東京国立近代美術館(東京都千代田区)から、2026年度の展覧会スケジュールが発表されました。
2026年中に開催される企画展は、まもなく開催される「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」を皮切りに「下村観山展」「杉本博司 絶滅写真」「竹久夢二 時代を創る表現者」など、全部で4つの企画展が予定されています。
また、「所蔵作品展 MOMATコレクション」も要注目。国内最大級を誇る所蔵作品から選りすぐった作品に加え、新収蔵品も登場。2会期分の内容が発表されています。また、お花見の時期の定番イベント「美術館の春まつり」は2026年度も継続開催。隣接する北の丸公園のお花見とあわせて、春を満喫できる注目イベントとなっています。
そこでここまで発表された各展・イベントの概要についてそれぞれまとめました。
東京国立近代美術館
所在地:〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間:10:00〜17:00(金曜・土曜は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(祝日または振替休日の場合は開館し、翌日休館)、展示替期間、年末年始
観覧料:<所蔵作品展 MOMATコレクション > 一般500円 大学生250円
※企画展観覧料は展覧会により異なる
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
アクセス:
東京メトロ東西線「竹橋駅」1b出口より徒歩3分
東京メトロ・都営地下鉄「九段下駅」2番出口
東京メトロ・都営地下鉄「神保町駅」A1出口より各徒歩15分
東京駅より徒歩約20〜25分
詳細は、東京国立近代美術館公式サイトまで。
アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦
2025年12月16日〜2026年2月8日
新しい時代を象徴していた女性の美術家は、なぜ歴史から姿を消してしまったのか。1950年代から60年代の日本の女性美術家による創作を「アンチ・アクション」というキーワードから見直します。当時、日本では短期間ながら女性美術家が前衛美術の領域で大きな注目を集めました。これを後押ししたのは、海外から流入した抽象芸術運動「アンフォルメル」と、それに応じる批評言説でした。
しかし、次いで「アクション・ペインティング」という様式概念が導入されると、女性美術家たちは如実に批評対象から外されてゆきます。豪快さや力強さといった男性性と親密な「アクション」の概念に男性批評家たちが反応し、伝統的なジェンダー秩序の揺り戻しが生じたのです。
本展では『アンチ・アクション』(中嶋泉[本展学術協力者]著、2019年)のジェンダー研究の観点を足がかりに、草間彌生、田中敦子、福島秀子ら14名の作品およそ120点を紹介します。「アクション」の時代に別のかたちで応答した「彼女たち」の独自の挑戦の軌跡にご注目ください。
山崎つる子《作品》1964年 芦屋市立美術博物館蔵 ©Estate of Tsuruko Yamazaki, courtesy of LADS Gallery, Osaka and Take Ninagawa, Tokyo
田中敦子 《地獄門》1965-69年 国立国際美術館蔵 ©Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association
宮脇愛子 《作品》 1967年 撮影:中川周
下村観山展
2026年3月17日〜5月10日
日本画家・下村観山(1873-1930)の、関東圏では13年ぶりとなる大規模な回顧展です。紀伊徳川家に代々仕える能楽師の家に生まれた日本画家・下村観山は、幼時より画の才能を発揮し、橋本雅邦に学んだのちに東京美術学校に第一期生として入学しました。卒業後は同校で教鞭を執るも校長の岡倉天心とともに同校を辞職、日本美術院の設立に参加し、岡倉の指導のもとで横山大観、菱田春草らと新時代にふさわしい日本美術の道を切り拓きました。
観山は古画の模写・模造事業への参加、1903年からの2か年にわたるイギリス留学・欧州巡遊などを通して自身の高い技術力に磨きをかけていきました。《木の間の秋》(1907年)、《小倉山》(1909年)には、その成果として、やまと絵や琳派の技法を十分に消化しつつ、西洋画由来の写実的な表現を融合させた跡がうかがえます。岡倉の没後は《弱法師》(1915年、重要文化財)のように、主題の着想やその表現に創意工夫をこらした作品も生み出されました。
本展では、観山の代表作により作家の画業を通観するとともに、最新の研究成果も盛り込みながら、日本の近代美術史における観山芸術の意義を改めて検証します。
下村観山《弱法師》1915(大正4)年 重要文化財 東京国立博物館蔵 Image: TNM Image Archives
