斉藤健仁

2025/12/20

(最終更新:2025/12/20)

#筑波大学

#ラグビー大学選手権

筑波大の大内田陽冬(左)と小澤一誠 4年間、勉強もラグビーも常に切磋琢磨して過ごしてきた(すべて撮影・斉藤健仁)

全国大学ラグビー選手権準々決勝で20日、5連覇を目指す帝京大学(関東対抗戦4位)と戦う筑波大学(同2位)には医者を目指して「文武両道」を貫いてきた主力の4年生が2人いる。ともに医学群医学類で学ぶPR小澤一誠(國學院久我山)とCTB大内田陽冬(あきと、修猷館)だ。大学でプレーするのは今シーズンが最後。前回覇者を相手に今シーズン2度目の白星を狙う。

病院での実習と並行してプレー

2年生になって出場機会を得た小澤は今シーズン、筑波大の臨時コーチを務めた現日本代表PRの竹内柊平(東京サンゴリアス)からの指導を受けて急成長した。今シーズンは対抗戦7試合(うち2試合が先発)に出場。1年生からAチーム争いに絡んでいた大内田は、縦への推進力が魅力で、対抗戦6試合(3試合に先発)に出場した主力選手だ。12月20日の帝京大戦でも大内田が先発メンバーに、小澤がベンチに入る。

攻守において強さを見せる大内田

9月末から病院での実習も始まった。2人が練習に参加できるのは20時前となる日もあるが、島﨑達也監督は「2人とも時間がない中で頑張っていますね」と目を細めた。2人は6年制の医学部生のため、あと2年あまり大学生活は続くが、ラグビー部で選手としての活動は今回の大学選手権が最後となる。

小澤は東京都出身。小学校2年から世田谷ラグビースクールで競技を始めて、中学は世田谷区立千歳中学でプレーした。太陽生命カップにも出場して全国4位に入った。小学校時代に、両親に「子どもが好き」という話をしたら「小児科医とかいいじゃない?」と言われ、そこから医者を目指したという。

大学でFLからPRに転向し、少しずつ階段を上ってきた小澤

大内田は福岡県出身。4歳から、かしいヤングラガーズで競技を始めた。両親ともに医者。特に勧められたことはないが、小さい頃から漠然と同じ道に進みたいと思っていたという。

なお大内田はラグビー界ではよく知られた5人きょうだいで、陽冬は3番目。姉2人は、日本代表候補にも選ばれ、山口大学医学部を卒業した長女・優月、7人制と15人制日本代表の次女・夏月(三重パールズ)。妹2人は、日本体育大学ラグビー部女子1年の三女・葉月、修猷館高2年でラグビー部に所属する四女・彩月だ。

先輩たちに憧れ、いずれも現役合格

2018年度の慶應義塾大学は医学部生だったSO古田京がキャプテンを務めた。そんな古田に触発されながら、筑波大にも医学群医学類で学びつつ、ラグビーを両立していたFL中田都来がいた。

2人は中学生くらいの頃から、「大好きなラグビーを続けたいし、医者という夢もあきらめたくない」。私立大学は学費が高いが、国立大学なら「医学部とラグビーを両立ができる」と筑波大を志望するようになった。「どっちもやっていいんだ、両立できるんだと思いました。本当に中学生の頃から、(中田)都来さんの存在を知って筑波大に行きたいと思っていました!」(小澤)

「中学生の頃から、古田さんのいた慶應義塾大、都来さんの筑波大を意識するようになりましたね。現役時代は学費の面もあり、筑波大に絞りました」(大内田)

常に勉学をおろそかにしなかった(写真は3年時)

都立高校の進学も選択肢に入れていた小澤は、「花園にも行きたかったしラグビーも強く、勉強に力も入れている」と國學院久我山高校に進学。学業では常に学年トップ3に入るほどの成績を維持した。

