉄奈良駅周辺という生活圏内で過ごすのみで、他の市町村のことはほとんど知らなかった。ただ、知人の誘いでふらっと足を運んだサッカーJ3・奈良クラブの試合でサポーターの熱い応援に感激したり、河合町の広瀬大社の砂かけ祭の激しさに衝撃を受けたり。正倉院展を訪れたほか、ご当地アイドルのライブに参加するなどしていくうちに、奈良が持つ魅力、面白さに気づいた。それをより多くの人に知ってもらおうと、24年2月、以前出した漫画の発行元だったホーム社のサイトで連載を始めた。その1年半の連載をまとめたのが今回の一冊だ。
作中で、この漫画を「私が奈良県民をイチからやりなおすための盛大な自己満足の記録」と表現し、知る人ぞ知る「ディープな」地元ネタが数多く登場する。
近鉄奈良駅近くで売られている鹿のかぶり物が実はトナカイ。県北部のコミュニティーラジオに月1回、市長が30分しゃべり倒すレギュラー番組がある。奈良市では処理場にごみを持ち込んだ場合、自分でそのごみをピットに投げ込む。そんなエピソードだ。
目指したのは、ガイドブックやインターネットにはあまり載っていない、実際に生活する県民目線の「あるある」を紹介することで、これには理由がある。
作中にも登場する13年に閉店した近鉄奈良駅近くの商業施設「奈良ビブレ」は、蟹めんまさんにとって青春が詰まった思い出の場所だった。なくなってしまった喪失感とともに感じたのは「地元の人が気にかけなければ、どんどんなくなってしまう」という危機感だった。そのため、少しでも面白く発信することで、話題となることを狙ってのことだ。観光地として注目されがちな奈良。ただ、「県民の日常に根ざした場所や出来事にも注目してほしい」と話す。
10月下旬から販売されると、程なくして県内の多くの書店が特設コーナーを設置。「県民として笑わせてもらった」「当たり前だと思っていたことが奈良特有のことと知った」などと反響を呼んでいる。蟹めんまさんのX(旧ツイッター)には、漫画に出てきた場所を巡る「聖地巡礼」で県外から訪れた読者のほか、県民から「こんな話があったなんて知らなかった」との感想も寄せられている。
次なる目標は、ウェブ連載のシリーズ第2弾の開始だ。というのも、今回の一冊は奈良市の話題が中心で、中南和の魅力も発信したいとの思いがあるからで、「行動エリアをもっと広げて、次巻が出せるようにしたい」と意気込んでいる。
144ページ、税込み1540円。
関西発の最新ニュースと話題
あわせて読みたい
