トランプ米大統領は、ワシントンでサウジアラビアのムハンマド皇太子を盛大に迎え、最新鋭戦闘機「F35」の供与を含む防衛協定を提示した。米国人記者殺害事件における皇太子の責任も不問に付す一方、トランプ氏が得た見返りは判然としない。

  ホワイトハウスでの歓迎式典では騎馬隊や軍楽隊、F35の儀礼飛行などの演出で皇太子を迎えた。ホワイトハウスはその後、その後、両国が緩やかな防衛協力協定に署名したと発表。トランプ氏は晩さん会で、サウジを「北大西洋条約機構(NATO)非加盟の主要同盟国」に指定したと表明した。

  今回の厚遇は、今年5月にトランプ氏がサウジを訪問した際に受けた歓待に匹敵する。一方、トランプ氏が得たのはサウジによる最大1兆ドル(約155兆円)の対米投資という漠然とした約束にとどまった。以前に約束した6000億ドルから大幅に増えたものの、専門家からは他の巨額投資案件と同様、実現性を危ぶむ声が出ている。

Saudi Prince To Meet With Trump In US After Weeks Of Tense Talks

ホワイトハウスの大統領執務室で会談するトランプ米大統領とサウジアラビアのムハンマド皇太子(18日)

Photographer: Nathan Howard/Politico/Bloomberg

  一連の合意は、米国との関係修復と深化を図りつつ、中国との関係を対米交渉のカードとして利用してきた皇太子にとっての外交的勝利といえる。

  トランプ氏は皇太子を「非常に良い友人だ」と称賛し、「人権などあらゆる面で」驚くべき成果を挙げたと持ち上げた。

  カーネギー国際平和財団の中東プログラム担当シニアフェローで元空軍将校のフレデリック・ウェーリー氏は「あまりに不均衡だ。米国はあまりにも多くのものを、早期に与えることで巨大な影響力を放棄している」と警鐘を鳴らした。

  関係者によると、サウジと中国の経済的結び付きに対する安全保障上の懸念にもかかわらず、米国はF35の売却に加え、サウジ企業に対する先端人工知能(AI)半導体の初めての販売を承認する方針だ。

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  トランプ氏は18日、サウジが「約1420億ドル相当の米国製軍需品やサービスを購入する」と述べたが、詳細は明らかにしなかった。サウジが国内総生産(GDP)の約15%に相当する巨額資金のどのように捻出するかは不明だ。

イメージ回復

  トランプ氏は皇太子のイメージ回復も図った。米紙ワシントン・ポストのコラムニストでサウジ王室を批判していた同国出身ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が2018年に殺害されたことについて、トランプ氏は皇太子は「まったく知らないことだ」と弁護した。

  この発言は、皇太子と米国の関係を著しく修復するものとなった。米国の情報機関は2021年に、カショギ氏がトルコのサウジ総領事館で殺害された事件について、皇太子の関与を示す報告書を公表した。事件は産油国サウジと欧米諸国との関係を悪化させ、特にバイデン前大統領との間では緊張が続いていた。

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  もっとも、華やかな演出とは裏腹に合意の細部は詰め切れていない。大枠を示すファクトシートは公表されたものの署名式は見送られ、事前交渉では難航した経緯もある。

  「NATO非加盟の主要同盟国」指定の実効性も未知数だ。約20カ国が指定を受けているが、実際に十分な恩恵を享受している例は少ないのが実情だ。

  F35供与などで米・サウジ間の蜜月ぶりをアピールしたものの、トランプ氏が目指すサウジとイスラエルの国交正常化については確約を得られなかった。一方、サウジ側も米国との相互防衛協定の締結には少なくとも現時点では至っていない。

原題:Trump’s Warm Welcome Gives Saudi Crown Prince ‘Lopsided’ Rewards(抜粋)

— 取材協力 Sam Dagher, Josh Wingrove and Kate Sullivan