下村観山《獅子図屏風》1918年 水野美術館蔵
杉本博司 絶滅写真
2026年6月16日〜9月13日
様々な領域で活動する現代美術作家、杉本博司(1948-)。小田原文化財団 江之浦測候所をはじめ建築分野でも活躍し、日本の古典芸能など舞台芸術の演出では国内のみならずヨーロッパ数都市やニューヨークにも進出。その活動分野は書、陶芸、和歌、料理と多岐にわたっています。
そんな多才な杉本の芸術の原点は銀塩写真にあります。確たるコンセプトに基づく、独自の表現による作品はまた、銀塩写真の技術としても頂点を極めるものであり、写真がデジタルに置き換わった今、その技法はまさに「絶滅が危惧される」ものと言えます。
本展では杉本の初期(1970年代後半)から現在に至る銀塩写真約65点を展観します。写真作品で構成する美術館での個展は、2005年の森美術館以来の開催となります。さらに、所蔵作品ギャラリー3階にて東京国立近代美術館所蔵杉本作品全点、また未公開資料「スギモトノート」をサテライト展示します。
「スギモトノート」:写真作品制作における、撮影時および暗室での作業工程の覚書を記したノート。1970年代半ばより記録は始まります。
杉本博司《相模湾、江之浦》2025年 ゼラチン・シルバー・プリント 119.4×149.2cm
杉本博司《観念の形 0003》2004年 ゼラチン・シルバー・プリント 149.2×119.4cm
竹久夢二 時代を創る表現者
2026年10月23日〜2027年1月11日
大正ロマンを象徴する画家・竹久夢二の表現世界に光を当てる展覧会です。挿絵や装丁、ポスター、デザインなど多方面で活躍した夢二の仕事を、美術とデザイン、生活文化の交差点として捉え直し、その多彩な活動をたどります。モダンな感性と郷愁を誘う抒情性をあわせ持つ作品から、近代日本の大衆文化や女性像の変遷も感じ取ることができるでしょう。※展覧会内容の詳細は今後発表予定です。
竹久夢二《黒船屋》1919(大正8)年 竹久夢二伊香保記念館蔵
所蔵作品展 MOMATコレクション(2025.11.5–2026.2.8)
2025年11月5日〜2026年2月8日
東京国立近代美術館が誇る、重要文化財18点を含む1万4千点近い国内最大級のコレクションの中から、選りすぐりの作品を紹介する所蔵作品展です。本期間中は、コレクションによる小企画「没後30年 榎倉康二」を通じて、戦後日本美術を代表する作家のひとりである榎倉康二の仕事にも焦点が当たります。多彩なテーマを交えながら、近代以降の日本美術の流れを概観しつつ名作と出会うことができます。
奈良美智《Harmless Kitty》1994年 © Yoshitomo Nara 所蔵作品展 MOMATコレクション(2025.11.5–2026.2.8)展示
所蔵作品展 MOMATコレクション(2026.3.3–5.10)
2026年3月3日〜5月10日
2024年度の新収蔵品であるメダルド・ロッソ《Ecce Puer(この少年を見よ)》のお披露目を含む会期です。「新収蔵&特別公開 メダルド・ロッソ|《Ecce Puer(この少年を見よ)》」として紹介され、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した彫刻家ロッソの繊細な表現に出会うことができます。東京国立近代美術館ならではの近現代美術コレクションとあわせて鑑賞することで、近代彫刻の流れも立体的に感じられるでしょう。
メダルド・ロッソ《Ecce Puer(この少年を見よ)》1920–25年頃 撮影:大谷一郎 所蔵作品展 MOMATコレクション(2026.3.3-5.10)展示
美術館の春まつり
2026年3月中旬〜4月上旬(予定)
毎年恒例、桜の時期のイベントです。東京国立近代美術館は皇居や千鳥ヶ淵、北の丸公園といった桜の名所エリアに立地しており、散策で巡るにも絶好のロケーションにあります。「所蔵作品展 MOMATコレクション」では、桜、花にちなんだ春らしい作品を一室に集めて展示するほか、展示室ごとに設けたテーマの中から日本画、洋画、海外作品などを交えたさまざまな作品をご覧いただけます。北の丸公園周辺の桜と館内の名画との競演を楽しめる、春ならではの特別なひとときとなりそうです。
跡見玉枝《桜花図巻》部分 1934年
2026年度の東京国立近代美術館は、ジェンダーの観点から戦後前衛美術を見直す「アンチ・アクション」、近代日本画の巨匠・下村観山の画業をたどる回顧展、銀塩写真の極致を示す杉本博司の個展、そして竹久夢二の多彩な表現世界へと、テーマも時代も異なる展覧会がバランスよく並びます。さらに、国内最大級のコレクションを紹介する「MOMATコレクション」や、皇居周辺の桜と名画を同時に楽しめる「美術館の春まつり」も見逃せません。四季折々の東京の風景とともに、近代から現代に至る多様な美術表現にじっくり向き合える“殿堂”で、心ゆくまでアートの時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)
