11月22日、南アフリカのヨハネスブルクで、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席した各国首脳ら(EPA時事)11月22日、南アフリカのヨハネスブルクで、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席した各国首脳ら(EPA時事)

 「連帯、平等、持続可能性」をテーマに南アフリカ・ヨハネスブルクで先月、アフリカ大陸初となる主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれた。米中露首脳が不在の中、サミット初日には「ヨハネスブルク宣言」が採択され、開発・気候・改革を巡るG20の結束の方向性、そして「多国間協力への新たなコミットメント」(南アフリカ・ラマポーザ大統領)が示された。(長野康彦)

 今回のサミットでは従来の形式を改め、開幕直後に首脳声明を提示。宣言は計122項目に及び、気候変動による被害拡大、債務負担の増大、不利な借入条件など、アフリカ諸国などグローバルサウスが抱える課題を前面に掲げた点で歴史的とされる。

 一方、今回のサミットではその実効性に疑問も呈された。中東・パレスチナ情勢を巡る文言の不十分さを理由に、アルゼンチンが唯一署名を見送った。ウクライナ戦争についてはほとんど触れられず、紛争の終結を促す一般的な言及にとどまった。同様に、甚大な被害をもたらしているスーダン内戦についても、解決策の提示はなかった。

 サミット閉幕時には気まずい場面もあった。慣例では議長国が木槌(きづち)を次期議長国に手渡すが、来年の議長国となる米国はボイコットしたため、ラマポーザ氏は渡す相手がいなかった。

 米国は大使館の代表を出席させようとしたが、南アは「大統領が下級官僚に手渡すのは侮辱だ」として拒否。式典後、ブラジルのルラ大統領が木槌を持ち上げ、隣の関係者に向けて冗談めかして振りながら、「私が彼ら(米国)に持っていこう」とラマポーザ氏に語る声がマイクに拾われた。

 米国が不参加の理由は、南アフリカで白人少数派国民が差別・迫害を受けているというもの。トランプ米大統領は「アフリカーナー(オランダ人入植者の子孫、フランス人とドイツ人移民)が虐殺されており、彼らの土地や農場が不法に没収されている」と主張、今年2月には制裁措置として南アフリカへの支援を停止する大統領令に署名した。

 ラマポーザ氏は5月にホワイトハウスを訪れ、トランプ大統領と激しいやりとりがあった。南アフリカは一般的に犯罪率が高く、「特定の人種や特定の文化を持つ人々が迫害の対象になっている」という主張は「完全に誤り」だとして、トランプ氏の「白人虐殺」の主張を真っ向から否定した。

 南アフリカでは、アパルトヘイト(人種隔離)時代に白人少数派が広大な土地を所有していた歴史的経緯から、土地改革法が議論され、今年1月に新法が制定された。この法律は、「公正かつ公益にかなう」と判断された場合に、政府が特定の状況下で補償なしに個人所有の土地を収用することを認めるというもの。南ア政府は、この法律に基づく土地の収用はまだないとしている。

 トランプ氏はこの改革が「私有財産の接収」だとして批判しているが、ラマポーザ氏は「脅しに屈しない」と反発、トランプ氏の「白人農民の虐殺」との主張も「犯罪被害は白人だけではない」と否定している。

 今回のアフリカG20は、南半球の声が国際議題の中心となる歴史的なものとなったが、米国の不参加が突き付けたG20の枠組みそのものの揺らぎも映し出した。トランプ氏は「南アは世界に対し、(G20の)加盟国に値しない国であることを示した」と非難、米国が議長国を務める2026年のG20サミットに南アフリカを招待しない方針を示しており、両国関係はアパルトヘイト後で最悪の状況となっている。