北海道富良野市に、予約が最大半年待ちの大人気フレンチがある。道産食材をふんだんに使った料理が定評だが、人気の理由はそれだけではない。ノンフィクション作家・野地秩嘉さんの連載「一流の接待」。第9回は「ル・ゴロワ フラノ」の大塚敬子さんが徹底していること――。


フランス料理店「ル・ゴロワ フラノ」の大塚健一、敬子夫妻

撮影=入江啓祐

フランス料理店「ル・ゴロワ フラノ」の大塚健一、敬子夫妻



「北の国から」ロケ地跡に佇む予約困難店

フランス料理店「ル・ゴロワ フラノ」は北海道産の野菜、果物、乳製品、精肉、鮮魚といった食材だけを使う。同店は富良野市の新富良野プリンスの敷地内にある。初夏から秋までは観光の人たち、雪が降ったら、スキー、スノーボードの客がやってくる。客席数は15席しかない。ランチ、ディナーを予約しようと思えば、6、7、8月であれば半年前には予約しなければならない。他の月もまた3カ月前には予約が必要だ。富良野でいちばん予約が取れない店になっている。


同店を利用する人は地元の人たちと観光客だ。観光客、インバウンド客は旭川空港から美瑛を経由して富良野、とりわけ麓郷ろくごう地区にやってくる。美瑛にはラベンダー畑、彩りの畑、青い池など景色の美しい場所がある。富良野にもラベンダー畑がある。景色の美しさもまた富良野、麓郷の魅力だ。加えて、人々が行くのが、かつて放映されていたテレビドラマ「北の国から」(フジテレビ系)のロケ地跡だ。富良野と麓郷にはドラマで使用した住居、店舗が残っていて、観光客は主役の田中邦衛を始めとする出演者たちを思い浮かべながら、跡地を巡る。


大ファンの倉本聰監督に手紙を送った

そんな富良野は北海道の真ん中に位置している。同市の市民憲章には「わたしたちは、北海道の中心標が立つ富良野の市民です」とある。道内各地から、おいしい食材を取り寄せるには地の利がある。また、富良野は盆地だ。畑作に適していて、タマネギ、ニンジン、メロン、スイカの主産地だ。加えて肉用牛、養豚、酪農も盛んだ。北海道各地の産物とその日の朝、地元で収穫した野菜、果物を出している。


そして、長年、富良野に暮らしているのが「北の国から」の脚本を書いた倉本聰氏だ。倉本氏は「北の国から」のなかで、富良野の生活をリアルに描いた。ル・ゴロワのオーナー夫妻(大塚健一、敬子)は「北の国から」の大ファンだった。マダムの大塚敬子は北海道に移り住んで、店を始めたいと思い、倉本聰氏に手紙を出したのである。


葉に色が付き、本州よりも早い冬の訪れを感じさせる10月の富良野

撮影=入江啓祐

葉に色が付き、本州よりも早い冬の訪れを感じさせる10月の富良野