ラグビーでもFLのレギュラーとして3年時は「花園」こと全国高校大会に出場し、ベスト16進出に貢献。筑波大には、花園出場前に公募推薦で合格した。

大内田は高校では東福岡でラグビーに集中するか、鹿児島のラ・サールへの進学も考えたが花園出場を目指し、ラグビーも勉学もレベルが高い県立の修猷館へ進学。高校2年時の花園は記念大会で福岡県から2校出場できたが、予選決勝で筑紫に敗れた。3年時も同じく予選決勝で東福岡に敗退。そこから得意の「短期集中」でラストスパート。

もともと数学と物理が得意だっため、英語、社会、国語といった共通テストの勉強に力を入れ、筑波大医学群医学類に現役合格した。

花園予選決勝後も猛勉強で現役合格を勝ち取った

志が同じ2人 入学して驚く

2人は筑波大医学群医学類に入学し同期となった。小澤は「大学入学前に、まさか(医学類の)同期にラグビー部員がいるとは思っていなかった。うれしかった!」と言えば、大内田も「小澤が医学部志望なのは知っていましたが、大学でまさか一緒になるとは。(ラグビー部に在籍して医者を目指すのは自分)1人だと思っていたので、心強いです」と喜んだ。勉強もラグビーも切磋琢磨(せっさたくま)の日々が続いている。

身長172cmの小澤は大学入学後、FLからPRへ転向した。同じFW第一列のHOには同期が3人いたこともあり、「(大型選手が多い)FLに限界を感じていて、大学でより試合に出るならPRかな」と左PRへ。そこからスクラムと向き合い続けている。

PRとして頭角を現してきた3年時の小澤

フィジカルが強い身長178cm大内田はケガが多く、大学3年時は対抗戦前に左ひざの前十字靱帯(じんたい)を断裂。その影響で、今年は秋からの復帰となった。

大学2年時から実習が始まり、2人とも練習に遅れる日もあったという。それでも小澤は「自分の時間を作るのは難しいですが、忙しくても毎日が充実しています」と言えば、大内田は「今は、ほぼラグビーに集中しています(笑)。自分はケガが多いので、体のケアをする時間を取るように気をつけています」と話した。 

小澤は現在のところ初志貫徹で小児科医を、高校時代からケガの多かったという大内田は整形外科医を志望している。

ケガの経験が整形外科医を志す理由になった

現在、勉強とラグビーの両方とも頑張っている高校生へのメッセージをお願いすると、小澤は「時間的には大変だと思いますが、自分がやりたいと思えば、どっちを選ぶのではなく、どっちもできると思うので頑張ってほしい! 筑波大ラグビー部は理解があります!」と言えば、大内田は「勉強とラグビーの両立は難しい部分はありますが、強い意志があればできないことはないと思います。自分が(中田)都来さんらを見てできると思った。僕たちの背中を見て、自分の力を信じて頑張ってほしい」とエールを送った。

選手として完全燃焼

今シーズン、筑波大は春から本気で日本一を目指してきた。4年生で何度もミーティングをし、スローガンは「Rock You(揺さぶれ・驚かせ)」と定めて、日本一になるためにピッチでは「狂う」、ピッチ外では「小事徹底」の2つのサブスローガンも決めた。

日本一のスクラムを組みたいと語る小澤

小澤が「Rock You」の、大内田が「狂う」の発案者だという。日本一を目指すため、また国立競競技場で、より多くのファンを驚かせるためにも、「死に物狂い」で、走り、起き上がり、タックルすることが必須だ。

選手としてラグビーに関わる最後の大学選手権になる。小澤は「4年間、スクラムにこだわってきたので、日本一のスクラムを組みたい! またチームとしてはどこのチームよりも泥臭く勝っていきたい」。大内田は「自分に求められているのはモメンタム(勢い)を生むところだと思うので、縦に突破して、チームを前に進めて、筑波のやりたいラグビーができるように貢献したい。良い仲間がいるので笑って終わりたい」と力を込めた。

得意の縦への突破を見せると意気込む大内田

「筑波大に来てよかったですね」としみじみと語る2人。医学とラグビー、どちらの夢も諦めなかった。筑波大初の日本一を目指して、選手としての完全燃焼を誓った。